ひょっとすると３桁の数の「月」か、太陽系外惑星の木星と土星の衛星の個数レースで土星が逆転

　太陽系最大の惑星の木星と第２位の土星（写真）は、また多数の衛星を従えているが、この衛星の数の多さレースが過熱している。

◎土星で新たに２０個の衛星を発見
　このほどアメリカのカーネギー研究所を中心とする天文学者たちが、日本のすばる望遠鏡を使って土星の新衛星２０個を新たに発見したと発表した。
　これで土星の衛星は全部で８２個となり、太陽系で最も多く衛星を持つ惑星となった。これまで最多の衛星を従えていたのは木星で、２０１８年に新たに１２個を発見し、合計７９個となっていた（１８年８月３１日付日記：「木星でさらに超ミニ新衛星１２個発見、合計７９個に、木星形成時に捕らえられた『デブリ』か」を参照）。それを２０個の新発見で一気に抜き返した。

◎２０個の新衛星は検出限界ぎりぎりの直径５キロ
　観測にはハワイにあるすばる望遠鏡が使われたが、新発見の衛星は、いずれも直径５キロほどの天体で、検出限界ぎりぎりの大きさだという。
　発見には１０年以上を要した。天文学者たちはは未発見の衛星を探すため、２００４年〜２００７年にかけて、すばる望遠鏡を使って土星の周辺を綿密に観測した。衛星らしきいくつかの光の点は見つかったものの、それらが実際に土星を周回していることを証明するのは困難だった。
　その後の新たな技術によって、複数年にわたる望遠鏡画像の関連性をはるかに簡単に分析できるようになった。研究者がデータを分析し直したところ、土星を周回する２０個の光の点が浮かび上がったという（写真＝小さな光の点が動いているのが分かる）。

◎逆行衛星が多い
　木星の新衛星もそうだったが、新たな衛星のうち１７個は土星の自転方向とは逆向きに周回する「逆行衛星」で、３年以上をかけて土星の周りを一周する。残る３個の衛星は、土星の自転方向と同じ向きに周回する「順行衛星」だ。そのうち２個は約２年で、最後の１個は３年以上もかけて土星を一周する。
　土星の衛星は、軌道の向き、土星からの距離、土星に対する軌道の傾きなどから、いくつかの「群」に分類されているが、今回発見された衛星もその中に分類されることになる。それらの「群」から成る衛星は、太陽系が形成されたばかりの頃に土星の引力にとらえられた別々の天体だったのではないかと考えられている。その後、衝突が繰り返される中でバラバラになり、現在のような姿になったという説がある。
　２０個の新衛星には、まだ正式な名称は与えられていない。名称は現在公募中だ。

◎いずれは１００個以上の衛星を従えるか
　さて木星と土星の目覚ましい衛星個数「競争」は、これからも続くのか。
　研究者たちによると、チリで建設が進む「巨大マゼラン望遠鏡」のような次世代望遠鏡を使えば、太陽系のガス惑星を周回する衛星がさらに見つかるはずという。
　今回２０個の衛星を発見した研究者によると、現在の望遠鏡では、木星では直径約１．５キロ、土星では直径約５キロより小さい衛星を見つけることはできないという。新発見の２０個はギリギリだったわけだ。
　いずれ木星も土星も、衛星１００個時代を迎えるに違いない。

◎外惑星と内惑星の衛星の数の差が語るヒントは
　土星よりさらに遠い天王星や海王星では、さらに大きな天体さえ見つけられていない可能性もある。例えば検出限界は、天王星では直径約３０キロ、海王星では約５０キロだという。だとすれば、いまだ発見されていない直径数キロのミニ衛星を、天王星と海王星もたくさん従えている可能性は大きい。
　それらは、現在計画されている新探査器によって成し遂げられるだろう。
　ちなみに内惑星は、火星がミニ衛星２個、地球は月だけ、金星と水星は衛星を従えていない。衛星の数も、外惑星と大きな差である。
　このこともまた、太陽系生成の謎に何かのヒントを語りかけているのだろう。だから天文学者は衛星探索を続けるのだ。

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