週末の朝、住宅街を散歩します。
私の目に、アパートの1階の部屋の、すりガラスに映る影が飛び込んできます。部屋干しの洗濯物です。透けて見えるのです。ガラスに張り付いたヤモリみたいです。もちろん、ヤモリではありません。布製のマスクです。2020年、日本の梅雨です。今では、屋外のマスク人は違和感のない風景です。
マスクはさておき、人との距離の取り方です。住宅地です。繁華街ではありません。住宅街の週末の朝です。人通りは、ほとんどありません。それでも人とすれ違います。
50メートル先に、男性が歩いてくるのが見えます。マスク人ではありません。表情が見て取れます。ほほ笑みながら、道の真ん中ではなく、右端に移動します。なるほど、このくらい遠い位置で進路を変更するのは大人です。直前になって、急に進路変更するのは大人ではありません。私も男性に習って、ほほ笑みながら右端に進路変更します。
また50メートルくらい先に、別の男性の姿です。スマホを見ながら歩いてきます。マスクは顎にかけています。そのまま真っすぐ進んできます。私との距離が20メートルくらいになります。このままだと、接触の危険があるので、私は道の右側に移動します。すると男性は、スマホに視線を注いだままの姿勢で、顎のマスクを、ひょいと顔の前面に移動します。すれ違うときにはマスク人になるわけです。
すれ違ったあと、どうするのか。また顎に戻すのか。振り返って、確認したくなってしまいます。いや、振り返っただけじゃ、確認できないか。
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