熱帯アフリカ、ケニア沿岸部のパンガ・ヤ・サイディ洞窟(下の写真の上)で、約7万8000年前の意図的に埋葬された幼児の子どもの墓が見つかった。イギリス、ケンブリッジ大のM.マルティノン=トレス(下の写真の下)ら、国際研究チームがイギリスの科学週刊誌『ネイチャー』5月6日号に発表した。
◎丁寧に埋葬された子ども
「ムトト」(スワヒリ語で「子ども」の意味)と名付けられた遺体は、2歳半〜3歳くらいで、洞窟に掘られた坑に右側を横にした屈位で見つかった(写真=ムトトの遺骸の復元)。頭骨と上半身の骨格の大半、大腿骨の一部が見つかり、遺体は腐敗する前に新鮮な状態で置かれたことが分かった。
この状態から、幼児は死後すぐに、洞窟に墓坑が掘られ、そこに丁寧に埋葬された、と判断された。また幼児は、解剖学的構造からホモ・サピエンスと判定された。
死因が何かは分からないが、まだヨチヨチ歩きができた程度の薄幸の子どもの死に、親は現代の親と同じように悲しみ、嘆き、その末に丁重に埋葬したのだろう。
◎7.8万年前、現時点ではアフリカで最古の墓
これは、年代測定でも確認された。光励起ルミネッセンス法による年代測定で、7.83万年前±0.41万年と出され、幼児遺体がMSA(中期石器時代)のものであることが分かった。MSAは、芸術、身体装飾、ビーズ装身具、骨製銛など、現代人的行動が主として南部アフリカで開花した時代である。
ただ意外にも確実な埋葬遺体は、これまでMSAでは見つかっていなかった。
むしろアフリカを出た中東のホモ・サピエンスでは、スフール洞窟、カフゼー洞窟で、13万年前から9万年前の埋葬遺体が見つかっている(図)。
◎いずれはさらに古い墓が見つかる?
アフリカで確実な埋葬遺体ではムトトが最古のものになるが、それも「今のところ」だろう。中東で埋葬が始まったというよりも、まだアフリカでは発見されないだけなのだと考えるからだ。MSAの埋葬例は、パンガ・ヤ・サイディ洞窟の例がその手始めに過ぎないと思われる。
ちなみにエチオピアなどでは、遺体に何らかの祭祀行為がなされたらしい跡の残るヘルト遺跡の15.5万年前のホモ・サピエンス化石が見つかっているが、墓はまだ確認されていない。
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