mixiユーザー(id:1795980)

2020年12月13日09:15

181 view

2049年「お金」消滅 貨幣なき世界の歩き方[読書日記808]

題名:2049年「お金」消滅 貨幣なき世界の歩き方
著者:斉藤 賢爾(さいとう・けんじ)
出版:中公新書ラクレ
価格:820円+税(2019年11月 発行)
----------
近未来の「お金」について考察した内容です。
本書を読むきっかけになった文章を「はじめに」から、引用します。

“1982年に公開された(SF映画の名作として名高い)「ブレードランナー」は2019年11月のロサンゼルスを舞台にしています。(中略)
 「ブレードランナー」の中では、バーに設置された公衆電話から主人公がテレビ電話をかけるシーンがあり、通話料金として「1ドル25セント」が画面に表示されます。
 現実の2019年に生きる私たちなら、迷わず携帯電話を使うところでしょう”(8p)

私も「ブレードランナー」が好きで何回も観ていますので、この文章を読んで手に取りました。

裏表紙の前にある惹句を引用します。

“電子マネーにキャッシュレスサービス、暗号資産、ブロックチェーン。
 今フィンテックという言葉のもとにお金のあり方が変わり始めた。
 インターネットと社会の関係を長年研究してきた著者は、この先「貨幣経済
 が衰退する可能性は高く、その未来にニューエコノミーが立ち上がる」と
 主張する。
 お金が消えるのと同時に消滅する職業とは? 変わらず価値を持つものとは?
 その先で私たちは何を歓びに生きるのか?
 この本を手に、混沌たる世界を進め!”

目次は次のとおりです。

 はじめに
 第1章 2019年、「お金」が消え始めた
 第2章 2049年、「お金」消滅
 第3章 「お金」のない世界をどう生きるか
 第4章 「ニューエコノミー」に備えよ
 おわりに

----------
印象に残った文章を引用します。
【第1章 2019年、「お金」が消え始めた】《なぜ中国がキャッシュレス先進国になったのか》から、香港での硬貨回収方法について。
“香港では、街中に硬貨を回収するトラック、「収銀車」が走っており、現金を持っていくとデジタルマネーに交換してくれます。
 収銀車は、もともとは市場から使われない硬貨を回収して新たな流通に回すという、硬貨流通の効率化のために誕生し、当初は硬貨を紙幣に両替していましたが、最近では電子マネーへの交換が加わり、キャッシュレスの推進に一役買っています”(38p)

同じく【第1章 2019年、「お金」が消え始めた】《「お金」には限界がある》から、Google社内の話。
“Googleの社内では社員食堂や自動販売機でも「お金」を使いません。食堂にはレジがなく、自販機にはコイン投入口もICカードをかざす場所もありません。会計もされておらず、つまり食べ放題、飲み放題なのです。
 このようにしている理由について、同社の管理部門にいた人に話を聞いたことがあります。
 私は「効率化のため」といった反応を期待していたのですが、戻ってきた答えは想像の斜め上を行っていました。
 「社内で食事してもらうことで、健康管理ができるから」
 それを聞いて私は、まるで家族だな、と思いました。
 実際Googleは、データや研究により、職場が安全な場所だと感じられるときにもっともチームの生産性が上がるということを、「心理的安全性」という言葉を用いて発表しています”(56p)

【第3章 「お金」のない世界をどう生きるか】《評価経済は答えなのか》から、信用スコアによる評価が「お金」に代わるという議論に対する著者の疑問。
“私はそもそも論として、評価が数値化されること自体に、根本的な問題があると思っています。年収にせよ、「いいね」の数にせよ、ひとたび評価の尺度が定まると、それを最大化するべく必ずハックが起きるからです。
 もともとそれが尺度になった経緯や意図を無視して、勝つためだけの言わばズルい方法が誰かの手で生み出され、当初は意図されていなかった形の競争に専らなっていく、ということです”(138p)

【第4章 「ニューエコノミー」に備えよ】《地産地消と地方の復権》から、今の中央集権的な国家のあり方へは戦前から変わっていないという主張。
“現代ではなぜここまで中央が力を持つに至ったのでしょうか。
 近代では帝国主義や植民地化の政策を採って国力をあげなければ他国から侵略されかねず、国民が一丸となる「富国強兵」が推進されました。
 第二次世界大戦で敗戦し、富国強兵という言葉そのものは消えたかもしれませんが、考え方自体は本質的に変化せず、今に至るまで残りました。その象徴となる言葉が「経済成長」です。
 経済で他国を圧倒する立場にいなければ、不利な立場に置かれる、という視点ではほとんど変化していないわけです”(177p)

古い価値観を持つ私ですが、「お金」の意味がまもなく大きく変わる時代なのだということは、なんとなく分かりました。

---------- ----------
斉藤 賢爾(さいとう・けんじ)
1964年、京都市生まれ。早稲田大学大学院経営管理研究科教授。
そのほか一般社団法人ビヨンドブロックチェーン代表理事、一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事など。
大学卒業後、日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(現日立ソリューションズ)入社。
93年、米コーネル大学大学院にて工学修士号(コンピュータサイエンス)取得。
外資系ソフトウェア企業などに勤務した後、2000年より慶應義塾大学環境情報学部村井純研究室に在籍。06年、同大学院にてデジタル通貨の研究で博士号(政策・メディア)取得。長期にわたりデジタル通貨の研究に従事。
著書に『インターネットで変わる「お金」』(幻冬舎ルネッサンス新書)、『これでわかったビットコイン』(太郎次郎社エディタス)など。
3 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年12月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031