そんなことありません。日本人だって表情は大切です。

　わたしは生粋の日本人ですが，口元が隠されているマスク姿は非常に気になります。不気味にうつるし，いっこうになじめません。目元ももちろんですが，口元もコミュニケーションには大事だし，顔全体の表情が過小視されていいはずがありません。

　専門家と呼ばれる人が言えば無防備に信じてしまいかねませんが，この先生の意見はステレオタイプで根拠に乏しい意見です。油断大敵，一見分かりやすいけど間違った意見です。日本人，あるいは世間におもねった根拠のない日本びいきの意見だと思いました。
　欧米人だから日本人だからとざっくり言うのは科学者として安易すぎます。日本人はたしかに大げさな表情表現はしません。だからといって表情を読み取るのを大切にしてないわけではありません。逆に大げさでない分だけ微妙な変化を表情から読み取っているはずです。それで大人も子どももコミュニケーションが成り立っていました。
　それなのに顔の大部分を隠してしまうマスクが人間関係に影響を及ぼさないわけがありません。散歩の途中で声をかけられて誰だかわからなかったことがあリます。当然とっさの返事ができませんでした。
　子どもの場合はさらに深刻です。先生は授業中子どもの表情を読み取りながら授業を進めます。「わかりましたか？」「はーい」と元気よく手を挙げる子どもたちのなかには戸惑いの表情を漏らしてしまう子が少なからずいます。分かってない子をサーチする大事なアイテムが表情なのです。先生は「はーい，と言ってるけど分かってないな」と確認しながら進めていきます。
　授業よりもっと深刻なのが子ども同士の人間関係です。表情が読めない，つまり気持ちが分からない子と仲良くなるのは難しい。子どもだって相手のマスク顔は不気味に感じるしなじめるはずがありません。いや，言葉も人生経験も未熟な子どもならなおさら評定によるコミュニケーションが重きを占めているはずです。言葉も表情も気持ちもわからない不気味な宇宙人のような子と友だちになれるはずがありません。
　日本人の多くがマスクをしているのは事実ですが，日本人はマスクをしていても平気なわけではありません。マスクによって多くの日本人が心に大きな傷をつくっていると思います。なぜ日本人がこうも素直にマスクをするのか簡単には言えませんが，メリットよりデメリットのほうがはるかに大きいと思っています。

　90％以上の人がマスクをしている日本が異常だと思います。マスクをしている人もいればしてない人もいる，そういう欧米の光景のほうがよほど健全です。大本営の方針で敵戦艦に突っ込んでしまったり，贅沢は敵だと帝国婦人が攻撃したりしていた時代に似通っているように感じています。

■マスク苦手な欧米、心理学に答えあり　日本人との違いは
(朝日新聞デジタル - 06月20日 15:10)
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