27 私は千八百二十三年九月二十一日まで、この世の普通の仕事に従事していた。その間ずっと、宗教心のある人か宗教心のない人かを問わず、あらゆる階級の人々から容赦のない迫害を受けていた。私が示現を見た事を断言し続けたからである。
28 示現を受けた時から千八百二十三年までの間、私は当時のどの教派にも加わる事を禁じられており、非常に未熟な年齢でもあって、本来ならば私の友となり、私を優しく扱い、もしも私が惑わされていると思ったならば、適切な愛情に満ちた方法で私を改心させるように努めて当然であった人々によって迫害された為、私はあらゆる誘惑を受けるに任された。また、私は色々な人々と交わって、しばしば多くの愚かな誤りを犯し、若者としての弱さと人間性の至らなさを示した。遺憾ながら、この為に神の目にかなわない様々な誘惑に誘い込まれた。この告白をしたからといって、私が何か大きな罪、即ち憎むべき罪を犯したと思うには及ばない。このような罪を犯す性質など、決して私にはなかった。しかし、私は軽率な行動をし、時には陽気な仲間と交わるなどして、私のように神から召された者が当然保つべき性格に一致しない行動をした。しかし、私の若い頃を思い出し、私の生来の陽気な気質を知っている人には、この事はそれほど不思議には思われないであろう。
29 これらの事の結果、私はしばしば自分の弱さと不完全さの故に咎めを感じた。そして、前に述べた九月二十一日の夜の事である。私はその夜、床に就いた後、全能の神に、私の全ての罪と愚かな行いを赦して下さるように、また神の前における自分の状態と立場を知る為に示しを下さるように、祈って嘆願した。以前に受けたように、神の示しを頂けるという十分な確信があったからである。
30 私はこのように神に呼び求めていた時、室内に光が現れたのに気付いた。その光は次第に明るさを増し、遂にその部屋は真昼の時よりも明るくなった。すると、すぐに一人の方が私の寝台の傍らに現れ、空中に立たれた。というのは、その足が床から離れていたからである。
31 その方はこの上なく美しい白さの、ゆったりとした衣を着ておられた。それは、私がこれまで見たこの世の如何なるものにも勝る白さであった。この世の如何なるものも、これほど白く輝いて見えるようにする事はできないと思う。その方の手は露わで、衣の袖は手首の少し上までで、その足も露わで、衣の裾は足首の少し上までしかなかった。その頭と首も覆われていなかった。その方の胸が見えるほど衣がゆったりとしていたので、私はその方がその衣のほか何も着ておられないのに気付いた。
32 その衣が非常に白かっただけでなく、その全身も筆紙に尽くし難い輝きに満ち、その顔は真に稲妻のようであった。部屋は非常に明るかったが、その方のすぐ周りほど明るくはなかった。私は最初にその方を見た時に恐れたが、その恐れはすぐに去った。
33 その方は私の名を呼び、自分は神の前から遣わされた使者である事、その名はモロナイである事、神が私の成すべき業を備えておられる事、また私の名が良くも悪くも全ての国民、部族、国語の民の中で覚えられる事、即ち、良くも悪くも全ての民の中で語られる事を私に告げられた。
34 その方はまた、この大陸の先住民の話と彼らの起源を伝える、金版に記された書が隠されている事も告げられた。また、それには救い主がその昔の住民に述べられたままに完全な永遠の福音が載っている事も告げられた。
35 また、銀のつるにはめた二つの石も版と共に隠されていることーーこれらの石は胸当てに付けてあって、ウリムとトンミムと呼ばれるものを成すーーこれらの石を所有して使った者が昔即ち前の時代の「聖見者」となった事、並びにその書を翻訳する為に神がそれらを備えて下さった事を、その方は告げられた。
36 その方はこれらの事を私に告げられた後、『旧約聖書』の預言を引用し始められた。最初にマラキ書の第三章の一部を引用し、また私達の『聖書』に言われているのとは少し異なるが、同じ預言の第四章、即ち最後の章も引用された。私達の『聖書』にある通りに第一節を引用する代わりに、次のように引用された。
37 「見よ、炉のように燃える日が来る。全て高ぶる者と悪を行う者は、藁のように燃える。やがて来る者達が彼らを焼き尽くして、根も枝も残さない、と万軍の主は 言う。」
38 更にまた、その方は第五節を次のように引用された。「見よ、主の大いなる恐るべき日が来る前に、私は預言者エリヤの手によって貴方方に神権を現そう。」
39 また、その次の節を言葉を違えて引用された。「彼は先祖に与えられた約束を子孫の心に植え、子孫の心はその先祖に向かうであろう。そうでなければ、主の来臨の時に、全地は悉く荒廃するであろう。」
40 これらに加えて、その方はイザヤ書の第十一章を引用し、それは正に成就しようとしていると言われた。また、使徒行伝第三章二十二、二十三節も、正に私達の『新約聖書』にある通りに引用された。その方は、その預言者とはキリストの事である、しかし、「彼の声を聞こうとしない者は民の中から絶たれるであろう」というその日はまだ来ていないが、間もなく来る、と言われた。
41 その方はまた、ヨエル書の第二章も第二十八節から最後まで引用された。そして、これはまだ成就していないが、間もなく成就する、と言われた。更に、異邦人が満ちみちる恵みに与る時代が間もなく来る事を告げられた。その方は他にも多くの聖句を引用し、多くの説き明かしをされたが、ここで述べる事はできない。
42 更に、私がその方の語ったその版を受け取る時ーーというのは、それを手に入れる時はまだ来ていなかったからであるーーその版や、ウリムとトンミムの付いた胸当てを、それらを見せるように命じられた人々の他には誰にも見せてはならない、もしも見せたならば滅ぼされる、とその方は私に告げられた。その方が版について私と語っておられる間に、私の心に示現が開かれ、私はその版の隠されている場所を見る事ができた。そして、それは非常に明瞭ではっきりとしていたので、そこを訪れた時にはその場所が分かった。
43 この指示を受けた後、私が見ると、室内の光は忽ち、私に語っておられたその方の周りに集まり始めた。そして、光は集まり続け、その方のすぐ周りを除いて遂にその部屋は再び暗くなった。その途端に、私が見ると、あたかも一筋の道が天に向かって真っ直ぐに開いたかのようで、その方は昇って行かれ、遂にその姿が全く見えなくなった。そして、その部屋は、この天の光が現れる前の状態に戻った。
44 私はその奇異な有様をつくづくと考え、またこの常ならぬ使者によって告げられた事を不思議に思いながら横になっていた。このように思いに耽っている最中に、私は、突然部屋が再び明るくなり始めたのに気付いた。そして、あたかも突然であるかのように、同じ天の使者が再び私の寝台の傍らにおられた。
45 その方は語り始め、最初に訪れた時に述べた事と全く同じ事を少しも変えずに再び述べられた。それを述べた後、飢饉と戦争と疫病による酷い荒廃を伴って地上に来ようとしている大きな裁きについて私に告げ、またこれらの厳しい裁きがこの時代に地上に来る事を告げられた。これらの事を述べた後、その方は再び前と同じように昇って行かれた。
46 この時には、心に受けた印象が非常に深かったので、私は目がさえて眠れなくなっており、見たり聞いたりした事への驚きに圧倒されて横になっていた。ところが何とも驚いた事に、私はまたもや寝台の傍らに同じ使者を見、その方が前と同じ事を私に詳しく語られるのを、即ち、再び繰り返し語られるのを聞いたのである。そして、その方は私に一つの警告を加え、（父の家族は貧しい暮らしをしていたので）金持ちになる為に版を手に入れるように、サタンが私を誘惑しようとするであろうと告げられた。そしてその方は、このような事のないように私に命じ、版を手に入れるに当たっては神の栄光を現す以外の目的を心に抱いてはならない事、また神の王国を築こうとする動機以外の如何なる動機にも左右されてはならない事、そうでなければそれを手に入れる事はできない事を告げられた。
47 この三度目の訪れの後、その方は前のようにまた天に昇って行かれた。そして、私はたった今経験した事の不思議さをまた深く考え続けた。その天の使者が三度目に私を離れて昇って行かれたのと殆ど同時に、鶏が鳴いたので、私は夜明けの近い事を知った。したがって、私は一晩中その使者と会見していた事になる。
48 私はその後間もなく起きて、いつものように、その日にしなければならない仕事に出掛けた。しかし、私は普段のように働こうとしたが、全く働けないほど疲れ果てているのを知った。私と一緒に働いていた父は、私の具合が悪いのに気付き、家に帰るように言った。そこで、私は家に帰ろうとして出掛けた。しかし、囲いを越えて畑から出ようとした時に、すっかり力を失ってぐったりと地に倒れ、暫くの間全く意識を失っていた。
49 私が思い出せる最初の事は、私の名を呼んで、私に語り掛ける声があった事である。見上げると、あの同じ使者が前のように光に包まれて、頭上に立っておられるのが見えた。それからその方は、前夜私に話した全ての事を再び私に話し、父の所へ行って、私が受けた示現と命令の事を告げるようにと命じられた。
50 私はそれに従い、畑にいた父の所へ戻って、父に全ての事を詳しく告げた。すると、父は私に、それは神から出ていると答え、その使者から命じられた通りにするように告げた。私は畑を去って、版が隠されていると使者から告げられた場所へ行った。すると、それに関して受けていた示現が明瞭であったので、そこに着くとすぐにその場所が分かった。
51 ニューヨーク州オンタリオ郡マンチェスターの村の近くに、かなりの大きさの丘が一つある。そこはその界わい切っての高い丘である。この丘の頂上から遠くない西側の所にかなりの大きさの石があって、その石の下にあった石の箱の中に版が置かれていた。この石は厚みがあって、上部の中央が丸みを帯びており、へりに行くに従って薄くなっていたので、その中央部は地上に見えていたが、へりは全て土に覆われていた。
52 私は土を取り除いて、てこを一本手に入れ、それをその石のへりの下に差し込んで、僅かな力でそれを持ち上げた。中を覗き込むと、あの使者から言われたように、実際にそこに、版と、ウリムとトンミムと、胸当てが見えた。それらが納められていた箱は、ある種のセメントの中に石を置いて造ったものである。箱の底には、横向きに二個の石が置かれ、その石の上に版とその他の物が一緒に載せられていた。
53 私はそれらを取り出そうとしたが、あの使者に止められた。そして、それらを出す時はまだ来ていない事を再び知らされた。また、その時から四年経たないと、その時は来ないとの事であった。その方は私に、その時から丁度一年目にその場所に来るように、そうすれば彼が私に会って下さる事、また版を手に入れる時が来るまで私はそれを続けなければならない事を告げられた。
54 それで、私は命じられた通りに、一年毎にそこへ行き、その度にあの使者にお会いした。そして、お会いする度に、主が何を行おうとしておられるか、また終わりの時に主の王国がどのように指導されるべきかに関して、その方から指示と知らせとを受けた。
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