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2020年06月06日21:06

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ゾンビだから愛せるのさ〜♪/【大きなネタバレなし】映画『デッド・ドント・ダイ』

■ビル&ティルダがミュージシャンとの撮影秘話を語る『デッド・ドント・ダイ』
cinemacafe.net - 2020年06月05日 14:03
(cinemacafe.net - 2020年06月05日 14:03)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=25&from=diary&id=6108610

■ジャームッシュ・ファミリーの永瀬正敏、『デッド・ドント・ダイ』に大興奮「最高過ぎる!!」
(クランクイン! - 2020年06月04日 18:02)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=100&from=diary&id=6107611

 ここんとこ、嫌なニュース、悲しいニュースばかりで、気分が落ち込んで仕方がない。自粛も限界をとっくに超えちゃってるし、映画でも観てなきゃやってられないのだ。自粛警察さん、いきなり背後から殴りかかったりしないでね。
 映画業界は、全国的にほぼ通常営業に戻った。でも客足はまだまだ通常とは行かず、3密どころか、チケット売り場前の行列も間隔を開けてパラパラいる程度。劇場の中に入っても、封切りしたばかりの映画が、土曜の昼間だってのに10人くらいしかいないんだもの。シューキョー映画以外はこんなもんなんだなあ。
 まあ、観に行ったのがジム・ジャームッシュ映画だから。マニア以外、そうそう来るわきゃないと言われたらその通りだけどさ(苦笑)。

 永瀬正敏ではないが、私も「えっ、ジム・ジャームッシュがゾンビ映画を?」と驚いた口である。
 ゾンビ映画にしろオカルト映画にしろホラー映画にしろ、これは「職人」が作るものであって、おそらくは「アート系」に分類されるであろうジム・ジャームッシュが監督することには違和感があった。しかしそれはジャームッシュ監督の趣味をよく知らなかったこちらの不明だったようである。実は監督、「ホラー映画超大好きっ子」であったのだ。
 一応は私もジャームッシュ映画を5、6本は観ているので(少なくてすまんね。なかなか大劇場に掛からないから)、どんな「傾向」の映画になるかは見当が付く。見方を間違ったら全然つまんなく感じるだろうなあと思っていたので、「心の準備」をして臨んだのだ。
 案の定、これはかなりへんちくりんな映画であった。一言で言えば、これは「ゾンビ映画を愛している映画」であって、「ゾンビ映画」ではない。ゾンビ映画を観るつもりでいると、アテが外れるのである。

 たとえば、ゾンビによる最初の被害者が出たとき、その「食い散らかされた死体」を観て、第一発見者も駆けつけた警官二人も、複数の野生動物のしわざかと推測する(このとき、いちいち同じ台詞を繰り返す軽いギャグがユルユルでよろしい)。ところがもう一人の警官、アダム・ドライバーだけが、「これはゾンビの仕業だ」と断定するのだ(このシーンは予告編で観られます)。
 確かに、登場人物の誰か一人が「真実」を指摘するってのがホラー映画の定番だ。『ゴジラ』における「やっぱりゴジラかもしんねえ」の高堂国典じいちゃんの役回りだね。しかし、なぜその人物が真実を掴むことができたのか、それには「理由付け」が必要になる。ジャームッシュは事前にちゃんと「伏線」を張っているので、目聡い人は気がつくと思うんだよね。私も威張りたいわけではないが気づいた。
 これに気がつけば、この映画が「どういう映画か」が早い段階で理解できるし、楽しめるようになっている。うっかり見逃すとね、真相が判明した時点で「その手があったか!」と喜ぶ人と、「ふざけんなジャームッシュ」と怒るか脱力するかする人との両極端に分かれちゃうと思うんだよ。実際、他の人のレビューを見ていると、このへんのネタを「つまんない」と断じてる人が結構いるんだよね。
 でもジャームッシュは隠そうとして隠してるわけじゃないから。ちゃんと分かりやすいヒントを出しているんだから、気がつくのが「普通」。怒るのは、映画の上っ面だけを漫然と観てるからだろうってことにしかならない。あまり感情的に貶すものではないと思うよ。

 はっきり言っちゃえば、ジャームッシュはこの映画で実に楽しげに「遊んでいる」。これまでのゾンビ映画、ホラー映画のパターンをちょこっと捻って楽しんでいる。
 あまりネタバレしない範囲で、いくつか例を挙げればさ、舞台となっているセンターヴィルって村のあちこちに、「どこかで見たことがあるような建物」があるわけよ。映画ファンが見れば、ああ、ここでああいうことが起きるだろうなあと見当が付くような。そこは定番通りにやるんだけれど、ちょっと「捻ってる」っていうのは、「なぜゾンビがその場所にやってきたか」という理由付け。
 これもゾンビものの定番で、「ゾンビは生前に執着していたモノのところに真っ先にやってくる」ってのがあって、だから「家族」が最初に食われたりするわけなんだけれど――だいたい見当が付くと思うけど、リアルな人間って、そんなにヒューマニストばっかりじゃないよね。予告編にもあるけれど、「シャルドネ」って言ってるゾンビはシャルドネが好きだったんだよ。つまりこの映画、なぜ死んでまでシャルドネがほしいんだよ、とツッコミながら観るのが正しいのだ。
 いやもう、ありとあらゆる「生前の執着」が出てくるから、いちいち笑っちゃうのよ。しかも特別ゲストさんが、いかにもそれだよなってブツに執着するギャグもあるので、気づいた人は大いに笑っていただきたい。分かる人にしか分からないネタばっかりだけど。
 さて、あなたが食われたら、何とつぶやきながらゾンビるだろうか? 私はもちろん妻の名前を呼びながらゾンビります。ホントよ。

 ゾンビ映画も結構観てきたつもりではあるけれど、こんなに人間味溢れたゾンビばっかり出てくる作品は、ゾンビ映画史上初かもしれない。とは言え、人間味溢れてるったって、意思疎通ができるわけではないので、ゾンビはゾンビなんだが。
 ゾンビハンターたちはゾンビを容赦なくぶっ殺していくけれど、中にはゾンビになる前、食われた直後で蘇る前に殺されちゃうヤツもいるんだよね。ちゃんとゾンビになって何に執着していたか喋ってから殺そうよ、と、この映画で残念だったのはその点くらい。
 いいヤツも、嫌なヤツも、平等に食われてゾンビになっていくのは、監督がゾンビを愛しているから。早いとこみんなをゾンビにしてあげたいから。だからこの映画のゾンビたちは、いきなり現れて観客をビビらせるなんてことはしない。ゆっくり現れて、ゆっくり襲いかかるのである。怖くなんかないんだよ、ゾンビはみんな友達さ♪ さあ、みんなでゾンビになろうよ!

 あの人が最後にあんなふうになっちゃうのはなぜなの? とアタマを抱えた人もいるかもしれないけれど、そりゃああの人があの人だから、と答えるしかない。ジャームッシュ映画の常連さんで、これまでのジャームッシュ作品でも美味しい役を演じてこられていたからねえ、あれがやっぱり正しいのだよ。
 全体的にはゆるーい感じの、どこか常識的な感覚からズレてる感のある映画で、好き嫌いはあるかもしれないけれど、ハマる人はずっぽりハマっちゃうと思う。ともかく徹底して無表情なアダム・ドライバーが喋るだけでオカシイ。ティルダ・スウィントンはカッコイイし、ビル・マーレイは可哀想(笑)。キャラクターの見所も随所にあるのだ。
 あれだね、諸星大二郎の『栞と紙魚子』シリーズみたいに、基本はホラーなんだけれど、どこか抜けていて、そこはかとないユーモアが漂ってる雰囲気のマンガ、あれに近い感じと言えばいいだろうか。ジャームッシュ、日本通だし、諸星大二郎を読んでるんじゃないかと思ったよ。

 やっと公開されたけれど、延期されてきた映画の公開ラッシュが始まるだろうから、どの映画も短期間で打ち切りになるかもしれない。早いうちに観に行きましょう。

●映画『デッド・ドント・ダイ』公式サイト|6月5日(金)公開 - ロングライド
https://longride.jp/the-dead-dont-die/


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