mixiユーザー(id:1795980)

2020年06月07日13:55

26 view

同調圧力[読書日記781]

題名:同調圧力
著者:望月 衣塑子(もちづき・いそこ)、前川 喜平(まえかわ・きへい)、マーティン・ファクラー
出版:角川新書
価格:840円+税(2019年8月 4版発行)
----------
東京新聞の望月記者、文部科学省の前・事務機関:前川氏、ニューヨーク・タイムズの前・東京支局長:ファクラー氏の共著による《同調圧力》の考察です。

目次を紹介します。
-----
 第一章 記者の同調圧力……望月 衣塑子
 第二章 組織と教育現場の同調圧力……前川 喜平
 第三章 メディアの同調圧力……マーティン・ファクラー
 座談会 同調圧力から抜け出すには(望月衣塑子、前川喜平、マーティン・ファクラー)
 あとがき 望月衣塑子

-----
印象に残ったところを各章から引用します。

【第一章 記者の同調圧力】から、望月記者が菅官房長官の会見での質問を妨害されることへの神奈川新聞の記事。
“会見の場で質問を遮る妨害、さらには記者クラブに対し要請文をもってかける
 圧力。権力者によってこれほどあからさまに私たちの報道の自由が抑圧された
 ことが戦後あっただろうか。
 「権力は常に暴走し、自由や権利を蹂躙する」という歴史的経験を忘れては
 ならない。
 次なる闇は、その片棒を報道の側が担ぎ始めるという忖度による自壊の構図
 だ”(40p) 

【第二章 組織と教育現場の同調圧力】から、文部科学省に勤めていた時の前川氏のジレンマについて。
“下村大臣との間でもっとも大きなジレンマを抱いたのは、教育ニ関スル勅語(教育勅語)の学校教材使用に対する見解だった。(略)
 教育勅語に対して抱いていた(私の)思想や良心は、大臣とはまさに対極の位置にあった。(略)
 (戦前の)日本ではこんなものが作られたことがあると学ばせる、歴史的資料としてならば教材になりうるだろう。
 しかし、天皇絶対主義で国民には主権はないとし、自己を犠牲にして天皇及び大日本帝国に奉仕すること(滅私奉公)が最上の美徳であるというような戦前・戦中の考え方を学校の、それも道徳の教材に使えるはずがない”(102p)

【第三章 メディアの同調圧力】から、森友学園問題でしばしば挙がった「忖度」という言葉について。
“外国人には摩訶不思議に感じられる「忖度」だが、映画やテレビドラマを含めた日常生活でよく使われるスラングのなかに似たようなものがある。
 そのひとつが「kiss ass」だ。おべっかを使う、ゴマをする、あるいは媚びへつらうといった行為を揶揄するときに用いられる。
 イエスマンを揶揄する単語としても、意味が通じるだろう。
 すべてがアメリカ社会では軽蔑される行為であり、もちろん批判の目を向けられる”(145p)

締めくくりに【座談会 同調圧力から抜け出すには】からも2つ引用します。

1)新聞の「首相動静」で「都内料亭で4時間、○○新聞の社長と総理が会食」などと報じられている件についてのファクラー氏のコメント。
“欧米のクオリティ・ペーパーでは、まずありえないことです。
 トランプ大統領とニューヨーク・タイムズの会長、社長が4時間も会食していたら、これはもう一大スキャンダルですよ”(211p)

2)文部科学省に関する新聞記事への対応が、掲載された新聞社によって違っていたという、前川氏の話。
“官僚時代の朝は、新聞各紙にどのような記事が載っているのか、というチェックが日課のひとつでした。
 たとえば読売新聞や産経新聞にリーク記事が載っている場合は、大臣や副大臣は何ひとつ文句を言わない。自分たちが流した情報だからです。
 これが朝日新聞や毎日新聞、東京新聞、あるいはテレビ局ならTBSなどで報じられると、激怒しながら「だれがこんな情報を流したのか」と犯人捜しが始まる”(216p)

前川氏は、いわゆる受験秀才が増えている現状を次のように嘆いています。
“人間の最低限の条件とは、自分で考え、自分で判断し、行動できることだと思っている。
 しかし、それを満たしていない状態で、学歴だけは立派なものをもって世の中に出てしまっている人間があまりにも多いのではないだろうか”(140p)

残念ながら、前川氏の主張どおりになっている気がします。

---------- ----------
望月 衣塑子(もちづき・いそこ)
1975年東京都生まれ。東京新聞社会部記者。慶応義塾大学卒業後、東京・中日新聞入社。
現在は沖縄の基地問題などを取材しながら、官房長官会見で質問を続ける。
著書に『新聞記者』『武器輸出と日本企業』(ともに角川新書)ほか。

前川 喜平(まえかわ・きへい)
1955年奈良県生まれ。現代教育行政研究会代表。東京大学卒業後、文部省(現・文部科学省)入省。
2016年事務次官に。17年退官。現在は、講演や大学での講義を通して、自ら学ぶことの大切さを伝えている。
著書に『面従腹背』(毎日新聞出版)ほか。

マーティン・ファクラー
1966年アメリカ・アイオワ州生まれ。
AP通信社北京支局、ウォール・ストリート・ジャーナルを東京支局などを経て、2005年ニューヨーク・タイムズへ。
09〜15年同東京支局長。著書に『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(双葉新書)ほか。

1 2

コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年06月09日 08:06
    中日新聞の望月記者や、前文科省事務次官の前川さんは存じ上げていて、
    文藝春秋などの雑誌で、文章を読んだことがありますが、マーティン・ファクラー
    さんは知りませんでした。

    安倍さんの長期政権がつづいて、政治やマスコミの間で、同調圧力高まり、
    忖度から引き起こされる事態に、望月さんや前川さんは、きちんと批判を
    続けておられます。まぁ、でも現政権への同調圧力も、かなり綻んできた
    ような気がします。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年06月09日 21:44
    ヤマヤマさま
    いつも、コメントありがとうございます。
    前川氏は、省庁のトップを決める人事権を官邸が握り始めたことも嘆いています。
    今回の(官庁ではありませんが)検察庁トップを巡る騒動を一年前から見通していた慧眼だと思いました。

mixiユーザー

ログインしてコメントを投稿する

<2020年06月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930