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2020年07月05日15:02

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アンチ整理術[読書日記785]

題名:アンチ整理術
著者:森 博嗣(もり・ひろし)
出版:日本実業出版社
価格:1400円+税(2019年12 月第3刷発行)
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マイミクさん、お薦めの本です。

表紙裏の惹句を紹介します。
“――結局のところ、整理・整頓とは、元気を出すため、やる気になるため
 にするものである。
 それなのに、仕事ができるようになる、発想が生まれる、効率を高める、
 などと余計な効果を期待するから、勘違いが生まれる”

この文章を読んで、楽しそうな本だと期待しました(笑)。

目次を引用します。
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 まえがき
 第1章 整理・整頓は何故必要か
 第2章 環境が作業性に与える影響
 第3章 思考に必要な整理
 第4章 人間関係に必要な整理
 第5章 自分自身の整理・整頓を
 第6章 本書の編集者との問答
 第7章 創作における整理術
 第8章 整理が必要な環境とは
 あとがき

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著者の考え方が顕著な文章をいくつか紹介します。

【まえがき】から。
“これまでにも、「仕事のやり甲斐について書いてほしい」と頼まれて、「仕事のやり甲斐など単なる幻想である」という本を書いたし、「仕事に活かせる集中力について書いてほしい」との依頼には、「集中力はいらない」というずばり真逆の本を書いた。ほかにも例が幾つかある。
 もうお気づきのことと思うけれど、森博嗣は天の邪鬼なのだ”(4p)

【第1章 整理・整頓は何故必要か】から、本書の内容も疑ってかかりなさい、という大胆な書き出し。
“周囲のアドバイスは、疑ってかかった方が良い。人それぞれで条件が異なるから、他者の方法は参考程度にしかならない。
 それらを参考にして、自分に合うように考えることが必要だ。
 本書に書かかれていることも例外ではない。多くの人は、もう既に「この本、役に立たないかもしれないな」と訝しんでおられるだろう、と想像する。
 そういう姿勢は非常に大事である”(43p)

【第2章 環境が作業性に与える影響】から、集中力について。
“古来、ものごとに集中することが「善」とされてきた。「集中力」を持っている者が、成功者となる、という社会だった。「気が散る」ことは障害だったのだ。
 このテーマで別の本を書いたので、ここでは詳述しないが、この人間に求められた「集中力」とは、結局は「機械のように働け」という意味であるから、僕は「機械力」と名づけるのが相応しいと考えている”(62p)

【第3章 思考に必要な整理】から、著者が子供の頃に暗記ものを放棄した話。
“僕は、中学生の頃に、「暗記もの」と呼ばれる学科をすべて放棄した。特に、固有名詞を覚えることが苦手だったので、そういうことに頭を使うのをやめてしまおう、と自分なりに判断したのだ。
 なにしろ、ぼんやりと知っているだけでは、テストで答えられない。一字一句正確に記憶し、再生できなければならないのだ。
 わざわざ覚えなくても、ノートに書いてあることだ。必要なときに、それを見れば良いのではないか、と子供ながらに思った”(81p)

【第5章 自分自身の整理・整頓を】の《自分の生き方を整理・整頓する》から。
“自分自身を整理・整頓することも、非常に抽象的な行為といえるだろう。
 身の周りを片づけることでもないし、身だしなみを整えることでもない。自分の立場、周囲との関係も含め、自分の成立ちを考え、無駄を自覚し、本質をぼんやり捉えることで、自分の生き方を吟味するような行為である。
 そのためには、自分が日々何をしているのか、どこへ向かっているのかを知る必要がある。
 もし、そういうことを考えていないとしたら、あなたの人生は相当散らかっているはずである”(153p)

【第6章 本書の編集者との問答】から、編集者Y氏と著者のやりとりを2つ。
 その1:
“Y 「必要なものを見極め、身につける方法には、どんなものがありますか?」
 森 「ね、やはり、方法に拘りますよね。方法ではない、ということがまず第一
    だと思いますよ。方法なんて、そのうちできてくるものです。とにかく、
    結果を出す、必死になって前進します。すると、振り返ったときに道が
    できている。それが『方法』というものです。」”(170p)

 その2:
“森 「背伸びして、自分を良く見せようとするから、どこかで無理が生じる、と
    いうことです。最初から、自分を低く見せる、『仕事ができない人間』
    だと思わせた方が安全です。」
 Y 「先生は、そうしてこられたのですか?」
 森 「はい。そうしてきました。親父から教わったのです。一生懸命になるなっ
    て」
 Y 「その価値観は、かなり珍しいと思います。」”(195p)

締めくくりに【第8章 整理が必要な環境とは】から、はっとさせられた言葉を引用します。

“なにか目の前のものを買わされて、それを消費することが人生の楽しみだ、と思い込んでいないだろうか?
 誰か他者に自分の時間の大半を捧げて、それが自分の人生なのだ、と諦めていないだろうか?
 人間は、本当に自由なのだ。
 疑っている人は、一度試してみると良い。
 明日、自分の好きなところに出かけて、好きなものを食べてみると良い。
 それを、誰かに逐一報告したりしない。
 誰かに自慢したりしない。
 ただ、自分でにっこりすれば、それでよい。
 自由にできることが、どれくらい価値があることか、少しわかるだろう”(243p)

「整理術」という言葉を借りて、著者の生き方・考え方を披露した著作だと思いました。

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森 博嗣(もり・ひろし)
工学博士。
日本の某国立大学の助教授として勤務していた1996年に、『すべてがFになる』(講談社文庫)で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。
同作はまんが化、ドラマ化、アニメ化などされ、多くのクリエータに影響を与えた。
以降、犀川助教授&西之園萌絵の「S&Mシリーズ」、瀬在丸紅子たちの「Vシリーズ」(共に講談社文庫)ほかのミステリィ、『女王の百年密室』(講談社文庫)、押井守監督によりアニメ映画化された『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品を発表。
『「やりがいのある仕事」という幻想』『夢の叶え方を知っていますか?』(共に朝日新書)、『孤独の価値』『作家の収支』(幻冬舎新書)、『なにものにもこだわらない』(PHP研究所)など、ビジネスパーソンのかかえる疑問や興味に焦点を当てた単行本、新書も多数刊行している。


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