3月末に迫るイギリスのEU離脱(ブレグジット)の先行きが全く見えない。メイ首相の指導力は失墜し、糸の切れた凧のようにイギリスは漂流する。
◎予想外の大差で否決もマーケットは平静
15日のイギリス議会で、メイ首相がEUとまとめた円満離脱案は、与党保守党内の予想外の大量造反で、202対432の大差で否決された(写真)。
ところがこの大差での否決は、逆にマーケットで歓迎された。小手先の手直しではなく、メイ首相は今度こそ本腰を入れたブレグジット政策を打ち出す、と解釈されたのだ。
今のところ、メイ首相はEUとかけあって、3月29日の離脱期限を延期してもらう案が有力で、そして稼いだ時間を利用して、ブレグジットの是非を国民再投票にかけるのでは、とマーケットは楽観しているようだ。
◎国民投票再投票しかないが、さて
離脱期限の延期は、可能性がかなり高い。EUは全加盟国の承認をとる必要があるが、反対を明確にしている加盟国はないので、これもクリアできる。国民再投票は、実施すれば、ブレグジット反対=EU残留が多数を占めると見られているから、イギリスや世界のマーケットにとって最も望ましい。
メイ首相も、ジョンソン元外相らの強行離脱策はとらないと見られるので、いずれその方向になるだろう。しかし国民再投票まで時間があるかどうかが、問題だ。
◎EUとの貿易に大きなバリア
もし議会が迷走し、メイ首相が何も決められず、離脱期限を迎えれば、EUと何も取り決めのないままイギリスは世界市場の中に放り投げられる。
その場合、イギリス経済に深刻な打撃となる。貿易の半分近くを対EUに依存しているイギリスは、いきなりEUから関税をかけられる。イギリスのEUからの輸入は3410億ポンド、全輸入額の53%を占める。またEUへの輸出は2740億ポンドで、全輸出額の44%だ。輸入物価が上がり、輸出に急ブレーキがかかる。
それ以上に、それまでなかった煩雑に通関手続きが発生する。すでにイギリス国内の自動車メーカーなど製造業は、EUからの部品輸入の手続き遅れを見込み、通常以上の在庫を積み上げている。これは、製造業にとって余分なコストだ。
◎金融立国が衰退の危機
もっと深刻なのは、シティーという金融街を抱える金融への打撃だ。世界のユーロ建て金利デリバティブの75%はシティーで取引されている。さらにイギリスの外国為替取引額は1日当たり約2.4兆ドルと世界首位でアメリカの2倍もある。
すべて伝統あるイギリスのシティー(写真)の遺産である。EU域内なら1つの免許でどこの国でも自由に金融事業を営める単一パスポートが無効になり、金融機関はEU域内にもう1つの金融拠点を設ける必要がある。この機会に、金融全事業をEU域内に移す動きも顕著になっている。
すべてブレグジットが決まった時から予想されたことだった。
3年前の6月に国民投票でブレグジットを決めた後、今まで続く混乱を見ると、イギリス人とは何と愚かかと思えてしまう。
これが、本当にかつて世界に覇権を振るった国なのだろうか?
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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