イランの革命防衛隊の大ちょんぼ、である。その事後処置も含めて。
去る8日午前6時頃、イランの首都テヘラン近郊の国際空港から離陸したウクライナ国際航空機(乗員・乗客計176人)が離陸直後に墜落、乗客・乗員は全員死亡した(写真)。
◎パニックの革命防衛隊兵士がミサイル誤射
直後に、イラン当局は墜落は同機の技術的トラブルによる、と発表した。
しかし国際社会、特にアメリカは、イラン上空を監視していた。
ほどなくアメリカのメディアがイラン上空を監視していたアメリカの当局者の話として、イランが防空システムを稼働させているロシア製のSAM(短距離ミサイル)を2発発射し、ウクライナ機を誤って撃墜した模様と報道を始めた。
事件のあった8日朝は、イランは極度の緊迫下にあった。この4時間前、イラクにある2つのアメリカ軍の駐留2カ所を短距離ミサイルで空爆していた。理由は、革命防衛隊コッズ部隊司令官のソレイマニ爆殺の報復だったが、アメリカからの大量報復空爆が予想されていた。
したがって11日になってイラン革命防衛隊幹部が、アメリカ軍の巡航ミサイルと誤認してミサイルを発射したと認めたように、当時のイラン革命防衛隊はパニックに近い状況にあったことが分かる。
それが、第1のヘマだ。革命防衛隊幹部の弁明によると、発射した兵士は上官の許可を得ておらずに撃っている。
◎ペテンつくも隠しようもなくなる
しかしもっと致命的なヘマ、大ちょんぼは、自らの誤射を認めようとしなかったことだ。国営テレビは政府報道官の「(ミサイルによる撃墜というのは)真っ赤な嘘だ」と反撃し、航空当局トップも「現時点で言えるのは、ウクライナ機はミサイルによる攻撃を受けていないということだ」と会見で否定した。
しかしウクライナ機らしい飛行物体がミサイルで撃墜されたように見える映像がネットで出回り(写真)、さらにフライトレコーダーも回収され、さらにミサイルの残骸らしいものも発見され、イラン当局のペテンは隠しようもなくなった。
◎イラン人とイラン系が犠牲者最多
対イランの最強硬派であるアメリカのポンペイオ国務長官は9日、「イランがイラン国内でイラン人を殺した」と、皮肉たっぷりに論評した。ウクライナ国際航空機に乗っていた乗客の約半数の82人はイラン国籍だったからだ。
さらにカナダのトルドー首相は同日、オタワでの記者会見で(ウクライナ機墜落は)イランが発射した地対空ミサイルが原因との見解を示し(写真)、さらにイラン当局に事故調査への全面協力を求めた。同機にはイラン人に次いで2番目のカナダ国籍の63人の乗客が乗っていたからだ。ちなみにこのカナダ国籍の63人のほとんどは、カナダに移住した元イラン人と見られる。カナダ東部には、元イラン人の多くのコミュニティーがある。
つまりポンペイオ国務長官の言うように、まさに「イランがイラン人を殺した」のだ。
◎スターリニスト中国と同じテロ国家の体質
さらに機体を撃墜されて上、ほとんどが乗員と見られる犠牲者11人のウクライナ人の乗っていたウクライナのゼレンスキー大統領も11日、「イランに完全に罪を認めることを求める」と公式の謝罪や補償を要求した。
自国民の乗客3人が死亡したイギリスのジョンソン首相も、イランの対応を批判した。まさに国際社会から、イラン批判の大合唱が起こったのだ。これ以上、白を切り通せないことは誰の目にも明らかとなった。
ここに至って、イラン当局は、やっと真相を明かしたわけだ。
前述の革命防衛隊の幹部の弁明、そしてそれとほぼ同時に大統領のロウハニが、ツイッターで「イランは悲惨な過ちを深く悔やんでいる」と遺憾の意を表明した。
しかしこれだけ証拠が出され、国際社会から批判を浴びるまで、彼らが「知らぬ、存ぜず」と頬被りし、あげくに撃墜の報道を「真っ赤な嘘」と、真相を覆い隠そうとした事実は重い。
どのような場合も真相を認めず、あくまでもペテンを突き通すのはスターリニスト中国の常套手段だが、イスラム専制支配のテロ国家=イランもまた同じなのだ。
◎幸か不幸か、ウクライナ機にアメリカ人乗客はゼロ
今回の事件で象徴的なのは、アメリカの抑制的対応である。ポンペイオ国務長官のような皮肉を言うくらいで、トランプ大統領も正面切った批判はしていない。
それは幸か不幸か、準戦争状態とも言える緊張関係にあるイランにアメリカ人はおらず(外交関係の断絶しているから外交官すら駐在していない)、したがってウクライナ機にアメリカ人登場者はゼロだったからだ。アメリカにとって高みの見物をきめこみ、国際社会でイランの信用が失墜するのを眺めていればよい、という立場だ。
仮にウクライナ機にアメリカ人乗客が乗っていれば、アメリカとイランの関係はさらに緊張し、場合によってはイラン国内に報復の巡航ミサイル攻撃が行われていただろう。
◎デモで叫ばれるハメネイ非難の声
この国際的ペテンは、イラン国内にも跳ね返っている。
11日と翌12日にはテヘランで大規模な抗議集会・デモが行われ、「独裁者に死を!」、「最高指導者に死を!」というシュプレヒコールが叫ばれた(写真)。最高指導者ハメネイ非難である。
トランプ大統領も、このデモを激励するツイッターを流した。
イスラム専制国家の思わぬ失態は、アメリカにとって大きな追い風になっている。
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、
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昨年の今日の日記:「ポーランドでもファーウェイ現地法人幹部逮捕は国家情報法のもと世界中でファーウェイと従業員がスパイ行為展開の証左」
追記 イランの女性初の五輪メダリストが亡命へ
イランの女子選手として初めてオリンピックのメダリストとなったテコンドーのキミア・アリザデ選手(写真)が9日、イランからオランダに出国、11日に亡命の意思を表明した。
厳格なイスラム原理主義国家のイランでは、女性は抑圧され、女性はスポーツすら満足にできない。最近になってサッカー観戦が、やっと一部で認められたほどだ。
アリザデ選手も、2016年のリオデジャネイロ五輪では、厳しい戒律のためにスカーフをかぶってテコンドーに出場、イラン女子としては初めて銅メダルを得た(写真)。
しかし、その影には栄光どころか抑圧があったことが、今回、アリザデ選手が11日に発表したインターネット記事で明らかになった。
アリザデ選手はその中で、「私は歴史を作った人でも、英雄でもありません。イランで抑圧されている何百万人という女性選手の1人にすぎません。彼らにとっては私たちは道具にすぎず、メダルだけが大事だったのです」と述べるとともに、競技を続けることを当局者に批判されたと明らかにし、自らを政治利用だと訴えている。
イランの女性に対する戒律は厳しく、外国人旅行者でも女性は同国内に滞在中は外出時にスカーフの着用を求められる。
人権という普遍的基準から大きく逸脱するイランのイスラム原理主義体制に死を!
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