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2020年06月22日21:14

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知らなくてもいいことなのか。

 おいしい牛肉にするためには「血抜き」をしなければならないということ,そして血抜きをどうやってするのかということをこの本で初めて知りました。『いのちの食べかた』(森達也)です。
 魚を血抜きするのは知っていました。一方,牛だろうが豚だろうが肉に血が混ざっているとおいしくないのは魚と同じであるのは当然の理屈です。今までそのことに考えが及びませんでした。
 魚を血抜きするところはテレビで見たことがあリます。しかし牛や豚はテレビで放映されたことはないと思います,たぶん。牛や豚が殺されるところを見るのは超えがたい衝撃があるからでしょう。そんなのをテレビで見せられて平気でいられる人は数少ないにちがいありません。
 しかも,血抜きをするのは生きているうちでないとうまくいかないそうです。心臓が止まると血が固まってしまうからうまく抜けないのだそうです。たから,死ぬ前に血を抜いてしまわないといけません。そんな牛の瞬間を見せつけられるとしたら誰しも耐え難い。
 じゃ,見なければいいのか。知らなくてもいいことなのか。今まで見たことも,知ろうとしたこともないけれども,おいしい牛肉は食べてきました。

 以下,『いのちの食べかた』から引用しますが,ショッキングな描写もあるので注意してください。

<以下引用>
P67 お肉ができあがるまで
 現在の芝浦屠場は,一言にすれば大規模な食肉工場だ。係留所で一晩休養した牛や豚は,ホースの水で体を洗われてから,それぞれの工程に運ばれてゆく。まずは大動物。牛の場合から見てみよう。
 体を洗われた牛は,一頭がやっと通れるだけの幅の通路に追い込まれ,先頭の牛から順番にノッキングを受ける。この光景を初めて見た人は,押し当てられたピストルで牛は額を撃ち抜かれていると思うはずだ。でも額に当てられたピストルの銃口から出るのは弾丸ではなく,「ノッキングペン」と呼ばれる細い針だ。長さは3センチほど。眉間を打たれると同時に脳震盪を起こした牛は硬直し,次の瞬間,通路の側面の鉄板が開かれ,段差にすれば1.5メートルほど下の床にまで,四肢をこわばらせたまま傾斜を滑り落ちる。
 牛が斜面を滑り落ちてくると同時に,待ち構えていた数人の男たちが牛を取り囲む。頭に回ったひとりが,眉間に空けられた穴から金属製のワイヤーを素早く差し込む。1メートルほどの長さのワイヤーが,あっという間に牛の身体に吸い込まれて見えなくなる。
 差し込まれたワイヤーは脊髄を破壊する。だから全身が一瞬で麻痺をする。牛のよってはこの瞬間に,片足を痙攣させるなどの反応を示す場合もあるが,ほとんどの場合は無反応だ。
 このとき,ほぼ同じタイミングでもうひとりが,首の下をナイフでざっくりと切る。切断された頸動脈から大量の血がほとばしる。天井に取り付けられたトロリーコンベア(吊り下げ式のベルトコンベアと考えればよい)から下がる鎖に片足を引っ掛けて,牛は逆さまに吊り上げられる。
 全身は麻痺しているが,牛はまだ死んでいない。つまり心臓は動いている。ここが肝心なのだ。心臓は動いているから,血液は切断された頸動脈から床に大量に放血される。
(後略)
<以上引用>

 この本は中学生向きに書かれた本でしたが,大人が読んでも十分読み応えがありました。

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