鉄道に詳しい人間なら、簡単に根本的課題がわかる問題。
車両限界ってものが存在するために、線路幅や集電方式だけで解決する問題ではない。
それ故に、難しいとしか言わざるを得ない。
まず記事中にある課題を検証しよう。
まず線路幅。
これは、双方とも国際標準軌（1435ｍｍ）ゆえに、問題はない。
次に集電方式。
これは記事中にある通り、
架線集電方式（屋根上にパンタグラフがあり、空中にある架線から電気を取り入れる方式）
奈良線などの近鉄の本線系に採用されているもの。
電圧は直流1500V。
近鉄けいはんな線と地下鉄中央線は、第三軌条方式（走行用の線路の横に、電気を流す線路が存在し、そこから台車に取り付けられた集電靴・・・シューという・・・から電気を取り入れる方式）
電圧方式は、直流750V。
この問題は大きいように見えるが、実はそれほど難しい問題ではない。
実は架線方式と第三軌条の併用は、ヨーロッパでは多い。
イギリスとヨーロッパを結ぶドーバー海峡トンネルを通過するユーロスターは、実はこの両方を持った列車である。
これは、イギリスの鉄道の歴史が古く、電化する際にトンネルなどの設備を改修することなく電化するために普通鉄道に第三軌条を採用したため。
このため、日本では考えられないが、イギリスには、至る所に第三軌条の踏切が存在している。
また、大阪の地下鉄が、第三軌条方式直流750Vを採用したのには訳がある。
大阪最初の地下鉄である御堂筋線は、地下区間では建設費を抑えるために第三軌条を採用し、地上部分（当初から江坂までの延伸計画があり、淀川を渡る橋梁の工事は、すでに戦前から始まっており、戦後すぐの空中写真に橋脚が映っている）は、架線集電方式を採用する計画であった。
（出典：関西の鉄道）
この計画では、架線集電方式で1500Vを採用し、第三軌条では制御器や半数にして制御すればいいとの考えで、半分の電圧である750Vが採用されたという背景がある。
したがって、ヨーロッパの事例や大阪の地下鉄の過去の経緯を考えれば、実はそれほど難しい問題ではない。
問題は、おそらく東生駒付近になるであろう渡り線と、パンタグラフと第三軌条を切り替える場所などだけである。
で、記事中に触れられていないが、最大の問題が、車両限界という問題である。
これは、鉄道車両の大きさを規定するものであり、これをはみ出した車両は走ることができない。
それに、車両限界を規定するものに、さらに大きな建築限界（鉄道に関する設備などが、この中に入ってはいけないというもの）もある。
これが、近鉄本線系統とけいはんな線＆中央線乗り入れの最大の課題である。
現在、近鉄けいはんな線に使用されている7000系（7050系を含む）は、車両検査の際に高安や五位堂に入場するために、近鉄本線系の牽引車（一種の機関車のような車両）に牽引されていくのだが、ここにその課題がよく見える。
単に架線集電の牽引車に牽引されるだけでなく、まず乗降口のステップを取り外す。
これは、近鉄本線系と比べ、地下鉄の車両の方が幅が広いため、ホールのとの隙間を埋めるために、ステップが取り付けられているのだ。
これに関連することだが、記事の写真にある7000系の車体が、独特の卵型をしているのもこのためで、近鉄本線系の路線を通過するために、ホームや上部の建築物に支障しないために、車体の上部と下部が絞り込まれているためだ。
この車体構造のために、地下鉄のホームとの間に隙間ができるために、幅が広めのステップが取り付けられ、隙間を埋めるのだ。
これを取り外さないと、本線系と直通できないのだ。
また、第三軌条の鉄道では、トンネルの大きさを小さくするために、天井の高さが抑えられている。
地下鉄の車両が、地上の鉄道に比べて冷房化が遅かったのは、天井に取り付けられている冷房装置の薄型化が課題になったためでもある。
このため、車体の天井高さは、地下鉄に合わせる必要がある。
さらに課題になるのが、本線系を走行する際に必要になる、パンタグラフの高さである。
これは、通常の車体では収まらない。
しかし、昔のJR中央東線車両や、京津線の800系のように、パンタグラフ周辺の屋根を低くすることでクリア可能である。
さらに、本線上には存在しないが、地下鉄中央線の森ノ宮検車場に入場するための連絡線の急カーブは、18mの車体長でしか通過できない。
緊急時に入場することを考えると、この長さにならざるを得ない。
これらから見える課題は、記事中のものを含めると
１．7000系とほぼ同じ車体規格にする必要がある。
２．ホームとの隙間を埋める可動ステップが必要。
３．第三軌条用集電靴を可動〜収納式にする必要がある。
４．パンタグラフを折りたたむ高さを工夫する必要がある。
５．東生駒〜生駒間の渡り線設置場所。
６．生駒駅になるであろう第三軌条とパンタグラフの切り替え設備。
これらをクリアして初めて実現するものである。
それだけのものを車両や設備に投資して、果たして回収できるのか？
それを検討しているのか？
さらに、生駒〜難波の間に、先行列車を追い越す設備が、奈良線には、生駒、瓢箪山、東花園、八戸ノ里、布施と5駅存在する。
しかし、けいはんな線＆中央線では、あくまで設備面だけの話であるが、新石切と森ノ宮に限定される。
さらにその奥にまでアクセスするとなると、全て普通列車だけの路線に速達列車が必要と思われ、この二駅だけで追い越し設備が十分かと言えば、そうは思えない。
また、けいはんな線内は、最高速度が95��/hだが、中央線内は70km/hになっている。
こうした現行路線の設備的な問題も検討されていないとしか思えない。
おそらく、現業出身でない幹部が考えた発想なんだろうね。
■大阪万博会場へ、名古屋・奈良から直通特急 近鉄が検討
(朝日新聞デジタル - 01月21日 22:14)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5465642
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