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2020年07月26日09:46

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パスタぎらい[読書日記788]

題名:パスタぎらい
著者:ヤマザキマリ
出版:新潮新書
価格:740円+税(2019年4月 発行)
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マンガ家ヤマザキマリさんのエッセイです。
初出はホームページでの連載「ヤマザキマリの『世界を食べる』」とのこと。
https://www.fnsugar.co.jp/essay/yamazaki

この本を読みたくなった文章を【あとがき】から引用します。
“本編でも述べているが、私は美食家ではない。
 食べ物にはかなり寛大で、どんなものでもそう簡単に「不味い」とは思わない。
 この味覚に対しての大らかさは、おそらく幼い頃からの食に対する渇望が影響していると思われる”(202p)
かなり自分と似ているな、と共感しました。

表紙裏の惹句を紹介します。

“イタリアに暮らし始めて三十五年。断言しよう。パスタより
 もっと美味しいものが世界にはある! フィレンツェの絶品
 「貧乏料理」、シチリア島で頬張った餃子、死ぬ間際に食べ
 たいポルチーニ茸、狂うほど愛しい日本食、忘れ難いおにぎ
 りの温もり、北海道やリスボンの名物料理……。いわゆる
 グルメじゃないけれど、食への渇望と味覚の記憶こそが、私
 の創造の原点――。
 胃袋で世界とつながった経験を美味しく綴る食文化エッセイ”

目次は次のとおりです。

 第1章 イタリア暮らしですが、なにか?
 第2章 あなた恋しい日本食
 第3章 それでもイタリアは美味しい
 第4章 私の偏愛食
 第5章 世界をつなぐ胃袋
 あとがき

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印象に残った文章を引用しましょう。

【第1章 イタリア暮らしですが、なにか?】《II イタリアのパンの実力》から、イタリアのパンは美味しくないという話。
“私にしてみればパン単体の美味しさを知らない彼ら(イタリア人)はちょっと気の毒でもある。
 実際かつて日本に連れて来た十人のイタリア人のオバさんたちは、日本で最も美味しかったものの一つにパンを挙げていた。
 とにかく私にとって、世界におけるパン美食国ナンバーワンは日本である”(20p)

おなじく第1章《III トマトと果物が苦手です》から、イタリアではメロンは高級品ではないという話。
“ここイタリアは夏場になるとメロンの消費量が増えるので、高級品扱いされている日本と違い、当たり外れはあるが、立派で美味しいネットメロンが一玉二百〜三百円といった手頃な値段で買えるのだ”(23p)

【第2章 あなた恋しい日本食】《VII スナック菓子バンザイ!》から、スナック菓子の蘊蓄。
“日本はスナック菓子大国である。アジア圏はどこも大体スナック菓子が充実してはいるが、日本ほどの種類の多さとクオリティの高さを感じさせる国はない。
 アメリカといえば、ポテトチップスやポップコーン発祥の地でもあるわけだし、さぞかしスナック菓子の種類が豊富なのだろうという勝手なイメージを持っていたが、実際一時期この国で暮らしてみてわかったのは、確かにスーパーマーケット内でスナック菓子の棚が占める割合は大きいけれど、それは決して種類が豊富だからではなく、それぞれの商品のサイズが巨大でカサがあるからだった”(76p)

【第3章 それでもイタリアは美味しい】《I 「万能の液体」オリーブ・オイル》から。
“イタリアでは火傷をすると、応急処置として患部にオリーブ・オイルを塗るという風習が残っている。
 大学時代、同じアパートで一緒に暮らしていた南イタリア出身の女子学生が、パスタを茹でたお湯が掛かって火傷した私の指に、「これ効くから!」と実家から送られてきたという濃厚なオリーブ・オイルを塗ってくれたことがある”(88p)

【第4章 私の偏愛食】《思い込んだらソーセージ》から、ヤマザキマリさんが食べた世界各地のソーセージについて。
“思えば私も、世界の各地で様々なソーセージを食べてきた。
 例えばチベット(略)。内モンゴル自治区のオバさんが、バッグから取り出した羊の硬いソーセージ。(略)
 スペインやポルトガルの料理屋でよく食べたブラッド・ソーセージ。
 ブラジルの煮込み豆料理フェイジョアーダにモツやら何やらと一緒に入っている脂っこいソーセージ。
 南イタリアの唐辛子をふんだんに練り込んだ真っ赤なソーセージ。
 そして、夫の実家で毎年作らされていた、豚の解体から手がける自家製ソーセージ”(132p)

締めくくりに、【あとがき】に載っている、兼高かおるさんとのエピソードを紹介します。
“かつて旅行家でジャーナリストの兼高かおるさんとお会いした時に、訪れた土地でご馳走とされる食べ物を美味しくいただくことこそ、旅を楽しむコツだという話題で盛り上がった”(204p)
ここまでは普通の話ですが、このあとが豪快です。

“アフリカのとある小国の王様の自宅に招かれた兼高さんは、土間にある大台所で夕食の支度をしている料理人が、周りの人とおしゃべりをしながら、鼻の中から取り出した分泌物をポイポイと料理中の鍋に入れるのを目撃してしまったという。
 その料理は客人へのおもてなしとして晩餐に振る舞われたそうだが、「無論、邪な思いは捨てて、一気に食べたわよ」と楽しそうに仰っていた。
 「つまり、塩分の役割だったのね」「えっ、そうなんですか!?」「わからないけど、そうだったんじゃないかしら。いいのよ、地元の人とも仲良くなれたんだから。それにわたくし、食いしん坊だし」と愛らしく微笑む兼高さんは最強だった”(204p)

食欲バンザイ\(^o^)/と思いつつ、本を読み終わりました。(笑)

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ヤマザキ マリ
1967年生まれ。マンガ家。
84年、イタリアに留学。97年、マンガ家デビュー。
著書に『プリニウス』(とり・みきと共著)『オリンピア・キュクロス』『ヴィオラ母さん』など。

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