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2016年11月22日10:29

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キューバ音楽との出会いの旅/セプテート・アバネーロ

2002年2月2日に発行された「そんりさ」VOL.71に掲載された原稿です。
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二〇〇〇年に結成八〇周年を迎えたセプテート・アバネーロは、キューバでおそらくもっとも古い、ソンの名門グループである。セプテート(七重奏)・アバネーロが、ギジェルモ・カスティージョをリーダーに、セステート(六重奏)・アバネーロとして結成されたのは、一般的には一九二〇年のことといわれているが、その前身となるグループが演奏活動を開始したのはさらに古く、一九一〇年代後半のことだったらしい。もっともセステート・アバネーロとしての彼らの初レコーディングは一九二五年になってからのことで、その二年後の一九二七年にはトランペットが加わってセプテート編成となり、今日に至っている。
もちろん、八〇年という長い年月の間にメンバーは幾度となく入れ替わり、結成当初のオリジナル・メンバーの中で最後まで残っていたのはヘラルド・マルテイーネスだが、彼もまた一九五八年にその二代目リーダーの地位をマヌエル・フレーに譲ってグループを去り、ここに完全な世代交代が実現した。傑出したソンの歌い手であったというマヌエル・フレーは、以降一九九六年までリーダーを務めて引退し、続く三代目のリーダーにはギター奏者のヘルマン・ペドロ・イバーニョスが就任、今日に至っている。
メンバーを入れ替えながらグループの伝統を継承していくというスタイルでは、前号で紹介したセプテート・ナシオナールもまったく同様だが、どちらかといえばシエラ・マエストラ(ファン・デ・マルコス・ゴンザレスらハバナ大学の学生が一九八〇年代に結成した、新しい時代のソンの復興を目指すグループ)などにより近い味わいの新生セプテート・ナシオナールに比べれば、よりオリジナル色が強いといえるのが、現在のアバネーロである。
レコード等を通して、その歌と演奏を聴くことがまったく出来ず、長い間「幻のグループ」といわれていたセプテート・アバネーロだが、現在ではその古い音源の復刻が相当進んでいる。なかでもスペインのTUMBAOレーベルから一九九八年に発売された、『SEXETO Y SEPTETO HABANERO/LAS RAICES DEL SON』(TCD300)は一九二五年の初レコーディングから一九三一年までの七年間の、オリジナル・メンバー黄金期の楽曲を発表順にほぼ網羅した四枚組のCD(全九八曲)で、絶対のお薦めである。アバネーロの歴史とオリジナル・メンバーのプロフィール等をまとめたブックレットもついていて、当時の貴重な写真も多数収録されているので、仮にスペイン語が出来なくとも十分楽しめるコレクター・アイテムである。
マヌエル・フレーの自体のアバネーロは、ディスコ・カランバの『思い出のアバネーロ』(CRACD201)で聴くことが出来たが、発売元のアオラ・コーポレーションに問い合わせたところ、残念ながらすでに廃盤になってしまったとのことである。
ヘルマン・ペドロ・イバーニョスがリーダーとなってからの新生アバネーロは、一九九八年に『ソネーロたちの誇り』(CPMCD5357)、二〇〇〇年に『80周年』(CPMCD5361)と、すでに二枚のアルバムを出しており、いずれも日本ではオルターポップスから発売され、大手CDショップで入手することが出来る。
高橋研二氏はその『80周年』のライナーノーツの中で、「大歌手マヌエル・フレーが抜けたことにより、セプテートとしてのバランス、アンサンブルといった一体感は、長いアバネーロの歴史の中でも一番といっていいほど」と、絶賛している。私の個人的好みでは、新生セプテート・ナシオナールの方が上。果たして、あなたは?

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