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2021年07月25日15:29

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ヤンキー・ファンタジーをリアルに感じさせる「勇気」/【具体的なネタバレ無し】映画『東京リベンジャーズ』

■【映画ランキング】『東京リベンジャーズ』初登場1位を獲得! 公開3日間で興収約7億
(クランクイン! - 2021年07月13日 14:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=100&from=diary&id=6589913

■映画『東京リベンジャーズ』はタイムリープするヤンキー映画!北村匠海、吉沢亮らの華麗なバトルシーンが胸アツです
(Pouch[ポーチ] - 2021年07月15日 16:21)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=114&from=diary&id=6592845

■吉沢亮、初対面の山田裕貴から「イケメンですね」も「言われすぎて覚えていない(笑)」
(ORICON NEWS - 2021年07月17日 19:19)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6595704

■『東京リベンジャーズ』興収15億円突破、香港・台湾・タイの上映も決定!
(cinemacafe.net - 2021年07月19日 21:22)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=25&from=diary&id=6597998

 ニュース記事がやたら多くて、どれを引用するか困った。殆どがキャストの芸能ニュースで、映画と無関係なのばっかでね。そしてコメントの少なさと言ったら。
 興収は初登場1位スタートで、連休に入って客席も満席だったのに(二人で行ったけど並べなくてバラ席だった)、人気あるのかないのか、どっちなの?

 原作コミックは未読だけれど、マンガの実写映像化ではまあまあ評判が悪くはない英勉監督(『あさひなぐ』『賭ケグルイ』『ぐらんぶる』『映像研には手を出すな!』など)だから、そこそこの期待はして観に行った。結果はまあまあでそこそこ(苦笑)。
 可もなく不可もなくってことだけれど、どうして実写化なんて考えたんだって、プロデューサーや監督を呪いたくなるような実写作品ばっかりな中では、十分健闘したんじゃないか。
 原作未読でも、こりゃ連載途中で話をぶった切って、無理やりまとめたなってことは分かるよ? 伏線が回収し切れてなくて、意味深に出てきたキャラが何の活躍もせずに退場しちゃうんだものな。無理やりまとめて1本で完結させたって印象は拭えないけれども、ラストシーンでいかにも続編を作りますってフリをしといて、企画が潰れた実写の例はいくらでもあるから(『ど×ろ』とか『ド×ゴンボ×ル』とか『ジ×ジョ』とか『ハ×レン』とか)。きっちり「これで終わります」って言い切った潔さは立派だと思う。
 逆にヒットしたおかげで続編をって言われたら、監督は困るんじゃないかな。あの続きを作っても意味ないでしょ?

 きっちり1本でまとめた好印象のおかげで、細かいアラはあまり気にならなかった。どうして弟くんの手を握っただけでタイムリープできるのとか、いちいち手を握りに行かなきゃ現代に帰れないのなら、常に弟くんの居場所を把握してなきゃならないんじゃないかとか、そんなにしょっちゅう手を握りに来る姉ちゃんのカレシに対して、弟くんは怪しい感情を抱かないのかとか(笑)。確かに疑問は生じるんだけれど、テンポがいいと言うか、勢いを優先した展開が、それらの疑問を頭から吹っ飛ばしてくれる。
 何より主人公のタケミチ(北村匠海)が徹頭徹尾「のび太くん」なのがいいね。タイムリープ能力こそあるものの、実体はただのヘタレ。ヤンキー時代に戻っても、ヘタレな本質が変わるわけではない。でも、同じ人生を歩んでしまったら、自分を一番信じてくれているヒナタ(今田美桜)を死なせてしまうことになる。
 だからタケミチは何度でも立ち上がる。どんなにボコられても諦めない。土下座させられて、奴隷になって、逃げ出してもやっぱり戻ってきて戦う。勇気のない人間が勇気を出すから美しいのだ。うん、これ絶対「のび太」だよ!
 北村匠海も今田美桜も、どっちも映画で何度も見てたんだけどなあ。こんなにいい役者さんだったって気がつかなかったなあ。またひとつ、眼から鱗が(笑)。

 もちろんもう一方の主人公コンビ、マイキー(吉沢亮)とドラケン(山田裕貴)も、全国のヤンキー少年たちの理想を体現した熱演。二人が立ってるだけで、さわやかな風が吹いてくるような爽快感を覚える。マイキーは基本天然で、ドラケンが彼の暴走を抑える見守り役。あれだね、ルフィとゾロのコンビだね。場合によってはドラケンの方が暴走しそうになるとこもゾロだよ、これ。
 ヤンキー漫画ってのは、実は男の子にとってのファンタジーで、もちろん現実のヤンキーや半グレはこんなものじゃない。現実のヤンキーなら、タケミチはタイムリープしたその日のうちに、マイキーやドラケンに殺されてたろう。タケミチの「勇気」に共感してしまうというのは、現実のヤンキーにはない「義侠心」――「おとこぎ」を彼らが持っているからだ。

 『東京リベンジャーズ』が優れている点は、本来の時間線では、マイキーたちが「現実のヤンキー」と同じ路線を辿っていたという設定にある。ヤンキーから半グレ集団、そして麻薬も扱う「東京卍會」へ。ドラケンという歯止めを失ったマイキーが暴走し独裁への道を選んでいくのは、さながらキルヒアイスを失ったラインハルトを見るようだ。
 その「現実的な」不良集団が、タケミチの手によって「理想のヤンキーヒーロー」の道を歩んでいくことになる。タイムリープという現実にはあり得ない方法で。いささか真面目な批判をするなら、そうした非現実的な方法で不良を「更生」させる物語に感興を覚えるのは、フィクションに夢見すぎではないのか、と言えはするだろう。現実だけを見てしまえば、卍會はヤクザになるし、ヒナタは必ず死ぬのである。
 でも、タイムリープという方法に頼ったにしろ、過去に戻ったタケミチが見せた「勇気」、もしも「やり直しができるなら」という千載一遇のチャンスに、本来の彼にはなかった「勇気」が生まれたこと――そこには「真実」があるのではないか。
 それは、一度過去に戻ったとしても、そこで「失敗」してしまえば、さらに過去に戻ってもう一度歴史を書き替えることは出来ない――結局「やり直しは利かない」事実は変わらないからだ。過去において、ひとつの「死」が決定してしまえば、その死を覆すことは出来ない――だからタケミチに「失敗」は許されない。リピートものによくある「何度でもやり直せばいい」という逃げ道は、この物語には用意されていないのだ。

 だから、現実に生きている我々も、タケミチの境遇に共感することが出来る。確かに彼には「やり直しのチャンス」が与えられはしたが、それはやはり我々の現実と同じく、人生そのものは「やり直しの利かない」ものであることに違いはないからだ。
 映画のタケミチは、果たして「ミッション」を成功させることが出来るのか、結末はバッドエンドがトゥルーエンドか、未見の方はご自身の目で確かめて頂くほかはない。でも連載の方はまだまだ過去と現在を行ったり来たりしてるんだろうなあ、タケミチ、失敗しすぎなんじゃ? とも思うけれど、「現実」とは常に不測の事態が起きるものである。ファンタジーの世界においても、その「真実」だけは変わらないのだろう。
 やっぱり、続編が見てみたいかな。英監督にはさらなる「産みの苦しみ」を体験して頂きたいと思う。



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