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2020年04月12日17:23

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初歩から学ぶ生物学[読書日記773]

題名:初歩から学ぶ生物学
著者:池田 清彦(いけだ きよひこ)
出版:角川ソフィア文庫
価格:840円+税(平成31年3月 初版発行)
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マイミクさんお薦めのエッセイ集です。

裏表紙の惹句を引用します。
 “人はなぜ死ぬの? 心はどこにあるの? 進化や遺伝の仕組みとは?
  なぜオスとメスがいるの? 教科書以前の素朴な疑問から、具体例を
  厳選。断片的に専門知識を蓄えるのではなく、要点から体系的にわか
  りやすく解説。メディアで話題になる事柄も、基礎さえ押さえておけ
  ば、もっと理解が深まる! 文庫化にあたり、人類起源や免疫に関す
  る最新の知見で大幅に改訂。いい加減でしたたかな生物の原理に迫る、
  格好の入門書”

目次を紹介します。
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 はじめに
 第一章 生命についての素朴な疑問
 第二章 生物の仕組み
 第三章 進化と由来の不思議
 第四章 病気のなぞ
 あとがき
 文庫版あとがき

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裏表紙の惹句にあるとおり、本書の原本は2003年9月に刊行され、文庫化にあたり、改訂したそうです。

【文庫版あとがき】から引用しましょう。
“本書の原本が出版されたのは2003年の9月であるから、何と15年以上の歳月が流れた。生物学は日進月歩で15年以上前の本が文庫化されるのは稀有なことかもしれないが、第一章(生命についての素朴な疑問)と第二章(生物の仕組み)の原理的な話に関しては、変更する必要を感じなかった。(略)
 その一方で個別の研究の進歩はすさまじく、次々に新しい事実が発見されたり、新しい手法が開発されたりした。特に現生人類の進化史と、分子生物学の進展は顕著であり、本書もその点については大幅な改定を施して、新しい知見を盛り込んである”(252p)

印象に残った文章を抜き書きします。→は私の感想です。

【第一章 生命についての素朴な疑問】《世界最高齢はどれ程すごいか》から。
“最近、寿命一〇〇歳時代が迫っているという話がよく聞かれるが、年金の受給年齢を引き上げるためにでっち上げたインチキ話だと思う。(略)
 この話は、この一〇年間、平均寿命が毎年平均〇・一六年ほど延びているので、このまま延び続ければ、近いうちに一〇〇歳に達するという仮定の元で作られているが、人体の画期的なシステム改造技術が発明されない限り、寿命は九〇歳くらいで頭打ちになると思う”(62p)
→どうも、そんな気がしていました(苦笑)。

【第二章 生物の仕組み】《人は一種、昆虫は三〇〇〇万種――多様性のなぞ》から。
“昆虫の種の数はなぜ三〇〇〇万種と推定されたのだろうか。アメリカの昆虫学者であるアーウィンが、熱帯にある一本の樹を燻蒸し、その樹に固有の虫がどれだけいるかを調べた。
 その数に熱帯固有の樹の種類数を掛けた結果、三〇〇〇万という数字が得られたという話だから、本当に三〇〇〇万種いるかどうかはわからない。
 私は、三〇〇〇万は少し大袈裟で一〇〇〇万ぐらいではないか、と思っている”(104p)
→結構、おおざっぱに決められた数字のようですね。

 【第三章 進化と由来の不思議】《恐竜はなぜ滅んだのか?》から。
“恐らくご存知の方も多いと思うが、今では(恐竜を絶滅させた)隕石が衝突した場所までわかっている。(略)
 衝突したのは彗星か小惑星かという論争がこの何年か繰り返されていたようだが、どうも直径約15キロメートルの小惑星という説が正しいようだ。
 ちなみにこの巨大隕石説は、ノーベル賞を受賞した物理学者のルイス・アルバレスが1980年に唱え出したものであるが、当初はあまり信用されていなかったらしい。しかし、結局は正しかったのである”(174p)
→私が大人になってから唱えられた学説だとは知りませんでした。

【第四章 病気のなぞ】《病気と自然選択》から接触感染する病気について。
“接触感染する病気の多くは軽くなるように進化する。なぜなら、病原体にとってみれば、感染したあとにすぐ病人を殺してしまうような事態は、自分も死んでしまうから不利になる。
 病人を長く生き延びさせて、その人が別の人に感染させてくれないと、病原体は生き延びられないのだ。この観点からは感染症は徐々に軽くなると思われる”(239p)
→この文章を読むと、皆が新型コロナウィルスの行く末を思うと思います。 

虫好きの私には、楽しく刺激的な本でした。

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池田 清彦(いけだ きよひこ)
1947年、東京都生まれ。東京教育大学理学部卒業、東京都立大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。
理学博士。生物学者。早稲田大学名誉教授。構造主義生物学の立場から科学論・社会評論等の執筆も行う。カミキリムシの収集家としても知られる。
著書は『ほんとうの環境白書』『不思議な生き物』『オスは生きてるムダなのか』『やがて消えゆく我が身なら』『生物にとって時間とは何か』『真面目に生きると損をする』など多数。

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