アンドレ・ゴルツの『エコロジーと政治』(1978年)
(邦訳『エコロジスト宣言』技術と人間ほか)
は、週刊誌の編集部にいたころに、読んだはずです。
「はずです」と歯切れが悪いのは、
読み終えた年月日を本の奥付あたりに書きつけていないので、
「読んだ」と言い切れないのです。
「エピローグ」の直前までは読んだ形跡があります。
蛍光ペンで線が引いてあったりするのです。
どうやら、最後までは読んでいないようです。
「読んだ」のか「読んでいないのか」の宙ぶらりんの状態は
気持ちがよくないので、頭から読み直してみます。
読んでいて、愕然(がくぜん)とします。
イヴァン・イリイチの名前が盛んに出てくるのは、記憶の通りです。
それだけでは、ありません。
『ツナミの小形而上学』(2005年)のジャンピエール・デュピュイの名前が、
何度も出てくるのです。
これには、驚くと同時に、怖くなってきます。
私は、『ツナミの小形而上学』で、デュピュイさんと「初めまして」の
間柄になったと思い込んでいました。
実際のところは、ゴルツの『エコロジーと政治』で、
すでに顔見知りの関係になっていたのです。
ご丁寧にも、『エコロジーと政治』の中で、
デュピュイの名前とその著書に、紫の蛍光ペンで印が付いています。
ぐりぐり、と。
力をこめたとはいえ、
線を引いただけで当時の私は満足していたのです。
最後まで「読んだはず」の本は、
もう一度、頭から読み返してみるものですね。
ほかにも、きっと、ある。
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