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2020年03月14日18:24

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日日日記 音楽と絵画

「哲学者のなかには聴き手が音楽によってほんの少しの間、安らぎの領域へ逃避することで、生きる苦しみから解放されると考える人がいる。

ラフマニノフの《死の島》は,まず間違いなく彼の管弦楽による業績の中でも自信作であろう。

《死の島》は、スイスの画家アーノルド・ベックリンの描いた、死者が眠りを妨げられることなく眠る無人島の絵に触発され、その絵は画家自身が夢のような絵であると述べているにもかかわらず、リアルにニルヴァーナ(涅槃)を思い描いている。
それがラフマニノフに与えた衝撃は、きっと彼が鬱病の傾向をもっていることに関係していたであろう。もしかしたら、悲しみから解放されるのは死の安らぎにおいてのみである、と信じていたのかも知れない。もしフロイトが音楽に興味をもっていたら、この音楽は彼にも衝撃を与えたにちがいない。

フロイトが示唆するように、白昼夢は現実逃避になることもあるけれど、創作上の閃きのもとになったり、現実に適応するための新しい方法を生み出すもとにもなる。他の芸術と同じく、音楽も生きる苦しみからしばしの間、逃避させることができる。

夢が理屈に会わないことですら、たんにそう見えるだけのことで、本当はそうではない。
確かに夢には、矛盾したこと、あり得ないこと、一時的な錯乱、その他理性では受けいれがたいようなさまざまな特徴がある。しかし、ほとんどの夢は物語なのだ。

眠っている間に働く走査の過程は、最近の出来事と過去に起こったことを組み合わせ、心のなかにあることで、同じような感情を抱いたという以外にどう結びつけようもないことを互いに結びつける。夢は物語の進行という秩序を当てはめることで,こういう種々雑多な寄せ集めのつじつまを合わせようとする。

音楽が深く私たちの心に訴える理由の一つは,聴覚体験を構造化し,それを意味が通るものにする力があるからだと私は確信している」

〜ストー(精神医学者)「音楽する精神 人はなぜ音楽を聴くのか?」より

絵画にインスピレーションを与えた音楽,音楽にインスピレーションを与えた絵画など,絵画と音楽は密接な関係にあると思う。
どちらも,直接具体的に,ものごとや考え,思いを指し示し,伝える言葉・言語と違って(例えば「悲しい」という言葉から「楽しい」という感情をイメージする人はいない)直接具体的にものごとを指し示すことができない分,受け取り手の自由なイメージが広がるのだろう。

さらに,絵画では「赤」の色彩から「青」をイメージしたり,テーブルを描いた絵からリンゴを連想する人はいないが,音楽では楽器の音色や,和声の響きが特定の色や形を伝えることすらできないから(例えば,ピアノの9度の和声を聴いて,それから連想する色は人それぞれだろう)音楽はより聴き手の自由な聴き方,鑑賞の仕方を可能にするのだと思う。

そしてそれだけに,聴き手の想像力や感性がより問われるものなのではないか。

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