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2020年04月06日05:38

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恩ある虫に死へのトラップを仕掛ける毒草=テンナンショウの名を知る

 9年前の秋、山中湖東岸の高指山を下山中、道ばたの林の中に真っ赤な実をトウモロコシ状にびっしり付けた植物を見たことがある(写真)。

◎シュウ酸カルシウムを含む
 毒々しい赤さは、見るからに「毒がありそう」と思え、強く印象に残った。しかし植物の名前は分からず、ともかく写真に撮ったが、そのまま忘れていた。5日付の日経新聞サイエンス欄に載っていたテンナンショウ(天南星)の記事を読み、その実だとピンときた。
 直径7ミリくらいの実が、100粒はついていた。サトイモ科に属する植物によくあるシュウ酸カルシウムの針状結晶を含み、口に含むと刺さって腫れるという。
 なおテンナンショウとは属名で、ほとんどの種は芽が出て育ってもしばらくは雌雄無性で花をつけない。

◎花は途中で性転換する
 変わっているのは、この属は、性転換するということだ。
 育つと最初は雄株となる。育って子孫を残せるまでになると、性転換して雌株となるのだ。
 もう1つ変わっているのは、花は未見だが、虫媒花であるのに、花粉を媒介してくれる昆虫にはトラップともなるのだ。
 写真は、ヘビが鎌首をもたげたような、一見したところ花に見えるが、「仏炎苞」(大きな苞葉)と言い、同じサトイモ科のミズバショウの白い部分と同じだ。そう言われれば、よく似ている(下の写真の上はテンナンショウの、下の写真の上と中央はミズバショウの仏炎苞と群落)。
 花は、この仏炎苞の中に隠れている。

◎花粉を運ぶ恩ある小昆虫を死に至らせる危険な花
 ここからが、テンナンショウの「危険な本性」である。雄花は小昆虫を仏炎苞内の下部にある花の雄しべに誘い込み、狭い場所に閉じ込められた昆虫は花粉まみれになる。しかし殺しはしない。仏炎苞の合わせ目の下端にある小さな穴状の隙間から花粉をつけた昆虫は脱出できる。
 次に花粉を付けた小昆虫が雌花に入り込むと、雌花にはこの穴がないから、昆虫は外に出られずいずれ死ぬ。このもがく間に、雌花はたっぷりと花粉を受粉するのだ。
 小昆虫を閉じ込めるのは、確実に受粉するためなのだろう。
 まさに小昆虫にとって死へ誘うトラップである。

◎生薬にもなる球茎
 ちなみに花の成熟度には時間差があるので、雄花と雌花は同時同所的に共存する。テンナンショウがその上で性転換するのは、最終的に雌花になった方が結実してたくさんの子孫を残せるからだ。雄花の花粉の生産より、雌花が結実していく方がはるかに投資資源が大きいから、この仕組みは合理的である。
 さて実にも地下の球茎にもシュウ酸カルシウムの毒が含まれるが、実は球茎は生薬にもなる。煎じて飲むと、去痰鎮徑効果があり、すりおろして塗ると、腫れ物、肩こり、胸痛に効果があるという。
 僕が見たテンナンショウの根を掘ると、球茎が採取できたわけだ。
 
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202004060000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「ネパール紀行(6):添乗員氏の不手際でカトマンズ空港を出たのは大遅れ、サンライズ鑑賞に間に合わず」
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