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2020年01月18日05:21

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樺太紀行(番外):ユジノサハリンスクでウクライナ料理店の謎と昭和の大横綱大鵬

 大相撲初場所で、またも白鵬が途中休場となり、峠を越えた落日の残影を思わせる。
 優勝回数は43回を数え、2番目の大鵬の32回を上回る。その第2位優勝回数を誇る大鵬は、昭和を代表する大横綱であった(写真=2013年1月に死去後に発行された大鵬追悼ポスター)。

◎南樺太北部の敷香(しすか)生まれの大鵬
 強すぎるほど強く、また人気も高く、「巨人、大鵬、卵焼き」と子どもの好きなものベストスリーの2番目に挙げられたほどだ。全盛期の大鵬は、おそらく全盛期の白鵬と対戦しても、互角の勝負となっただろう。
 その昭和の大横綱と、縁が薄いが思わぬ接点が2年前の南樺太旅行であった。その後の「樺太紀行」で書き漏らしたので、補遺として本日の日記とする。
 実はその大鵬は、生まれは南樺太であった。出身は北海道東部弟子屈町だが、生まれは日本統治時代の南樺太北部の敷香町(写真=日本統治時代の敷香の町並み;現ポロナイスク)である。幕末、間宮林蔵の第1回の樺太探検では、ここまで到達している。

◎ウクライナからの移民の子が大鵬の実父
 満5歳の夏、日ソ中立条約を一方的に破棄し、ソ連赤軍が南樺太侵攻・占領すると、彼は母親と故郷の南樺太を去り、北海道に逃れた。
 その時に、実の父親と生き別れとなった。実は父親は、ウクライナ系ロシア人のマルキャン・ボリシコと言った。ボリシコは、赤軍に捕らえられ、強制収容所に送られた。
 では故郷がヨーロッパのウクライナであるボリシコが、なぜ極東の果ての樺太にいたのか。
 実は、帝政期のロシアは、開発の労働力として極東・サハリン島にウクライナ人を移住させた。ボリシコも、幼い時に両親に連れられて実に7500キロも離れたサハリン島に渡った。
 その後、成長して敷香で牧場経営に成功し、北海道から移住してきていた納谷キヨと結婚した。そして生まれたのが、後の大鵬こと、納谷幸喜(ロシア名はイヴァン)である。

◎ソ連潜水艦に撃沈された船に乗船していた!
 ただ実は、幸喜少年は、九死に一生を得ている。戦後直後、樺太からの避難民が裸一貫で逃れた引き揚げ船「小笠原丸」に母親と共に乗っていた。その船は、留萌沖でソ連赤軍の潜水艦の魚雷攻撃を受け、乗員乗客638名が死亡した。生存者はわずか61名だった。
 ところが何が幸いするか分からないものだ。実は母親のキヨは、ひどい船酔いで寄港した稚内で途中下船していたのだ。幼い幸喜は、溺死を免れた(16年8月23日付日記:「ささやかに行われた最後の北千島慰霊祭の教える日本人軍民に行われた大きなスターリンの戦争犯罪」、15年8月19日付日記:「これだけは知って欲しい! 70年前の終戦後のソ連赤軍に対する最北の自衛戦闘が日本分断を救った;現代史」、及び06年9月7日付日記「錯綜するロシア観:資源外交、占守島、樺太引き揚げ船、真岡」を参照)。
 その後の納谷幸喜少年と大鵬については省略する。

◎現在もウクライナ系は1.2万人
 彼の運命から明らかなように、当時の南樺太にはウクライナ人が多数、暮らしていたのだ。その子孫が、今もユジノサハリンスクなどのサハリンに残り、サハリン州内では民族別でウクライナ系は3位の1万2000人前後が暮らしている。
 サハリン州全体の人口は約48.7万人で、州都ユジノサハリンスクには半分近くの約20万人が住む。おそらくウクライナ系の大部分は、ユジノサハリンスクに暮らしているだろう。
 そのわずかなコンタクトが、僕の樺太旅行の2日目の晩にあった。ユジノサハリンスク市内にけっこうあるらしいウクライナ・レストランに案内されたのである(写真)。

◎ガイドも教えてくれなかったウクライナ料理店の謎
 レストラン正面の看板のキリル文字「Хуторок」は、フタロークと読む。料理は必ずしも美味いとは思わなかったが、最初、その店に案内された時、なぜ南樺太でウクライナ料理店か、と怪訝に思ったものだ。
 遺憾ながら、その時、ロシア人の現地ガイド氏も日本から一緒に来たツアコンも、サハリンとウクライナの関係について何も教えてくれなかった。
 上記の歴史を知っていれば、もっと楽しめたであろうのに、残念だった。

注 GREEによる容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202001180000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:休載

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