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2020年06月14日10:21

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大島鎭子と花森安治 美しき日本人[読書日記782]

題名:大島鎭子と花森安治 美しき日本人
著者:長尾 剛(ながお・たけし)
出版:PHP文庫
価格:620円+税(2016年5月 第1版第2刷発行)
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雑誌『暮しの手帖』を創刊した社長:大島鎭子(しずこ)さんと編集者:花森安治(やすじ)さんの伝記です。
『暮しの手帖』は私が子供の頃、家にあったので興味深く読みました。

裏表紙の惹句を引用します。
“小学五年で父を失い、母と妹たちを支えるべく、家長として生きる
 ことになった大島鎭子。学生時代から編集者としての才能を発揮し
 ながらも、徴兵など、戦争の苦難を味わった花森安治。戦後の混乱
 の中、二人はいかにして国民的雑誌を生み出し、日本人の暮しを変
 えたのか。幼少期から晩年までの足跡と、戦前戦後の日本人の歩み
 を重ね合わせつつ、新解釈で二人の実像に迫る”

目次を紹介します。
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 序 章
 第一章 大島鎭子の戦前と戦中
 第二章 花森安治の戦前と戦中
 第三章 二人の戦後
 第四章 鎭子の活躍、安治の活躍
 終 章 引き継がれる二人の夢
 あとがき

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印象に残った文章を引用しましょう。

【第一章 大島鎭子の戦前と戦中】から、戦前の日本にはアメリカ嫌いの感情が多分にあったという話。 
“大正時代にアメリカで「排日移民法」が施行されてからというもの、日本人の感情レベルでのアメリカ嫌いは、相当なものだった。
 だから「なんのアメリカなんぞに好き勝手にやらせてたまるものか」といった、言わば「蛮勇」に駆られた雰囲気が、人々のあいだには広がっていた。
 それは、もちろん鎭子も例外ではなかった”(76p)

【第二章 花森安治の戦前と戦中】から、安治が配属になった満洲国北西部での軍曹の屈辱的な言葉。
“軍曹の口からは、
 「私たちの大切な国と家族を守るために、ともにがんばって戦おう」
 などといった激励の言葉も
 「皆で力を合わせてこの寒さを乗り切ろう」
 などといった仲間意識を鼓舞して絆を深める思いやりの言葉も、一片だになかった。彼はただ、
 「おまえたちは馬以下の価値しかない、一戔五厘の価値しかない、ただの消耗品だ」
 と、人間に対してこれ以上ない侮蔑の言葉で、安治たちの心をふみにじったのである”(126p)
ちなみに、一戔五厘とは召集令状の葉書の値段のことで、「兵隊など一戔五厘で集められる」と侮辱したわけです。

【第三章 二人の戦後】から、新しい雑誌の方向性についての話。
“喫茶店のテーブルで鎭子に対座した安治は、こう話を切り出した。
 「ぼくが手助けする君の雑誌、内容はこれから詰めていくとしてね。その方向性……というか、雑誌の性質については、はっきりさせておきたいんだ。
 それはね、もう二度と『あんな戦争』をしない、させないような人の心を育てる雑誌にしたい。――ということだ。
 『あの戦争』は、君たちふつうの人々の暮しをメチャクチャにした。そんなことは絶対に許されない。
 人間にとって、ふつうの暮しこそが一番大切なんだ。」”(172p)

【第四章 鎭子の活躍、安治の活躍】から、「暮しの手帖社」が倒産しそうな第四号を編集していた時の安治と鎭子のエピソード。
“「せっかく銀行からカネを借りられたのに、このままじゃ『暮しの手帖』はジリ貧だ。何か読者をアッと言わせる、ビックリするような記事が欲しい」
 「アッと言わせる……ですか」
 「そうだ。『暮しの手帖』の読者は庶民だ。庶民である人々が興味津々になって、しかも他の雑誌ではお目にかかれないような、そんな『暮しの手帖』の独占記事が要るんだ」(略)
 「あの……私、今すごく知りたいことがあるんですけど」
 自分が知りたいことは庶民の誰もが知りたいはずだ。――というのが、鎭子の信条である。
 「何かね」
 安治は身を乗り出した。
 「今、皇族の方々って、どんな暮しをなさっているのかな。……って」”(206p)
このアイデアは実を結び、照宮内親王(当時、すでに皇室を離れ、庶民になったいた昭和天皇の長女)に書いて頂いた記事のおかげで、『暮しの手帖』は爆発的に売れたそうです。

『暮しの手帖』の名物編集長:花森安治さんの名前は学生の頃から知っていましたが、「暮しの手帖社」社長が大島鎭子さんだったことは初めて知りました。
そして二人の戦前〜戦中〜戦後を通して、庶民の視点から見た昭和史を感じることができました。

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長尾 剛(ながお・たけし)
東京生まれ。東洋大学大学院修了。作家。
主な著書として、『日本がわかる思想入門』(新潮OH!文庫)、『知のサムライたち』(光文社)、『手にとるように「おくの細道」がわかる本』『手にとるようにユング心理学がわかる本』(以上、かんき出版)、『話し言葉で読める「方丈記」』『世界一わかりやすい「孫子の兵法」』『広岡浅子 気高き生涯』(以上、PHP文庫)などがある。
また、『漱石ゴシップ』(文春文庫)、『漱石学入門』(ごま書房新書)、『漱石の「ちょっといい言葉」』『あなたの知らない漱石こぼれ話』(以上、日本実業出版社)、『もう一度読む夏目漱石』(双葉社)、『漱石復活』(アリアドネ企画)、『心が強くなる漱石の助言』(朝日ソノラマ)、『自分の心を高める漱石の言葉』(PHP研究所)、編著として『人生というもの』『漱石ホラー傑作選』(以上、PHP文庫)等、夏目漱石に関する編著書も多い。

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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年06月16日 07:33
    大橋鎭子さんと花森安治さんの、「暮らしの手帖」にまつわる物語は、
    2016年のNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」で、ドラマ化されましたですね。
    広告がないという画期的な雑誌「暮らしの手帖」は、戦後日本の高度成長期
    に、根強いファン読者に支えられて、独特の光芒がありました。
    若いころ、花森安治さんの「一戔五厘の旗」を読んで、その気骨に痺れた
    こともありました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年06月16日 20:38
    ヤマヤマさま
    いつも、コメントありがとうございます。
    そういえば「とと姉ちゃん」は大橋姉妹の話だったと聞いたことがあります。
    >若いころ、花森安治さんの「一戔五厘の旗」を読んで、その気骨に痺れた
    >こともありました。
    本書にも「一戔五厘の旗」の引用(125p)が載っています。
    激しい憤りが伝わってくる詩ですね。

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