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2020年09月07日11:28

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★目の前にあるのに、気づきもしない。【メルマガくん:09/07号】

 近所を歩いています。朝の運動です。近所といっても、めったに来ない場所です。幹線道路沿いの、よく整備された広い歩道です。視界の左前方に、駐車場があります。トラックが駐車しています。トラックの外装の、艷やかなカブトムシ色が、私の目に飛び込んできます。
 思わず立ち止まります。カブトムシ色に驚いたから、ではありません。トラックの荷台に、合板が重ねて積んであるのです。左前方の、このトラックから視線を動かします。トラックよりはやや後方、私の左後方です。フォークリフトです。車体前部の、フォーク(つめ)のところに、これも合板を積んでいます。急に、私の鼻に、木材の香りが飛び込んできます。
 いえ、急に飛び込んできたのではありません。そういえば。そうです、そういえば、なんです。左前方の視界に、カブトムシ色のトラックが飛び込んでくる直前に、すでに私の鼻腔を、木材の香りがくすぐっていたのです。でも、香りだけでは立ち止まらなかった。カブトムシ色のトラックが目に飛び込んでこなかったら、木材の姿にも気づきもせず、鼻をかすめた木材の香りのことなど、すっかり忘れてしまったはずです。最初に私の鼻をくすぐった木材の香りは、おそらく、意識下の出来事です。忘れてしまうというよりも、意識の表に出てくることすらなかったはずです。
 なんて思いながら、ここはどこだ? 見回してみると、木材の問屋さんのようです。テニスコートを三面か四面ほど取ることができる広さです。ここを通るのは初めてではありません。いままで気づかなかった。木材の香りに誘われて、ではなく、カブトムシ色の車に誘われて、この木材の問屋さんに気づいたのです。
 自分の意識が意識している世界と、自分は意識していないけれど自分にも存在したかもしれない世界とのことを考えます。存在したかもしれない世界が無数にあることに思いを致します。でも、これは、自分が味わっている世界なのだろうか。無意識は私ではないのではないか。
 カブトムシ色のトラックに、尋ねてみたいけれど、艷やかに輝くだけです。「謎ですね」って、軽く相づちくらい打ってくれてもいいのに。
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