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2020年11月08日14:05

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クオリアと人工意識[読書日記803]

題名:クオリアと人工意識
著者:茂木 健一郎(モギ・ケンイチロウ)
出版:講談社現代新書

格:1.200円+税(2020年7月 第1刷発行)
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マイミクさんの読書日記で知った本です。
茂木健一郎さんが「意識」と「クオリア」について16年ぶりに書いた本と表紙の惹句にあります。

惹句を引用します。

 「意識」は「コピー」できるか?
 人工知能に「意識」は生まれるか?
 茂木健一郎が、自身のメインテーマである
 「意識」と「クオリア」について、
 16年の沈黙を破って書き下ろした、
 新たな代表作にして問題作!

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目次は次のとおりです。

 プロローグ
 第一章 人工知能と人工意識
 第二章 知性とは何か
 第三章 意識とは何か
 第四章 知性に意識は必要か
 第五章 意識に知性は必要か
 第六章 統計とクオリア
 第七章 人工知能の神学
 第八章 自由意志の幻想と身体性
 第九章 「私」の「自己意識」の連続性
 第十章 クオリアと人工意識
 エピローグ

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印象に残った文章を引用しましょう。

【第一章 人工知能と人工意識】から、人工知能が支配した社会に起こりうる全体主義化について。
“そのうち人間が人工知能に「指導」され、やがて「支配」されることすらあるかもしれない。
 「全体主義」(社会全体のロジックが優先され、個々の人間の自由が失われてしまうこと)と「全体最適化」(ある種の評価関数で、社会全体が最適に調整されること。例えば、最大多数の最大幸福)との境界は曖昧である。
 人工知能が強力になっていった時、人間の立場はどうなるのだろうか”(25p)

【第二章 知性とは何か】から、人工知能「依存症」になる前に人工知能の正体を見極めるべきとい主張。
“もうしばらく経つと、今、私たちがインターネットなしでは生活できないのと同じように、人工知能のアシストなしでは生活できないようになるかもしれない。
 人工知能「依存症」になる前に、その正体をよく見極めておく必要がある”(49p)

【第五章 意識に知性は必要か】から、最新のAIによる文章生成能力について。
“電気自動車のテスラや、宇宙開発のスペースXなどの会社の共同創業者であるイーロン・マスクが設立した人工知能の研究プラットフォーム、「オープン・AI」が2019年に開発した人工知能「GPT−2」は、自然言語処理において現時点でどれだけのことができるかということを示した。
 GPT−2は、短いリード文を与えると、その後の文章を自動生成してしまう。その文章は完全に近いと言ってよいほど意味が通っている”(180p)

【第七章 人工知能の神学】から、人工知能が判断を誤る可能性について。
“人工知能の発達によって、人類が滅亡してしまうのではないかという危惧は、シンギュラリティが起こるかどうかに関係なくリアルなものだと言わざるを得ない。
 その根本的な理由は、人工知能の「狭さ」にある。
 『2001年宇宙の旅』の中で、スーパーコンピュータの「HAL 9000」は、任務の遂行のためには宇宙飛行士の一人を「排除」することが必要だという判断をしてしまう。
 人間から見れば明らかに異常で受け入れがたい選択を人工知能がしてしまう背景には、その「評価関数」がある”(224p)

【第十章 クオリアと人工意識】から、人生は「データ」ではないという自明な話。
“人工知能のアプローチを支えるベイズ推定のような統計的な手法では、これらの個別性は、すべて「アンサンブル」の中の「データ」の一つになってしまう。
 しかし、私たちの一人ひとりの人生は、「アンサンブル」の中の「データ」の一つではない。
 「今、ここ」で感じる意識の流れを離れて、私たちが生きるということはない”(355p)

難解な本でした。
内容が難しいだけでなく、各章のつながりも分かりづらく、読み終わっても全てを理解できたわけではありません。
ですが、人間を上回る「知性」が出現しつつある今、人間の存在意義は何なのか? 人間の価値はどこにあるのか?
答えの出ない問いかけをされていることは分かりました。

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茂木 健一郎(モギ・ケンイチロウ)
1962年東京都生まれ。
東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。専門は脳科学、認知科学。
「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして「意識」を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年『脳と仮想』で第4回小林秀雄賞を、’09年『今、ここからすべての場所へ』で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。

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