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2020年10月18日06:01

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鉄とニッケルで出来た小惑星プシケの謎(後編):謎を解くか、探査機2022年に打ち上げ

 小惑星としては何の変哲も無いプシケが注目されるようになったのは、それが暗黒の宇宙で「輝いていた」からである。
 ただし、レーダーを照射して、のことだが。

◎プシケの経済価値は1000京ドル!
 プエルトリコのアレシボ電波望遠鏡(写真)は世界最大の電波望遠鏡だが、観測の一環でプシケに電波を当てたところ(レーダー観測である)、驚くべき反射率で電波が戻ってきた。反射率は、他の小惑星の3倍もの37%もあった。これは、プシケが金属で出来ていることを示していた。宇宙で金属と言えば、隕鉄の素材となっている鉄とニッケルである。
 実際、プシケの比重は約7もあり、普通の小惑星の倍以上も重く、また鉄の比重に近い。
 仮にプシケを地球に持って来れたとしたら、それによる金属相場の暴落がないと仮定すれば、実に1000京ドルもの価値があるという。こんな「お宝」が小惑星軌道を回っているのだ。

◎惑星内部コアはドロドロに溶けた状態で形成される
 惑星科学者は、こんなプシケに興味を抱いた。地球など大型の岩石惑星は、内部に鉄・ニッケルのコアを持つが、その周りはケイ素主体のマントルだ。プシケは、なぜ周りの「衣」であるマントルを失い、中心角のコアが剥き出しになっているのか。
 コアは、無数の微惑星が衝突し、大きな惑星に成長し、衝突の時のエネルギーと岩石に含まれる放射性元素の崩壊熱で全体がドロドロに溶けた後に、比重の大きな鉄・ニッケルが中心部に沈んで形成される。
 しかしプシケの直径約250キロというサイズから、元の惑星はさほど大きくなかったはずだ。それでも元の惑星内部でコアが形成されたのか。

◎太陽系形成初期には放射性のアルミニウム26により微惑星でもコア形成
 この疑問は、後の地球に飛来した隕石の研究などで、太陽系形成の初期に、放射性のアルミニウム26が崩壊してマグネシウムに変わった時の崩壊熱で、微惑星内でもドロドロに溶けるとの推定が導かれ、解決した。なおアルミニウム26は、太陽系形成初期には豊富に存在していたが、短い半減期(71.7万年)のために今では天然にはほとんど存在しない。
 すると木星―火星間に微惑星が大量に存在した時も、これらの微惑星内部に小さなコアが形成された可能性がある。これらの微惑星のうち、比較的大きな微惑星と小さな微惑星が衝突すると、小さな微惑星は粉々になって最終的に10数個の微惑星に落ち着く一方、大きな微惑星も外側のマントルが剥がされ、同時に小さな微惑星のコアを取り込み、コアだけは成長した――。
 これが、今のプシケではないか、と見られている。地球に飛来する隕鉄は、その時の破片なのかもしれない。

◎見慣れた他惑星のクレーターとは異なる?
 しかしプシケが形成された後も、微小惑星が衝突し、表面に多数のクレーターを作っただろう。ただ鉄・ニッケルで出来たプシケの場合、その形態は他の岩石の惑星や衛星表面のクレーターとは異なるとも考えられる(想像図)。
 岩石なら衝突で出来るクレーター孔の縁は、後の風化でなだらかになる。しかし金属なら、頑丈なので、ひょっとすると衝突跡が羽根のように残るかもしれない(想像図)。クレーターの形は僕たちの見慣れた月や火星、水星などの表面のクレーターとは違うはずだ。
 さらに金属惑星なら、比重が大きいから重力も大きくなり、それが表面をどのようにしているのか興味深い。

◎2022年8月にプシケ探査機が打ち上げ
 惑星科学者たちは、プシケ探査計画を立案し、NASAの募集した低予算の惑星探査を公募するディスカバー計画に応募し、2017年1月、27の提案の中から採択された。
 プシケ探査機は、2年後の2022年8月に打ち上げられる。9カ月後に火星に接近し、その重力を利用してのスイングバイで加速され、2026年1月にプシケに到着する予定だ。
 到着後は、20カ月ほどプシケを観測する。
 高空からのプシケの形をぜひ見てみたいものだ。
 なお宇宙資源としての鉄・ニッケル小惑星については、13年7月29日付日記:「東大総合博物館の特別展『宇宙資源――Pie in the sky』を観る」を参照)。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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