台湾総統選で蔡英文・現総統の圧勝の最大の支援者は、皮肉にもスターリニスト中国の習近平だった。
◎１年前から大逆転の勝利、その最大の功績は習近平
１１日、投開票された同総統選・立法院選の同日選は予測どおり、総統選では民進党の蔡英文・現総統、立法院選では与党・民進党の圧勝だった。しかし１年前には、そうではなかった（写真＝勝利を喜ぶ蔡英文氏、左は副総統に就く頼清徳氏。なお�鮖瓩�蔡氏よりも強硬な台湾独立派で、同時に台湾政界でも一の親日家である）。
中台関係の悪化と、それに伴う経済低迷で、蔡英文総統の人気は低迷し、一時は国民党の候補の韓国瑜に２０ポイント近くも引き離され、落選必至、それに伴う民進党から国民党への政権交代確実、とされていた。
その風向きが一気に変わったのは、昨年６月からの香港の抵抗運動だ。スターリニストと林鄭月娥・香港警察に抗議する若者たちに催涙弾を打ちかけ、さらには拳銃まで向け、実際に発砲し、あるいは虐殺するという蛮行を、テレビやネットで、台湾国民が目に見て、台湾・スターリニスト中国の統一を志向する国民党の韓への不安感が強まった。「明日はわが身」と、台湾国民は誰もが考えたのだ。
◎「一国二制度」のペテン、露わに
なお僕は台湾は国として認めたいので、島民を多くのメディアのような中国の中の１地域の「住民」と考えず、独立・民主主義国家の台湾の国民とみなしている。したがって本文では、台湾国民と表記する。
蔡英文氏が韓国瑜に付けられた大差と並び、ついには逆転し、総統選での圧勝の布石は、これもまた習近平だった。何を焦ったか、昨年１月、「一国二制度」のもとでの統一を明言したのだ。その「一国二制度」のペテンが６月以降に露わになったのは前記のとおり（写真＝下僕の如く香港行政長官の林鄭月娥を従える習近平）。
習近平は、香港の対応とも合わせ、３度もヘマをやったわけだ。
◎高得票率が蔡氏を押し上げる
蔡英文氏の圧勝は、ドラスティックであった。民主的な総統選が実施されるようになってから過去最高の得票数である８１７万０２３１票、得票率５７．１％の完勝である。
事前に蔡氏のかなり優位な予想がなされたが、同陣営も、また対立候補の韓陣営でも（さらにスターリニスト中国も）予想しなかったであろう圧勝である。
この得票を押し上げたのは、前回選挙を９ポイントも上回る７４．９％の高投票率である。これもまた香港区議選と同じ効果、スターリニスト中国へのNoを突きつけるために国民は投票所に足を運んで意思表示した（写真）。
まさに蔡氏の勝利の声のように、「民主的に選ばれた政府は、脅威や恫喝に決して屈しないと、中国当局も理解できるだろう」。
この勝利の集会には、香港からの若者も出席していたし、同日、香港で行われた「５大訴求」を求めるデモでも、台湾の蔡氏の勝利が祝われた。まさに香港と台湾の連帯である。
◎立法院選でも与党の民進党が単独・安定過半数
台湾国民の民意は、同時に行われた立法院（議会）選でも示された。地方の保守層に根強い地盤を持つ国民党が、前回の大敗から勢いを盛り返し、接戦、場合によっては総統選とはねじれとなる国民党過半数、という予想もあったが、こちらも民進党が善戦した。
単独・安定過半数の６１議席（定数１１３）を獲得し、大幅議席減を免れ、こちらも圧勝だった。台湾独立を訴える若者主体の「時代力量」も３議席を維持し、立法院の選挙結果も「一国二制度」Noを突きつけたのだ。
このように成熟した民主主義体制のもとで自由で民主的な選挙さえ行われれば、共産党の支配もないことは、香港区議選に続いて台湾総統選・立法院選でも白日の下に示された。逆に選挙で選ばれたわけでもなく、鉄砲で政権を奪った（毛沢東）中国本土の監視カメラと顔認証、武装警察・人民「抑圧」軍で護衛された共産党支配こそ、不法・不当である。
◎習近平、ヘマの３連発で権威が大きく傷つく
そしてこの結果で示されたように台湾では、展望できる将来にわたって、共産党のもとの大陸との統一は、ない。すると習近平にとって、台湾統一の手段は武力侵攻で暴力による強制併合しかない。
だがそれは、可能でないのは自明のことだ。今の世の中、あからさまな侵略が許されるわけはないし、第一、アメリカが黙っていない。つまり香港区議選に続く台湾総統選・立法院選で示された民意で、習近平の権威は大きく傷ついたということだ。
習の地位も、安泰ではないのではないか。
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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