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2020年12月06日14:00

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ワイルドサイドをほっつき歩け [読書日記807]

題名:ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち
著者:ブレイディみかこ(Mikako Brady)
出版:筑摩書房
価格:1,350円+税(2020年6月 初版第三刷発行)
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ブレイディみかこさんのエッセイです。

表紙裏の惹句を紹介します。

“EU離脱、競争激化社会、緊縮財政などの大問題に立ち上がり、
 人生という長い旅路を行く
 中高年への祝福に満ちたエッセイ21編。
 第2章は、現代英国の世代、階級、酒事情についての著者解説編”

目次は次のとおりです。

 はじめに
 第1章 This Is England 2018〜2019
 第2章 解説編―現代英国の世代、階級、そしてやっぱり酒事情
 あとがき

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イギリス在住ならではのトピックを引用します。
【第1章 This Is England 2018〜2019】からは3つ。

《3 ブライトンの夢―Fairytale of Brighton》から、ホワイト・クリスマスの話。
“英国の人々はクリスマスに雪が降るかどうかをギャンブルのネタにする。
 寒い国だから、よくホワイト・クリスマスになるんじゃないかと思われがちだが、意外とこれがうまくいかないもので、クリスマスの少し前とか後とか、微妙に時期をずらして雪景色になることはあっても、当日に雪が降ることは滅多にない”(34p)

《7 ノー・サレンダー》から英国の図書館事情について。
“(緊縮財政の方針で)ついにわが貧民街の図書館は閉鎖になった。
 お上はこのような状況にあっても「閉鎖」という言葉は使わない。「図書サービスはコミュニティーセンター内に移動」などという姑息な表現で同センター内に図書室が設けられたかのようなようなことを吹聴したが、このコミュニティーセンターというのがまたしょぼくて小さな建物だ。
 しかも、半分は民間企業に売却されてフィットネスジムになりやがっている”(59p)

《10 いつも人生のブライト・サイドを見よう》から「一周忌」の表現について。
“一周忌。と日本語で言うと、黒い喪服や線香の匂いが漂うような言葉の響きだが、ではこれを英語にすると何になるのかというと、「アニヴァーサリー」である。
 そんな松任谷由美の歌のタイトルみたいな、白いワンピースを着たモデルがプラチナの指輪をはめて海辺で微笑んでいるCMみたいなちゃらちゃらした言葉で故人の命日を表現していいものだろうか、と日本人のわたしなんかは思ってしまうが、ダニーの一周忌の招待状にも「ファースト・アニヴァーサリー」と書かれていた”(81p)

【第2章 解説編―現代英国の世代、階級、そしてやっぱり酒事情】から《3 最後はだいじなだいじな酒の話》。
“さて、最後はやはり酒の話である。
 「世代」「階級」と進んできて、なぜ最後に「酒」で落とすのかといえば、その理由は簡単だ。著者が酒飲みだからである”(240p)
“そもそも、酒を飲むということじたいが不健康でアンクールな習慣であり、むかしの人間のやる古臭いことだというイメージで捉えられていることは、例えば毎晩飲んでいる母親のことを見ている、わが家の息子の冷ややかな目つきを見てもわかる”(246p)

ブレイディみかこさんの本当の良さは、全編を通じて伝わってくる英国庶民への愛着、親近感がユーモアたっぷりに描かれている点だと思います。
新聞やテレビでは報じられない英国の事情がよく分かる内容でした。

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ブレイディみかこ(Mikako Brady)
ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。県立修猷館高校卒。
音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。
ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、『最底辺保育所』で働きながらライター活動を開始。
2017年、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)で第十六回新潮ドキュメンタリー賞受賞。2018年、同作で第二回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞候補。
2019年、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)で第七十三回毎日出版文化賞特別賞などを受賞、第二回Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション大賞受賞、第七回ブログ大賞(エッセイ・ノンフィクション部門)受賞。
著書は他に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』(ちくま文庫)、『アナキズム・イン・ザ・UK』(Pヴァイン)、『ヨーロッパ・コーリング――地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)、
『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『労働者階級の反乱――地べたから見た英国EU離脱』(光文社新書)、『女たちのテロル』(岩波書店)などがある。

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