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2020年07月19日19:50

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誰も知らないレオナルド・ダ・ヴィンチ[読書日記787]

題名:誰も知らないレオナルド・ダ・ヴィンチ
著者:斎藤 泰弘(さいとう・やすひろ)
出版:NHK出版新書
価格:1100円+税(2019年9月 第1刷発行)
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前回読んだ『レオナルド・ダ・ヴィンチ ミラノ宮廷のエンターテイナー』の著者が、その後のレオナルドを書いた本です。

表紙裏の惹句は次のとおりです。
“ある時期のレオナルドの思想を再現するには、その時期に書かれた断片的な
 考察をジグソーパズルのように組み合わせて、彼の脳裏に浮かんでいたはず
 のその全体像を再構成する必要がある。
 本書は彼の壮年期から晩年期に焦点を当てて、この時期の手稿からさまざま
 な科学的探究の経過と、彼が最終的に到達した結果を再現する試みである”

目次を紹介しましょう。

 はじめに
 第1章 アルキメデスになりたかった男
 第2章 水を操る軍事技師
 第3章 芸術とは「優美さ」である
 第4章 人間は鳥になれるか
 第5章 《岩窟の聖母》は、なぜ二点あるのか1
 第6章 《岩窟の聖母》は、なぜ二点あるのか2
 第7章 生命の神秘なる世界
 第8章 宇宙の真理を解き明かせ
 第9章 幾何学こそが科学である
 第10章 手稿だけが知っている真実
 おわりに

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印象に残った文章を抜き書きします。

【第1章 アルキメデスになりたかった男】から、レオナルドと政治家マキアヴェッリの関係について。
“近代の自然科学と社会科学の先駆者である二人の人間――レオナルド・ダ・ヴィンチとニッコロ・マキアヴェリ(1469〜1527)――が、友人どうしであったことは、よく知られている。だが、この二つの異なった分野の科学者を結びつけたものが、実は戦争であったことを知る人は少ないだろう”(28p)
 昔、塩野七生さんの『わが友マキアヴェッリ』を読んだことがあり、この二人が同時代人だったと改めて知りました。

【第3章 芸術とは「優美さ」である】から、遅筆のレオナルドに早く描かせる秘策。
“だが、(大会議室の壁画をレオナルドに依頼した)行政長官ピエロ・ソデリーニには、彼の遅い筆を速くさせる秘策があった。
 それは、《ダヴィデ》像を完成したばかりの若手のホープ、ミケランジェロに、向かい側の壁に《カッシナの戦い》を描かせて、新旧の芸術家を競わせようとしたのである。
 これはまさに全市民の見守る中の絵筆による決闘であり、その効果はてきめんだった”(72p)

【第4章 人間は鳥になれるか】から、レオナルドが人間の飛行を考えていたことが知られたのは二十世紀になってからという話。
“レオナルドは、世間の人々――とりわけマルティーニに代表される、経験を積んだ叩き上げの技術者たち――に笑われることを極度に恐れて、この(人間の飛行)計画をひた隠しにし、(知っているのは、彼の手稿を読めるようになった二十世紀以降の研究者だけである)〜”(113p)

【第5章 《岩窟の聖母》は、なぜ二点あるのか1】から、レオナルドは制作中の絵でも人に見せていたという話。
“レオナルドは、自分の制作過程を誰にも見せずに、密かに自分だけで創意工夫を凝らすような画家ではなかった。
 彼が『絵画の書』の中で述べているように、「画家は自分の作品を制作しているときに、嫌がらずにあらゆる人の判断を聞くべきである」(七五章)。
 したがって、信心会員や聖職者たちは、レオナルドのアトリエを何度も訪れては、祭壇画の進捗状況を見ていたはずであり、図像の変更についても完全に同意していたはずである”(123p)

【第7章 生命の神秘なる世界】から、解剖によって人間と動物の筋肉の共通性を知っていたレオナルドの言葉。
“万能の画家になる方法を知っていれば、容易に万物を描くことができる。という
 のは、あらゆる地上動物は似通った四肢を、つまり似通った筋肉と腱と骨を持っ
 ており、解剖書で証明するように、それらは長さや太さ以外には異なるところが
 ないからだ。(パリノ手稿G 五v)”(184p)

【第10章 手稿だけが知っている真実】から、レオナルドは「論考」が苦手だったという話。
“彼(レオナルド)は自分の観察や考察を、誰からも批判を受けないような「論考」として論じることができなかった。
 と言うのは、彼はいかにも職人らしく、自分の発見した自然法則を、金言のような短文にして終わることが多く、学者たちを納得させるような、権威者の引用で脇を固めた長い論述と証明は苦手だったからだ”(256p)

最後に、レオナルド・ダ・ヴィンチの金言を紹介して締めくくります。
【第2章 水を操る軍事技師】から。
“立派に費やされた一生は長い」(トリヴルツィアーノ手稿三四v)”(40p)

人生を立派に費やした人物ならではの言葉ですね。

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斎藤 泰弘(さいとう・やすひろ)
1946年福島県生まれ。京都大学名誉教授。78年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。京都産業大学助教授、京都大学助教授、同大学大学院文学研究科教授等を歴任。専攻はイタリア文学、イタリア演劇。
『鳥の飛翔に関する手稿』(谷一郎、小野健一と共著)で第3回マルコ・ポーロ賞受賞。
著書に『レオナルド・ダ・ヴィンチの謎─天才の素顔』(岩波書店)、『ダ・ヴィンチ絵画の謎』(中公新書)。レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿の翻訳多数。

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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年07月21日 07:47
    レオナルド・ダ・ヴィンチ三昧でいらっしゃいますね!
    それだけ、興味を惹きつけられる人であることは確かです。
    芸術家でもあり、科学者でもあったレオナルドの人生や業績は
    とても興味深いものがあります。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年07月23日 20:27
    ヤマヤマさま
    いつも、コメントありがとうございます。
    私は本書(および前回の本)を読むまで、レオナルド・ダ・ヴィンチを「偉大な天才」と思っていたのですが、著者によれば「世間の評判を気にする」「悩める天才」だったようです。
    そういった面があったにせよ、私のレオナルド崇拝は変わらないですが。

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