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2020年03月23日07:49

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100日後も心に残り続けるワニ

■101日後に炎上したワニ 「電通案件」否定、作者は涙の釈明
(朝日新聞デジタル - 2020年03月21日 21:22)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6017416

■手塚治虫さん長女「父はワニに嫉妬」ツイートで物議
(日刊スポーツ - 2020年3月22日11時55分)
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202003220000160.html

 きくちゆうき氏がなぜモーレツなバッシングを受けているのかサッパリ分からなかったのだが、これはまあ、あれだ、「推しのアイドルがグループを卒業した次の日に恋人発覚をスクープされたファン心理」みたいなものなのかな(苦笑)。
 「最初から電通案件だった」というのは根も葉もないインボー論に過ぎないと思うが、連載中から既に映画化やグッズ販売のオファーはあって、作者がそれに乗ったために、ファンはそこに「不純」なものを感じ取ってしまったらしい。
 でも正直な感想を言わせてもらえれば、それってアイドルへの「幻想」と同じで、「漫画家に対して夢見すぎ」なんじゃない? アイドルだって人間であるように、漫画家だって人間だよ? アイドルが恋をするように、漫画家だって映画化やグッズ販売にOKを出すものなんだよ。それを「裏切られた」ように感じるのは、漫画家に「過剰な思い入れ=幻想」があるからじゃないのかな?
 つまりは「漫画家は金儲けのために作品の魂を企業に売るようなことをしてはならない」なんて「信仰に近い感情移入」をしちゃっているのである。漫画家に「品行方正、清廉潔白な聖人君子」を求めているのである。いないから、そんな漫画家。漫画家も商売でやってるんだよ、当たり前じゃん?
 もしかして、漫画の海賊版サイトとか、漫画をできるだけ安く、あわよくばタダで見たいってファン(とは言えないけど)が、金儲けするなとか文句を付けてるんじゃなかろうか。そんな気もする。あるいは他の、映画化もグッズ販売もされてない漫画家のファンで、きくちさんに嫉妬している人たちが扱き下ろしてるんじゃないかとか。こっちの可能性の方が高いかな。
 「せめて映画化の決定やグッズ販売が半年後くらいだったら」とか「もう少し余韻に浸らせてくれてたら」とか、それもまた作者に対する勝手な要求と言うか、何を作者に甘えようとしているのかと。
 仮に最初からスポンサーありきの企画だったとしても、作品の評価がそれで変わるっておかしくないか? きょうび、初めからメディアミックスを目論んで作られる漫画とかアニメとか、腐るほどあるぞ?

 「たぶん天国の父は今猛烈に嫉妬してると思う」
 手塚るみ子さんはさすがに「分かっていらっしゃる」方で、きくちさんが「嫉妬されるほどの才能の持ち主」であることを、父・手塚治虫の名前を引用して賞賛している。
 有名な話であるが、手塚治虫は「一番病」(命名・水木しげる)に罹っちゃってた人で、常に「漫画・アニメの第一人者」でなければ気が済まなかった。新しい漫画、才能ある漫画家が出るたびに嫉妬し、「自分もそれくらいの漫画なんて描ける」と実際に「模倣漫画」の連載を始めたが、「本家」程には人気が取れず、何度も失敗していた。
 ちょっと思い浮かべるだけでも、手塚治虫が「嫉妬した相手」は枚挙にいとまがなく、白土三平、水木しげる、さいとうたかを、石森章太郎、藤子不二雄、大友克洋、諸星大二郎、高橋葉介、吾妻ひでお、いしかわじゅん、宮崎駿等、錚々たる面々が並んでいる。梶原一騎系のスポ根漫画が流行した頃には、スタッフに向かって「この漫画のどこが面白いのか教えてくれ!」と絶叫した、というエピソードまで残っている。大友克洋に「あなたのような絵も描こうと思ったら描けるんですよ」と直接面と向かって発言したという手塚治虫も、描けない作品はあったのだ。さて、手塚治虫が生きていたら、ワニに対抗してどんな漫画を描いていただろうか。
 るみ子さんのTweetに対しても、「お前はいつから手塚治虫の代弁者になったのか」なんて言いがかりを付けてきた人間がいたそうだが、手塚治虫ファンなら、あの人が嫉妬の塊であったことなんて先刻ご承知の話である。そんな文句を付けてきたヤツに向かっては、逆に「お前こそ手塚治虫の何を知っている気になってるんだ」と言ってやりたい。

 別段、『100日後に死ぬワニ』に対して、絶賛しか認めないなんて偏狭なことを言いたいわけではない。どんな作品にだって、賛否両論があってしかるべきである。けれども作品内容に対する批評とは無関係なところで、ただの批判のための批判が行われている状況は、漫画界全体にとっては決して好ましいとは言えない。作品を適切に評価することがいかに余計な夾雑物に邪魔されてしまうものなのかということを実感しないではいられないのだ。
 面白かったなら、面白かった、つまんなかったらつまんなかった、それだけでいいじゃない。電通案件なんてデマに乗っかって、さも自分の怒りが義憤であるかのように装うのって、そっちの方がみっともないよ。どんなにその存在に許せないものを感じたとしても、実際に社会的に受けている事実に対して、手塚治虫のように素直に「どこが面白いんだー!」と嫉妬心オープンで叫んでくれた方が、よっぽどかわいらしいと思うのである。
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