紙の媒体の衰退は、カメラ雑誌にまで及んだ。一時期、僕が購読していたこともあるカメラ雑誌『アサヒカメラ』である(写真=上は6月号、下は最後の新年号の2020年1月号)。
◎最盛期市場シェアは7割のガリバー・カメラ誌
版元の朝日新聞出版が1日、6月19日発行の7月号で休刊(出版業界の用語で事実上の廃刊)すると発表した。
『アサヒカメラ』、通称「アサカメ」は、カメラ愛好家にとって知らぬ者はない月刊誌だ。創刊は、1926(大正15)年4月、と古い。その後、毎日新聞社が『カメラ毎日』、専門出版社の日本カメラ社が『日本カメラ』を出した。
しかしカメラファンの間では、アサカメの人気は圧倒的で、市場シェアは最盛期は7割を占めたといわれる。
◎アマチュア写真家にはコンテスト掲載はステータス
内容は、カメラやレンズなどの最新情報や、第一線の写真家の作品の紹介などだか、呼び物はアマチュア写真家の投稿する写真コンテストだった。
ここに採用されてアサカメに掲載されれば、仲間に自慢できるステータスだった。アマチュア写真家は、だいたいグループを作って、撮影旅行や撮影会を実施している。写真コンテストは、そうしたファンの目標でもあった。
本体やレンズなどの新機種の性能・機能の詳細なレポートは、機材選びの重要な情報源だった。
◎分厚い広告もマニアには情報源
またカメラメーカー、レンズ専業メーカーなど、カメラ業界が競ってアサカメに広告を出し、そのため分厚く重い雑誌の半分以上は広告ページで占められ、ファンはその広告も、自らのマシーンを充実させるアクセスとして閲読したものだ。アサカメにとっては、全盛期はこの広告収入が、販売収入よりかなり多かったのではないか、と思う。
そんなわけだから、カメラファンの自宅には、必ずアサカメ最新号が備えられていたものだ。
だから僕は、このニュースを見て、アサカメよ、おまえもか、とあらためて思った者だ。
◎今やSNSにアップする時代
僕が購読していた時代は、フィルムカメラだけだった。アマチュア写真家のセミプロ級は、自ら暗室を作り、現像して、引き延ばしたりして楽しんだ。カラー写真が全盛になっても、暫くはプリント主体だった。
おそらくデジタル化の波を最初に襲ったのは、カメラ業界だろうと思うが、デジタルカメラがフィルムカメラに取って代わるようになると、アマチュア写真家の裾野は広がったが、彼らはもはや雑誌に投稿するよりも、インスタグラムなどSNSの投稿を競うようになった。
◎スマホで写真撮るならデジカメもカメラ誌も不要か
カメラ新機種選びも、スマホで写真を撮る世代には無縁で、アサカメの購読者の基盤が掘り崩されたのである。
スマホは、デジタルカメラのうちコンパクトデジカメを駆逐しつつある。カメラメーカーにとってデジカメは、高級な一眼レフとミラーレスに注力するしかなくなっているが、その市場もかつてほどではなくなっている。
アサカメは、その時代の流れの中で、存在意義を失ったのだ。
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、
https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202006050000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。
昨年の今日の日記:「樺太紀行(34);ブッセ湖のワイルドフラワー狩り、バーベキューを楽しむロシア人」
ログインしてコメントを確認・投稿する