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2019年07月20日21:14

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シュリーマンの日本観察眼

 トロイの遺跡発掘で有名なハインリッヒ・シュリーマンが幕末に来日し日本旅行記を表しています。1865年6月1日から7月4日の1か月間が滞在期間です。14代将軍家茂の治世になります。
 たった1ヶ月間の滞在ですから深いところでの理解には至らなかったとは思います。でも,短期間だからこそ新鮮かつ純粋な目で「日本」を捉えています。

 ジュリーマンは直前に訪れた中国(清国)と比べて日本にはかなりいい印象を持ったようです。中国に対しては無礼,不潔,頽廃といった厳しい言葉が並びますが,日本については親切,清潔,精勤といった表現で好意を示しています。
 日本の江戸時代,果たしてシュリーマンの表現する通りの”桃源郷”だったかどうかは保証できません。1ヶ月の滞在では所詮闇の部分は見えなかったのでしょう。

 しかしながら,当時の役人が賄賂を受け取ることを恥とし,それよりも切腹を選ぶという時代の精神は高いレベルに達していると思います。この一点を比べたら,江戸社会が現代社会より劣っているという論理は成り立たないように思います。「江戸時代でなくて現代に生まれてよかった」と,大半の現代人がそう言うだろうと思いますが,実は,そうではないかもしれません。

 以下気になったところをそのまま抜粋してみます。
<以下引用>
P82
 家族全員が,その周りに正座する。めいめい碗を手に取り,二本の箸でご飯と魚をその小さな椀に盛り付けて,器用に箸を使って,われわれの銀のフォークやナイフ,スプーンではとても真似のできないほど素早く,しかも優雅に食べる。

P83
ところが日本に来て私は,ヨーロッパで必要不可欠だと見なされていたものの大部分は,もともとあったのもではなく,文明がつくりだしたものであることに気がついた。寝室を満たしている豪華な家具調度など,ちっとも必要ではないし,それらが便利だと思うのはただ慣れ親しんでいるからに過ぎないこと,それら抜きでも十分やっていけるのだとわかったのである。もし正座に慣れたら,つまり椅子やテーブル,長椅子,あるいはベッドとして,この美しいござ(畳)を用いることに慣れることができたら,今と同じくらい快適に生活できるだろう。もしヨーロッパの親たちが日本の習慣を取り入れて,子供たちの結婚準備から解放されたら,それはなんという励ましになることだろう。

P87
 日本人が世界でいちばん清潔な国民であることは異論の余地がない。どんなに貧しい人でも,少なくとも日に一度は,街のいたるところにある公衆浴場に通っている。しかも気候が素晴らしい。いつも春の陽気で,暑さにうだることも,寒さを嘆くこともない。しかし,にも関わらず日本には他のどの国よりも皮膚病が多い。疥癬を病んでない下僕を見つけるのに苦労をするほどだ。この病気の原因を探るには実に苦労した。いろいろ見聞したことから推量するに,唯一の原因は,日本人が米と同様に主食にしている生魚(刺身)にあると断言できると思う。

P104
 寺は,(中略)境内に足を踏み入れるや,私はそこにみなぎるこの上ない秩序と清潔さに心を打たれた。大理石をふんだんに使い,ごてごてと飾り立てた中国の寺は,きわめて不潔で,しかも退廃的だったから,嫌悪感しか感じなかったものだが,日本の寺々は,鄙びたといってもいいほど簡素な風情ではあるが,秩序が息づき,ねんごろな手入れの跡も窺われ,聖域を訪れるたびに私は大きな歓びをおぼえた。
 (中略) 僧侶たちはといえば,老僧も小坊主も親切さとこのうえない清潔だが際立っていて,無礼,尊大,下劣で汚らしいシナの坊主たちとは好対照をなしている。

P146
 (前略) 役人たちが欲得ずくでこのげんなりするまでの警備に励んでいるのではないことはよく承知している。だからなおのこと,その精勤ぶりに驚かされるのだ。彼らに対する最大の侮辱は,たとえ感謝の気持ちからでも,現金を贈ることであり,また彼らのほうも現金を受け取るくらいなら「切腹」を選ぶのである。
<以上引用>


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