一昨日の晩、夜の7時半頃だったか、かすれた声の電話があった。前にソフトバンク新規上場(IPO)の株購入申し込みをした証券会社の営業マンからだった。最近、こんな遅くに証券マンから電話がかかってくることはないし、声もすっかりかすれている。夕方からあちこちに電話をかけまくっていたに違いない。
◎人気薄は日本郵政2次売却時をも上回る
予想どおり、ソフトバンク株の購入撤回をやめて、あらためて申し込んではどうか、という内容だった。僕は、先週、この証券会社にソフトバンク株購入申し込みを取り止めることを連絡している(12月9日付日記:「新規上場のソフトバンク株の購入をやめる、その理由は」を参照)。
どうも大量の売出し株数の割に、購入申し込み株数が少ないようだ。報道によると、倍率は1倍半にも達していないようだ。今年、最大の人気株だったメルカリは46倍だった(ただし、今では公募価格割れを起こしている)。
さらにIPOでは、大量の売出し株数と成長期待の薄さから異例の人気薄となった日本郵政第2次の売却の1.6倍よりも低い。いかに人気薄か、分かる。
◎在庫を持たない証券会社は、売れ残りは上場初日に売りを出す
このまま行くと、おそらく上場初日に大量の売りが殺到し、公募価格割れになる。そうなると大量に引き受けた幹事証券は、大変な損失を被る。
株式の新規公開では、証券会社は公募・売出しする会社の株を当該の会社・経営者・政府から、いったん大量に購入する。それを、一般投資家に分売する。人気が高ければ、抽選やお得意様に優先的に配分し、営業につなげるが、人気薄だと不良在庫を抱えてしまって困った事態になる。
証券会社は基本的に価格変動リスの高い在庫は持たないので、投資家に販売しきれなかった売れ残りは、上場初日の寄りつきに売りを出す。公募価格割れは、こうした場合に起こる。
で、冒頭の電話から、僕はある程度の売れ残りを抱えているのだと推察した。気の毒だったが、こちらも損失を抱えるわけにもいかないので、あらためて断った。営業マンは、半ば諦めていたらしく、それで簡単に引き下がった。甘言を弄して無理に売り込めば、後で大変な問題になるからだろう。
◎ソフトバンク、5Gに加え、4GからもファーウェイとZTEを排除
大規模なシステム障害と、アメリカ政府のファーウェイ、ZTEの排除で現行4G規格の基地局などの設備を使っているソフトバンクは、19日の上場日は波乱含みだ。
ただ14日に日経新聞が、ソフトバンクのファーウェイとZTEを5Gで不採用、4Gでも取り替えていく方針を報じたことで、引き受け投資家の不安は多少は和らいだと思う。これによりスマホ端末を除いて、日本市場からファーウェイとZTEは完全に排除される。
ちなみに日本で唯一、ソフトバンクだけがファーウェイとZTEの4G基地局を購入し、費用は2015〜17年度の3年間で約250億円だったという。また5Gではファーウェイと提携し、開発していたから、これが白紙に返ると、5G導入はドコモやKDDIより遅れる公算が大きい。5Gで出遅れる損失は、痛いだろう。
◎アメリカの国防権限法が牙を剝く
両社への忌避感は、2019年度国防権限法でアメリカ政府と関係機関への取引が、前記2社を含む中国IT企業5社と取引する全世界の企業にも適用されることから来ているから(12月10日付け日記:「日本企業にとって対中国ビジネスの転換を迫られる2020年問題、アメリカの国防権限法の牙」を参照)、いずれドコモもKDDIも両社のスマホを扱わなくなるだろう。
今年、ZTEはアメリカ政府からの制裁で、アメリカ製半導体などを購入できず、経営危機に陥った。
ファーウェイは、自社の製品に組み込むためにアメリカ製のIT関連部品を100億ドルほど購入しているという。それが入って来なくなると、それだけでファーウェイも経営危機になる公算が大だ。
スターリニスト中国にとって「中国製造2025」は風前の灯火だ。
(この項続く)
昨年の今日の日記:「天が落ちてくることまで懸念する伊方原発止めた広島高裁トンデモ決定の非科学性批判;9万年も前のAso−4大噴火を引き合いに出すな」
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