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2019年02月12日17:41

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ゼイタクな悩み

若い頃,次の車を何にしようかとあれこれ考えるのは,とても楽しかった(^^)。

例えば,我々庶民にとって家を買う,あるいはピアノなど高額な趣味の品を買う,なんてことは,一生のうちにせいぜい1回か,多くても2回ぐらいのことだろう。
1度手に入れたら,そうそう何度も買い換えるものでも,また買い換えが簡単にできるものでもない。
その分,選択は慎重にならざるをえない。

しかし,車の場合,10年に1度くらいの割合で,その機会は必ずやってくる。

カタログを取り寄せて比較検討したり,展示試乗会に行って,実際にこの目で見たり。
あるいはその小粋な車で買い物に行ったり,年に数回,各地の観光地をめぐり,美術館や温泉に行くなど,その車がある生活を想像してみたり。
仮に,その時の選択が間違っていたとしても,次に買い換えるときは軌道修正すればいいと思えば,多少の冒険,遊び心をもって好きに選ぶこともできる

その時間は,とても楽しいものだった。
・・・と,追憶の過去形になる。
ここ数十年,自分にとっての定番ともいえる車種が決まってしまい,モデルチェンジの都度同じ車種を乗り継いでばかりなので,それ以外の車種に乗り換えることや,選択の楽しみがなくなってしまったのだ(^^;)
それはそれでいいことなのかもしれないけれど。

今,私にとってそれに変わる選択の楽しみは「次に練習するピアノのレパートリーを,どの曲にするか?」ということ(^^)。

新年早々から練習してきた,ラヴェル「ハイドンの名によるメヌエット」が,かなり形になってきたので,次の曲をどれにしようか,あれこれ考えている。
それはとても楽しいこと(^^)

自分の好きな曲を,聴くだけではなく,自分の手に入れる。
愛しい楽曲への片思いの状態から,相思相愛の状態になる,そんな妄想にも近い感覚(←フェチかっ!)
高嶺の花のごとく,手に届かないはずの存在だった大好きな楽曲が,手を伸ばせばつかめそうな,この感じ。

家を買う,ピアノを買う,車を買う,ってことは,選択の楽しみさえあれど,お金さえあれば手に入れることができること。
しかし,音楽を手に入れると言うことは,それら「買う」ということとは根本的に異なるように思える。
楽譜を手に入れても,あるいはCDやDVDなどで音源を手に入れても,その曲を「所有する」という感覚にはなれない。
いくら貴重なレア音源を手に入れたからといって,その「物」や「データ」を手にすることは出来ても,「楽曲」の真髄を手に入れることとは,違うような気がする。

「楽曲を演奏する」ということは,楽曲を所有する,まるで自分が大好きな楽曲と一つになれたかのような感覚になれることなのだと思う。

「おそらく芸術における真の所有とは、愛しい作品がこの世でただ一人自分にだけ、その内心を打ち明けてくれたと感じられることなのだと思う。」
〜岡田暁生「音楽の聴き方」より

愛しい楽曲と自分とが,演奏を通し,互いに見つめ合い,まなざしを,ほほえみを交わす(←フェチかっ!)

楽曲への思いと,自分の力量を照らし合わせ,その曲を弾けたら,どんな感覚になれるだろう?いままで弾けなかった曲が弾けることで,自分の演奏技術の向上を確認できるのみならず,どんな世界が広がるだろう?
そんなことを妄想しながら,次のレパートリーを何にしようか考えることは,実にゼイタクな悩みなのかもしれない。


【自分の今の力量から,なんとか弾けそうな気がしている曲】
 ★印は,次のレパートリーの有力候補。模範演奏貼っておきます。

◆バッハ:「シンフォニア」第9番,または「平均律第1巻」より変ロ短調〜前奏曲
 〜いずれもグールドの名演が光る。音符のことを「おたまじゃくし」とはよく言ったもの。この2曲の譜面を見ると,五線紙という音の川を,音符というオタマジャクシが生き生きと泳いでいるように思える。

◆ブラームス:「インテルメッツォ」作品117-2★
 〜これもグールドの名演が光る。クララ・シューマンが「灰色の真珠。くもってはいるが,とても大切なもの」と表現したブラームスの間奏曲中,最も好きな曲。渋み,苦みの中に漂う,わずかな甘さ。それこそがブラームスの魅力。


◆ドビュッシー:「前奏曲集第1巻」より「沈める寺」
〜潮のみちひきで,海中に沈んでは,また姿を現す大伽藍を描いた壮大なランドスケープ!音楽という「空気の振動」,いわば一種の幻想で,音楽以外の「沈む大伽藍」という幻想を描く。「幻想」で「幻想」を表現する。


◆イベール:「金の亀を曳く女」
〜あるマイミクさんから,「私の好きそうな曲」として教えていただいた。フランス近代音楽の延長線上に,洗練されたモダンジャズのハーモニーがあることを実証しているような曲。

◆ビル・エヴァンス:Minha(All Mine)★
〜「ピアノの詩人」ビル・エヴァンスによる,クラシックだのジャズだのポピュラーだの,ジャンル分けをすることが無意味であることを思わせる佳曲。↑の逆方向で,洗練されたモダンジャズのハーモニーが,フランス近代音楽と切っても切れない不可分の関係にあることを実証している。


【今の自分の力量を超えていて,「ちと(いや,かなり)難しいかな」,と思っている曲】
バッハ:「パルティータ」第6番
フォーレ:夜想曲第6番
ドビュッシー:版画より第1曲「塔」
ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調 第2楽章〜「アダージョ」ピアノ独奏版

これらの曲を弾けたら,自分のピアノ修行も,もう「あがり」かな?って気がしている。
なので,手を出すのはもっと後にしよう,と思っている。
うかつに手出しできないし,もし今,手を付けたら,きっとケガしそうな気が。
ひょっとしたら,永遠の片思い,で終わるかも(^^;)

・・・家内からは「バッハのパルティータ第6番? 学生の頃弾いたよ」と,あっさりバッサリ言われてしまった(^^;)



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