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2020年04月19日15:06

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政府はもう嘘をつけない[読書日記774]

題名:政府はもう嘘をつけない
著者:堤 未果(つつみ・みか)
出版:角川新書
価格:800円+税(2016年8月 再版発行)
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国際ジャーナリスト堤未果さんが2016年に執筆したレポートです。

表紙と裏表紙に印刷された、惹句は次のとおりです。
 お金の流れで、世界を見抜け!(表紙)
 「今だけカネだけ自分だけ」で…いいんですか?(裏表紙)
“「今だけカネだけ自分だけ」でいいんですか?”は本書のキーワードです。

目次を紹介します。
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 プロローグ 「パナマ文書の何が悪い? 〜慌てるアホウに笑うアホウ〜」
 第1章 金の流れで「アメリカ大統領選挙」が見える!
 第2章 日本に忍びよる「ファシズムの甘い香り」
 第3章 違和感だらけの海外ニュースも「金の流れ」で腑に落ちる
 第4章 「脳内世界地図」をアップデートせよ!
 エピローグ 「18歳選挙 〜どんな未来にしたいですか?〜」

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印象に残った文章を引用します。

【プロローグ 「パナマ文書の何が悪い? 〜慌てるアホウに笑うアホウ〜」】から、パナマ文書でリークされた情報は、アメリカ側によって取捨選択されているという話。
“モサック・フォンセカ社から何者かの手によって流出した内部資料(パナマ文書)は、南ドイツ新聞を経由してICIJという団体の手に渡った。ICIJは膨大なデータを独自に分析し、彼らの手で取捨選択された情報のみが世界に向けて一気に公開されたのだ。(略)
 ICIJの本部はワシントンにあり、創設者のチャールズ・ルイスはアメリカ人だ。
 そして実質的にその運営はアメリカ国務省傘下の「USAID(米国国際開発庁)」や米国多国籍企業など、アメリカ側の資金で運営されている”(16p)

【第1章 金の流れで「アメリカ大統領選挙」が見える!】《大量の札束が降り注ぐ大統領選挙》から。
“公権力腐敗を対象とする非営利の調査報道団体「センター・フォー・パブリック・インテグリティ」のベス・イーシアは言う。
 「政治とカネ問題とはつまり、1%の超富裕層や利益団体の政治献金が政治を動かしている今のアメリカのことです。
 特にリーマン・ショック以降、この国の多くの有権者とって、その不信感は強くなっている。でも、実はヒラリーこそが、その恩恵を最も受けている候補なのです」”(42p)
→“1%の超富裕層”という言葉も本書のキーワードです。

【第2章 日本に忍びよる「ファシズムの甘い香り」】《必要なのは「脱官僚」より「愛国官僚」》から、日本の国会議員が本来の仕事である「立法」まで官僚任せにしている原因について。
“いわゆる〈官僚支配〉と呼ばれる腐敗は、官僚=悪などという単純な図ではなく、決まった集団(官僚)に(立法まで)依存せざるを得ない、今のシステムそのものに原因がある。
 アメリカでは国会議員1人に、立法業務をサポートするための人員を国が公費でつけてくれる。日本は第一、第二、政策秘書のたった3人しかおらず、現実的にも話にならない。
 あちら(アメリカ)は平均で下院なら22人、上院なら44人のスタッフという大人数で、人数制限のない上院に至っては、77人の秘書まで持つ議員までいるのだ”(131p)
→私自身も“官僚=悪”という単純な図式を刷り込まれていました。

【第3章 違和感だらけの海外ニュースも「金の流れ」で腑に落ちる】《ギリシャ破綻で笑いが止まらないメルケル首相》から。
“(ギリシャの)財政赤字が膨れ上がった原因は、高すぎる年金、公務員優遇などと報道されているが、なぜか触れられないもう一つの重要要素についてはあまり知られていない。債務の半分以上を占めるといわれる、防衛予算だ。(略)
 メルケル首相はギリシャ政府に対し、軍事費削減どおろかIMFが融資した〈救済金〉の大半を、国内経済の立て直しでなく軍事費に使うよう、圧力をかけた。
 彼女のとったこの行動も、資金の流れを追ってみると、その背景が腑に落ちる。武器輸入大国ギリシャとの商売で、アメリカに次いで最も恩恵を受けている国の一つは、他ならぬドイツなのだ”(174〜176p)
→著者は欧米のメディアも“1%の超富裕層”に乗っ取られ、その超富裕層が経営する軍需産業についてはモノが言えないと書いています。

【第4章 「脳内世界地図」をアップデートせよ!】《「戦う敵」より「手の中の宝もの」を数えよう》から。
“例えば、WHOや世界の国々から高く評価され、保険証1枚あれば、怪我や病気をした時に誰でも経済力や国籍、性別に関係なく標準治療が受けられる〈国民皆保険制度〉。
 世界共同組合デーで事務局長に〈世界でも有数の、成功した共助モデル〉として絶賛された日本の農業協同組合。
 〈医師会〉に〈農協〉。どちらもスクラムを組んだマスコミから、長年「既得権益」とバッシングされてきた団体だ。(略)
 だが間違えてはいけない。私たちがここで見るべきは、その制度自体の存在が社会の中で持つ〈価値〉のほうなのだ。
 国民皆保険制度も農協も、その制度の根底にあるのは、1%層が国境を超えて拡大しようとしている、「今だけカネだけ自分だけ」と対極にある考え方だ”(279p)
→著者は医師会や農協に問題がないとは言っておらず、あくまでも制度として優れていることも述べています。

【エピローグ 「18歳選挙 〜どんな未来にしたいですか?〜」】から。
“今世界のあちこちで、全く異なる2つの価値観が、国境を超えてぶつかり合っている。
 1つは、あらゆるものを数字やデータにし、利益と効率を優先し、四半期で結果が出なければ無駄と切り捨てる考え方、いわゆる〈今だけカネだけ自分だけ〉だ。(略)
 違法でない限り何をしてもいいと開き直り、納税という企業義務を果たさずに公共サービスを使いながら、出した利益をタックスヘイブン(租税回避地)にせっせと貯めこみ私腹を肥やす、〈不道徳〉な超富裕層たち。
 そして〈今だけカネだけ自分だけ〉の対極にある、人間の暮らしや文化や伝統、顔が見えるものづくりや、数字で測れない価値を持つ教育、困った時に助け合う共同体が象徴する〈お互いさま〉の価値観”(291p)

四年前に出版された本ですが、著者の訴えたこと(今、変えていかなければいけないこと)は、今も変わっていないと感じました。

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堤 未果(つつみ・みか)
国際ジャーナリスト。東京都生まれ。
ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号取得。
国連、アムネスティ・インターナショナルNY支局員、米国野村證券を経て現職。
日米を行き来し、各種メディアで発言、執筆・講演活動を続けている。多数の著書は海外で翻訳されている。
『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で日本ジャーナリスト会議黒田清新人賞、『ルポ 貧困大国アメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞を受賞、『政府は必ず嘘をつく』で早稲田大学理事長賞を受賞。
近著に『沈みゆく大国 アメリカ』(2部作、集英社新書)、『政府は必ず嘘をつく 増補版』(角川新書)など。

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