いよいよ1年を切ったアメリカの大統領選挙で、野党の民主党の中道派にして「古靴」のバイデン前副大統領が相変わらず伸びきれない。
◎依然、バイデン氏の後の2位に付けるウォーレン上院議員
去る20日、5回目のテレビ討論会でも精彩を欠き、いちおう支持率トップを続けているもののその支持率は26.0%で2位以下を引き離せない。
2位は、依然として急進左派の元大学教授のエリザベス・ウォーレン上院議員(写真)である。
しかしウォーレン上院議員は、本当はバカではないのか、と民主党大統領候補争いの選挙戦での主張を見ると、思ってしまう。彼女が民主党の大統領候補に選ばれることを、共和党・トランプ陣営が願っているのは明白で、確かにその主張を見ると、もし本選になったらトランプ陣営の攻撃でボロボロになるのは目に見える。
以下に見るように、時流は左派ポピュリズムの退潮は明らかだからだ。
◎南米の左派社会主義政策の失敗に学ばない愚かさ
例えばアメリカのすぐ裏庭の南米の破綻国家ベネズエラは、社会主義者で左派ポピュリスト大統領のウゴ・チャベスとその後継者ニコラス・マドゥロの貧困層のバラマキのもとに財政破綻とウルトラスーパーインフレが進み、国家破綻した。
10月のアルゼンチン大統領選で当選した元首相で左派ポピュリストのアルベルト・フェルナンデスは、市場重視型の政策を進めていた現職のマウリシオ・マクリ氏は破って当選したが、その前の前の大統領で、アルベルトが仕えたクリスティーナ・フェルナンデスもバラマキ政策で何度も国債の債務不履行を起こすほどだった。今もアルゼンチンは、高いインフレ率に苦しむ。
つい先日も、左派ポピュリストのボリビア、モラレスが大統領の地位から追放されたが、国内のバラマキで主にスターリニスト中国からの累積債務が積み上がって、経済不振に陥ったことが大きい。
◎アマゾンのジェフ・ペゾス氏も富裕税で身ぐるみ剥がれる
そんな反面教師に事欠かないのに、民主党大統領候補争いで掲げるのは、マドゥロやフェルナンデスと見紛うばかりの左派ポピュリスト的公約だ。
前にも述べたが主要政策と掲げる国民皆保険には、ウォーレンは10年で20兆5000億ドルもの巨額財源が必要になると試算している。その財源は富裕層と大企業への大増税だ。
富裕層に対しては、所得税増税の他に、資産課税である富裕税の創設を打ち出している。例えば最新の提案では、資産5000万ドル以上の富裕層に年に6%の税金を課す。例えば全米一の超富裕者であるアマゾンの創業者ジェフ・ペゾス氏でも、半分の3%の課税で資産は35年で半減すると試算されている。6%課税なら、0になる。
ペゾス氏でさえこうなら、アメリカから富裕層はいなくなる。まさに旧ソ連のような党特権層以外はみんな貧しい社会の到来だ。
◎富裕層・大企業はアメリカから逃げ出す
なぜなら富裕層が黙って課税されているはずはないからで、彼らはこぞってアメリカを逃げ出すからだ。つまり実際に税金は取れず、社会保障の支出だけが膨らみ、すなわちハイパーインフレの到来である。
大企業にも大増税だ。トランプ大統領が法人税を35%から21%に減税したが、これを元に戻すだけでなく、巨大企業にはさらに7%を上乗せし、法人税率を42%にする。
これも大企業が黙って課税を甘受するわけはなく、大企業もアメリカから逃げ出す。アメリカに大量の失業者が生まれるだろう。
金融機関には、株と債券の取引ごとに取引額の0.1%を課税する。投資家はこの金融新税を嫌い、アメリカから逃げ、ウォール街にぺんぺん草が生えるに違いない。
◎ウォーレン「大統領候補」なら民主党勝利はなし
こう見ると、ウォーレン大統領となれば、アメリカの繁栄は終わり、したがって世界中に大恐慌が起こる。
危険きわまりない極左、と言える。
トランプ大統領は、今のところ主敵はバイデン前副大統領と見なしていて、バイデン氏に批判の集中砲火を浴びせているが、ウォーレンに対しては「アメリカを社会主義にするな」と攻撃するに留めている。
それは、ウォーレンの主張が民主党の政策になった場合、彼女が当選することはありえない、と思っているからだ。トランプ大統領に限らず、これは共和党のほぼ全員が信じている。いや、民主党の中道派も、同じだ。だからこそ後述の「ヒラリー待望論」が起こるのだ。
◎平均3万ドルもの学生ローンを抱える大学卒
しかしウォーレンの左翼的主張は、若者層に受けている。彼らは、アメリカ史上初めて「親の世代より豊かになれない」層だからだ。大学卒でも、1人当たり平均で約3万ドル(320万円)もの学生ローン債務を抱えている(写真)。彼らは、ウォーレンの「公約」する学生ローン債務の全額チャラに強く引き寄せられるだろう。その財源が、富裕層や大企業の課税で、アメリカ経済が大打撃を受けると分かっていても。いや、分からないのかもしれない。
若者ばかりでなく、黒人やヒスパニックなどマイノリティーも、ウォーレンに引き寄せられるだろう。
◎カムバックあるかヒラリー・クリントン
旭日の勢いのウォーレンに対し、左派社会主義者のバーニー・サンダースの旗色は今ひとつ冴えない。一時期、病気で選挙戦を休止したことが響いている上、その主張をほぼすべてウォーレンにパクられたことが大きい。
だから民主党大統領候補争いの予備選に入ると、サンダースは降りて、ウォーレン支持に回る可能性が大きい。
となると、民主党は大統領選で大敗を免れない。同時に実施される下院選挙と3分の1が改選される上院選挙でも、後退するだろう。
もしバイデン前副大統領が「利あらず」として予備選途中で撤退した場合、民主党中道派はヒラリー・クリントンの復帰に動くだろう。民主党の一部には、真剣にヒラリー担ぎ出しに動くむきもある。
ヒラリー・クリントン候補なら、前回の同情票も加わってトランプ大統領を打ち負かすだろう。
共和党支持だが、トランプ大統領の再選は見たくないので、僕もまたあらためてヒラリー・カムバック、と叫びたい。
追記 民主党大統領候補レースにブルームバーグ氏参戦
前ニューヨーク市長で富豪でもあるマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長(写真)が11月24日、大統領選挙の民主党候補者指名争いに出馬すると正式に表明した。これまで自身も出馬の意思を表明し、また準備もしてきた。ニューヨーク市長としての経歴の他、ビジネスや慈善活動での実績に基づいた独自の中道派の政策スタンスで、民主党中道派の受け皿としての指名獲得を目指す。
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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昨年の今日の日記:「樺太紀行(24);ハマナスの大群落に迎えられ、オホーツコエ(旧・富内)に」
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