このところ、夕食後、ジャン・スタロバンスキー(Jean Starobinski)が動いて話をする姿を繰り返し見ています。スタロバンスキーへのインタビューです。スイスの放送局「テレヴィジオン・スイス・ロマンド」が、合計して6時間半にわたって放送したものです(2001年)。この放送の録画を所持している先生に無理を言って、ダビングしてもらったのです。ずうずうしい弟子です、私は。
スタロバンスキーの著書で最初に購入したのは『活きた眼2 批評の関係』(邦題/原題:La relation critique - L'oeil vivant ll)です。本棚から、『批評の関係』を取り出してみます。いい具合に汚れて、すっかり古本に成長しています。いまからざっと40年前の1982年6月に、フランス図書(
http://www.francetosho.com/ )で手に入れたものです。大学3年生でした。この年の秋に行われる留学生試験を受けるために、私は勉強に励んでいました。『批評の関係』の購入も、その一環だったようです。
改めて開いてみると、ごく一部を、虫がかじるように、ちょこちょこ読んだ形跡が残っています。当時21歳の私には難しすぎて、さすがに歯が立たなかったようです。フランス語も、語られている内容も。おそらく、くだんの先生が授業中に『批評の関係』の素晴らしさを語ってくださって、それを聞いた私が勢い余って、フランス図書で購入してしまったのでしょう。1982年の私の鉛筆の書き込みは、とんちんかんですが、ほほ笑ましくもあります。
今年60歳になる私です。40年の歳月を経て『批評の関係』に再び挑んでいます。21歳の自分に対して、かなりに背伸びした読書だったろうねと同情します。と同時に、頑張っていたんだなと改めて褒めてやりたくなります。
2020年の私は『批評の関係』と仲良くなれるのかどうか。たしかに、40年間の経験値はあります。しかし、それだけでは足りません。いまの私は、『批評の関係』の著者、スタロバンスキーの動画を繰り返し見ているので、『批評の関係』を黙読しているだけで、印刷された文字列からスタロバンスキーの声が立ち上がってきます。私の耳元で、スタロバンスキーが『批評の関係』を音読してくれるのです。
6時間半の動画という「アイテム」が、スタロバンスキー攻略の最強の武器だったのです。改めて、先生に感謝します。
◇ジャン・スタロバンスキー - Wikipedia
http://bit.ly/2YAzYqO
◇インタビューのごく一部を、見ることができます。
https://www.rts.ch/play/tv/50-ans-de-la-tsr/video/jean-starobinski?id=3636067
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