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2020年01月12日21:46

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脳は回復する[読書日記760]

題名:脳は回復する 高次能機能障害からの脱出
著者:鈴木 大介(すずき・だいすけ)
出版:新潮新書
価格:820円+税(2018年2月 発行)
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ルポライター鈴木大介さんの闘病記です。
前作『脳が壊れた』は、著者が脳梗塞で倒れた直後から退院するまでの描写でしたが、今作では、退院後の苦労が描写されています。

『脳が壊れた』の読書日記:
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1956585959&owner_id=1795980

目次を紹介します。
 序 章 脳コワさんになった僕
 第一章 号泣とパニックの日々
 第二章 僕ではなくなった僕が、やれなくなったこと
 第三章 夜泣き、口パク、イライラの日々
 第四章 「話せない」日々
 第五章 「受容」と、「受容しないこと」のリスク
 第六章 脳コワさん伴走者ガイド
 あとがき

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ちなみに“脳コワさん”とは、奥さまが命名した病名です。
“「みんな、脳が壊れてる人たちなんでしょ。あなたが取材してきたのも、あたしも、今のあなたも。
  脳が壊れたとか言うと悲惨ぽくて受け入れづらいし、機能が阻害されてるとか、あんたの言葉はいちいち難しくて分かりづらい! そんなもん、まとめてざっくり脳コワさんにしなよ」”(33p)

著者の身体に起きた、高次能機能障害の症状・障害を能天気な(筆者談)奥さまは次のようなユニークな名前に置き換えたそうです。
【第二章 僕ではなくなった僕が、やれなくなったこと】から引用します。
“・井上陽水
 ・架空アイドル現象
 ・夜泣き屋だいちゃん
 ・口パックン
 ・イラたんさん
 ・初恋玉
 君、ふざけてるのか?! と思うが、意外や意外。それぞれの症状による苦しさは、こうして変なネーミングをされたことで、すこしだけ苦しさが和らいで、すこしだけ立ち向かい易くなった気がする(ような気がする)”(68p)

このユニークな名前を付けられた(ですが現実には非常に苦しい)症状を具体的に書くと、次のようになります。
・井上陽水⇒ 何か見えない膜を介して現実世界に接しているようで現実感がない症状(69p) 
・架空アイドル現象⇒ 「人ゴミを歩けなくなった」「他人がみんな自分めがけて寄ってくるように感じる」症状(81〜83p)
・夜泣き屋だいちゃん⇒ 夜のベッドで謎の窒息感のパニックに襲われ、大泣きしてしまう症状(101p)
・口パックン⇒ 話し相手が、ただ口をパクパクさせているだけのように感じること(111p)
・イラたんさん⇒ 苛立ちや怒りを感じるできごとがあると、その記憶がずっと残り頭の片隅に残り、苦しく憂鬱な気分になること(132p)
・初恋玉⇒ 喉に飲み込めないゆで卵が詰まったままのように話しづらい現象(心因性失声)(168p)

それぞれの症状と、その対処方法が【第二章 僕ではなくなった僕が、やれなくなったこと】から【第五章 「受容」と、「受容しないこと」のリスク】で語られています。

著者が随所に書いているように、著者の快復には奥さまが大きく貢献しています。
奥さまは前作にも登場しましたが、自身が注意障害ながら夫を支え、かつ、からかったりして深刻さはありません。
これが読後感が明るい理由の一つでしょう。

著者が奥さま(妻)について触れた一節を引用します。
“確かにあらゆる障害は堪え難い苦しさを伴ったものだった。けれども実際に障害に向き合った僕は、そこまで深刻じゃなかったし、苦しい苦しいと言いながらもそこまで悲観的ではなかったと思う。
 なぜなら、露呈していく障害の考察と対策は、「脳コワさん」命名者のちゃらんぽらん女王=我が妻と二人三脚で行っていったからだ”(67p)

自分が脳梗塞にならないことを願いつつ、「健康こそ一番」と当たり前の感想を抱きました。

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鈴木 大介(すずき・だいすけ)
1973年千葉県生まれ。ルポライター。
著書に『最貧困女子』『脳が壊れた』などの他、漫画『ギャングース』(原案『家のない少年たち』)ではストーリー共同制作を担当。

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