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2019年11月16日05:56

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国土は占領されてもデジタル国家は残る、ヨーロッパ小国のエストニアの電子立国の知恵

 エストニアに行ったのは、2014年7月、わずか1泊2日のことだった。ポーランドとバルト3国巡りの最終国での訪問である。

◎「歌う革命」の国、エストニアは
 エストニアは美しい国だった。特に首都タリンの市街地は、高台から見下ろすと、おとぎの国のように美しかった(写真)。
 エストニアというと、旧ソ連末期、ソ連支配に抵抗の意思表示として、さらに独立を求めて「歌う革命」を行った国だ。その現場の「歌の広場」(写真)を訪れ、往事の歌による抵抗運動に思いをはせた(15年9月18日付日記:「バルト3国紀行45:1988年『歌う革命』の場となった『歌の広場』;現代史、紀行」を参照)。

◎世界1の電子国家
 僕はその時は知らなかったのだが、エストニアは世界1の電子国家なのだそうだ。
 今をときめくブロックチェーン技術に基づいたデジタル空間で、国民のあらゆるアクセスが可能となっている。ブロックチェーン技術は分散型だから、中央のコンピューターに侵入して外からデータの改ざんするということができない。その意味で、世界一安全なデジタル空間を同国は築き上げた。
 ここでは、約130万人の国民は誰でも誕生時に付与されるIDを持つ。このIDで、24時間、銀行の口座開設や預金・出金・送金はもちろん、納税・福祉給付も可能だ。顔写真付きのIDカードは、医療保険や運転免許証も兼ね、EU国内ではパスポートとしても通用する。
 驚くべきは、選挙の投票もパソコンにIDナンバーを打ち込んで1票を投じられる。
 不可能なのは、結婚と離婚、不動産売買だけだという。

◎外国人も電子国民になれる
 もっと画期的なのは、世界中の誰でも、つまりエストニア国民でなくとも、「e−レジデンシー(電子居住)」制度による電子国民になれるのだ。登録すると、エストニアで起業もできるし、銀行口座も開ける(写真=e−レジデンシーのカード)。
 電子居住の登録者、すなわち電子エストニア国民は、165カ国・5万人にもなる。
 エストニアがほぼ完全なデジタル国家を築き上げ、さらに他国からのe−レジデンシーを認めているのは、この国の長い悲劇の歴史がある。

◎帝政ロシア、スターリン・ソ連などの侵略を受けた過去
 冒頭にも述べたように、エストニアを含むバルト3国は、かつてソ連に併合され、ソ連の服属1共和国にされた。それ以前にも、13世紀のデンマークの侵攻に始まり、スウェーデン、さらには帝政ロシアに飲み込まれた。
 ロシア十月革命を受け、翌年の1918年にいったんは独立するが、1940年にスターリンのソ連に編入されてしまう。その後、41年〜44年まではナチ・ドイツに侵略されて占領、やっとのことでナチ・ドイツ支配から逃れたが、それはソ連赤軍の進駐による「再侵略」に過ぎなかった。支配者が変わるたびに、膨大な政治犯が逮捕され、ソ連時代にはシベリア送りに遭った。
 1991年の完全独立後の今も、ジョージア北部やクリミア、さらにはウクライナ東部を侵略したロシアの脅威を日常的に受けている。

◎最も安価な安全保障策
 だからたとえロシアに侵略され、国土は占領されても、デジタル上ではエストニアは生き残れるというわけだ。他国民もe−レジデンシーに巻き込んでいるので、ロシアは他国の反発を恐れ、うかつには手出しをできない。最も安価な安全保障策である。
 人口が日本の1%強しかない小国だから可能なのだろうけれど、デジタル国家はあらゆることに煩雑な手続きが必要な日本も目標にしたい。
 ただ、基礎となるマイナンバーカードの取得者はまだ12.8%しかない。マイナンバーカードがなければ、その人は自分がどんなマイナンバーを持っているか分からない。だから運転免許の取得・更新にも健康保険証にも使えないのである。
 道遠し――。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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