蜘蛛

　旅から戻るとトイレの天井に蜘蛛が住んでいた。巨大な蜘蛛だ。相応の巣を作られるとトイレが使えなくなるので退散願わざるを得ないが、巣を張らない蜘蛛らしい。もしや、かの御高名を欲しいままにする名高きアシダカ軍曹閣下様？と気色ばんだが違うらしい。アシダカグモは徘徊性だが、この蜘蛛は違う。トイレの天井の同じ場所を微動だにしない。

「ちゃんと食べてるの？お母さん心配だわ？」
　ぱっと見、トイレはおろか部屋に他の虫は見当たらない。だが一応ゴキブリ捕獲器には成虫と幼虫がそれぞれ1匹ずつ捕獲されている。可能性がないわけではない。
　だが、君の方針には干渉しないけれど、もう少し効率の良い方法はないのかね？たまには場所を変えるとか。まあ彼はプロだ。私のような素人より正しいのかも知れぬ。
　アシダカグモのように徘徊して獲物にありつけられなければエネルギーの無駄遣いだ。じっと動かず待ち受ける戦略の方が省エネルギーで正しいのかも知れぬ。

　ググってみた。どうやらイエユウレイグモらしい。コバエ・チャタテムシ・ダニが主食とのこと。意外と小食なのだな。いちおう巣は張っているが不規則な物だという。そういえば帰宅直後に彼の巣を破った。糸数本で以降それが再建される事はなく、私の生活には無影響だ。ならば尚更、彼（彼女？雌雄確認法は調べてないし、知ったとしても確認は困難に違いないからどっちでもいいや）にこちらから影響を与えるべきではない。
　彼の下に糞の形跡がある。掃除機で吸えないから放置していたが今度綺麗に掃除しよう。そうすれば彼の安否確認の足しになる。今まで息を吹きかけて動くかどうかで安否確認していたが、彼にとって迷惑に違いない。