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2018年12月14日23:13

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『武士の献立』を観てみた。

武士の献立 [DVD]
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=18627182&id=2998314

<以下、レビューページより転載>

2013年・日本映画。

チャンバラ時代劇は結構見飽きたというか、日本映画全盛期の名作群を超えるものはもう期待できそうもないなぁ。。というのがわしの見立てで、であるならば、これからの時代劇には、こういう風なモノを期待したい! と思わせる作風、それだけの佳作と思ったのが、本作であった。期待以上に面白かった。というか、見る前はほとんど期待してなかったのです。スミマセン。。

まず、チャンバラ・シーンは、ほぼなし(剣術稽古のシーンなどはあるが)。「武士の本分」たる(?)武力を行使するような話では、全然ない。
いや、というか江戸時代の場合(江戸初期のまだ政情が不安定だった時代や幕末を除いて)、武士ですら、武力を実際に行使した経験など一度もなく一生を終えた、という人が圧倒的大多数だったはずで、現代人の我々が「武士」という時に先ずイメージするのは、おそらくそうした「平和な江戸時代の武士」がほとんどだと思うから、むしろこれまでのチャンバラ映画が描いてきた「武士」が、特殊なケースだったと言えなくもないだろう。
その点、本作の主人公(真の主人公は「その妻」かも知らんが)は、剣を包丁に持ち替え、将軍家や大名家の召し上がる料理を作ることをお勤めとした「包丁侍」と呼ばれる(親しみと揶揄を込めて、こう呼ばれたそうだ)ポジションの人で、「武士の本分」は剣の道にあるのか知らんが、料理を食さないなんて人は、過去も現在も、またどんな身分の人でも、まずいないわけだから、こちらの人物を主人公とする方が、英雄豪傑などを主人公とするより、絶対的に一般性・普遍性があると見ることも出来るだろう、と(ポピュリズムのある作品が、イコールいい作品というつもりはないが、多くの共感、そして支持を得やすいのは、確かだろう)。
また、これはわしの好みというか、中年を迎えた現在の志向・嗜好とも言えるかも知らんが、英雄豪傑の血沸き肉躍る武勲譚よりも、手に職のある技術者や、ある分野を究めんとする研究者などが、作品や理論をものしていくというような話の方に、興味を覚えるキライがあるので、加賀百万石の台所を支えた「料理の名人」という本作の主人公には、とても興味を惹かれたわけだ。
話のメインは料理であったが、それが盛られる器などにも目がいった。やはり料理は器で幾層倍にも映える。こんなところもまた個人の趣味に拠る。

それから、作品の立ち位置というか、ポジショニングも、絶妙に自分の好みとマッチしていたとも思う。
主人公(の夫や義父)は実在の人物であり、今で言うところのレシピ本のような著作を何作か後世に遺しており、また、江戸期屈指の著名な御家騒動である「加賀騒動」という実際起きた事件にも、微妙に関係している。つまり、「歴史のメインストリームを歩んだ人を描いたのではないにしろ、確実に、歴史の一部(端の方であれ)に名を留めている人を描いている」ということだ。
誰でも知ってるような英雄豪傑や大事件の主役を描くのではなく、また、全くのフィクションを描くのでもない。ちょうどその中間、というか、まあどちらかといえば英雄豪傑・大事件寄りにはなるのだろうが、その端っこに微妙に関与した人物を、英雄や事件とは「ちょっとだけ接する」くらいの関係性で描く。そういう描き方が好きなのだ、と自分の好みを改めて認識したりもした。

あと、主演の上戸彩が、意外にも(?)時代劇イケるなあ、と感心。
いくら美人でも、時代劇は全く似合わないという人もいるが、彼女の場合(やはり「意外」だが)ルックス的に「江戸時代の武家のお内儀」として違和感なく見れた。演技も好かったのだろうと思う。
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