これまで述べてきたのはすべて哺乳類だったが、「マンモス展」には風変わりな鳥類も出展されていた。
◎羽を折りたたむようにして凍結保存されたライチョウ
ちょっと興味深いは、カラフトライチョウの凍結遺体だ。羽を折りたたむようにして凍結されている(写真)。
こちらは、これまでの哺乳類と違ってずっと新しく、1600年前のものだ。サハ共和国ユニュゲンで発見された。
日本の北アルプスに分布するライチョウは、氷河時代に大陸から渡ってきて、温暖になった後氷期になると、冷涼な高山帯だけに残された。ライチョウは飛ぶのが不得意だが、氷河時代ならシベリアから樺太、そして北海道と伝ってやって来られた。ここまでは陸続きだった。
◎氷河期にシベリアから来たニホンライチョウ
北海道と本州を隔てる津軽海峡は、氷河期も海のままだったが、今よりずっと細く、大きな川程度の水路だっただろう。
それなら飛ぶのが不得意なライチョウも、簡単に渡れただろう。
おそらくニホンライチョウと出展されているカラフトライチョウとは遺伝的に近縁なはずだ。同一種に属するのではないだろうか。
この個体、疲れて飛べなくなり、氷上に墜落してそのまま凍結されたのか。
◎拡大する永久凍土帯の「穴」
前述の仔ウマの発掘地は、昨年発掘調査されたバタガイカ・クレーターである(写真)。バタガイカ・クレーターが典型例なのだが、近年の地球温暖化で永久凍土帯が次々と溶け、氷河期に埋もれた極北の動物遺体が軟部組織付きで見つかる。古生物学者には宝物だが、そうした動物遺体が頻繁に見つかるほど、地球温暖化が深刻になっている証しでもある。
例えばバタガイカ・クレーターは、最初に永久凍土に入った小さな亀裂(クラック)から水が流れ込み、温暖化で亀裂が拡大し、ついに陥没して永久凍土帯に大きな穴が出来たものだ。だから「クレーター」と呼ばれるのだ。
そして露出したクレーターは、強い夏の日光に当たるとさらに壁の永久凍土が溶けていき、拡大していく。
◎地球温暖化で凍結遺体の発見・発掘相次ぐ現状
こうしたクラックから発達したクレーターは、今、シベリア各地でたくさん出現している。
それだけ古生物学者の調査機会は広がるわけだが、放っておくと腐敗が進むので、見つかり次第、発掘・回収しなければならない。研究者にとって、大忙しの時代に入ったということだ。
実に興味深い軟部組織付きの動物標本ばかりだったが、地球温暖化についても考えさせられる展覧会だった。
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昨年の今日の日記:「樺太紀行(1);戦前40年間の日本統治時代の遺産を探して」
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