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2021年01月10日09:48

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中野京子の西洋奇譚[読書日記812]

題名:中野京子の西洋奇譚
著者:中野 京子(なかの・きょうこ)
出版:中央公論新社
価格:1,700円+税(2020年9月 初版発行)
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マイミクさんが紹介されていた西洋の歴史奇譚です。

中央公論新社のホームページにあった紹介文を引用します。
“箒にまたがり飛翔する魔女、姿を消した子供たち、悪魔に憑かれた修道女―。
 事件や伝承に隠された、最も恐ろしい真実とは?
 稀代の語り手中野京子が贈る、21の「怖い話」”

目次は次のとおりです

 第一話 ハーメルンの笛吹き男
 第二話 マンドラゴラ
 第三話 ジェヴォーダンの獣
 第四話 幽霊城
 第五話 さまよえるオランダ人
 第六話 ドッペルゲンガー
 第七話 ゴーレム
 第八話 ブロッケン山の魔女集会
 第九話 蛙の雨
 第十話 ドラキュラ
 第十一話 犬の自殺
 第十二話 ホワイトハウスの幽霊
 第十三話 エクソシスト
 第十四話 貴種流離譚
 第十五話 デンマークの白婦人
 第十六話 大海難事故
 第十七話 コティングリー事件
 第十八話 十字路
 第十九話 斬られた首
 第二十話 ファウスト伝説
 第二十一話 ディアトロフ事件

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印象に残った文章を5つ引用します。

【第四話 幽霊城】から日本とイギリスの住居が幽霊物件だった場合の反応の違いについて。
“日本人とイギリス人は幽霊好きで知られる。
 ただし日本では夏の風物詩(?)なのに、イギリスではもっぱら冬が幽霊の活動期だ。
 また自分用の住居が幽霊物件の場合の反応ははっきり異なり、積極的に購入したがる日本人は稀なのに、イギリスの場合、幽霊屋敷は――無関係な生者には祟らないと信じられているからか――評価ポイントが上がって価格も高くなるという”(42p)

【第六話 ドッペルゲンガー】から、なぜドッペルゲンガー譚は幽霊譚より少ないのかという考察。
“数々のドッペルゲンガー譚。しかし実際には、幽霊譚と比べてはるかにその数は少ない。なぜだろう?
 自分が自分を見る――その衝撃は幽霊を見るのと比べものにならぬほど大きいからではないか。
 幽霊などよりすっとずっと怖いからではないか……”(56p)

【第七話 ゴーレム】から十六世紀後半にチェコスロヴァキアを統治していたルドルフ2世のエピソード。
“ルドルフ2世は政務には全く無関心で弟にまかせきり、結婚もせず、世継ぎをもつ気もなく、高等遊民として金にあかした道楽――芸術品収集とオカルト好み――を生涯追求した(さすがに晩年は蟄居させられるが)。
 プラハが「魔都」と呼ばれるようになったのも、ルドルフ2世が国内外からおおぜいの錬金術師、占星術師、呪術師などを宮廷へ招聘して厚遇したからだ。
 怪しげな者がほとんどだったが、中にはドイツ人天文学者ヨハネス・ケプラー(「ケプラーの法則」で有名)、デンマーク人ティコ・ブラーエ(当時としては最高度の天文記録を作成)、イタリア人画家ジョゼッペ・アルチンボルド(果物や植物の寄せ絵でルドルフ2世の肖像画を制作)といった、今に名を残す著名人たちも含まれていた”(58p)

【第十話 ドラキュラ】から、「ドラキュラ」という呼び名の由来について。
“父王ヴラド2世がドラゴン騎士団の一員となり、そこからヴラド・ドラクル(竜王)の異名をたてまつられたため、息子の3世が「ドラクルの子」ないし「竜の息子」を意味する「ドラキュラ」と呼ばれたのだ。
 面白いことにドラゴンには竜の他に悪魔を指す場合もあり、ヴラド3世の残酷さが喧伝されるに従って、竜より悪魔的意味合いほうが大きくなる”(85p)

【第十九話 斬られた首】から、フランスのギロチン刑について。
“大ヒットした1960年代アメリカ映画『シャレード』には、こんなシーンがある。
 パリの警視がアメリカ人容疑者に、
 「フランスでは死刑はギロチンだ。刃が落ちる前に首がピリピリするらしいぞ」
 と脅す。
 なんとギロチン刑は1981年まで法的に続いていたのだった(実際の執行は77年が最後)”(169p)

著者は【あとがき】で、次のように書いています。
“この世には、化学や合理性で説明できない不思議な出来事が時として起こる。
 それを嘘だ、錯覚だ、と片付けるより、人々が長く語り継がずにおれなかったものには、何かそれ相応の理由があるのではないか、と考えるほうが世界は豊かになる気がする”(190p)

私も同感です。
中野京子さんの著作はほとんど読んだことがなかったのですが、ファンになりました。
ただし、これからも怖い物(お化け屋敷、心霊スポット等)は避けてとおりたいと思います。

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中野 京子(なかの・きょうこ)
北海道生まれ。作家、ドイツ文学者。
西洋の歴史や芸術に関する広範な知識をもとに、雑誌や新聞の連載、講演、テレビ出演など幅広く活動。『怖い絵』シリーズ(角川文庫)刊行10周年を記念して2017年に開催された「怖い絵」展では特別監修を務めた。
他の著書に『名画の謎』シリーズ(文藝春秋)、『名画で読み解く 王家12の物語』シリーズ(光文社新書)、『美貌のひと』(PHP新書)、『「怖い絵」で人間を読む』(NHK新書出版)など多数。
近著に「新怖い絵」(KADOKAWA)、『画家とモデル』(新潮社)など。
著書ブログは「花つむひとの部屋」。

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