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2019年10月20日21:22

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世界から戦争がなくならない本当の理由[読書日記748]

題名:世界から戦争がなくならない本当の理由
著者:池上 彰(いけがみ・あきら)
出版:祥伝社新書
価格:840円+税(2019年8月 初版第1刷発行)
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池上彰さんの著作を読みました。

表紙裏の惹句を紹介します。
“七四年前の八月十五日に終戦を迎えた日本は、今日まで
 他国と戦火を交えることなく「平和国家」の道を歩んで
 きた。しかし、この七四年間、朝鮮半島、ベトナム、アフ
 ガニスタン、中東…… 世界では絶えず戦争やテロが起き、
 多くの犠牲が払われてきた。現在も紛争と緊張状態が各地
 で続いている。なぜ、戦争はなくならないのか?戦争のな
 い世界」は訪れるのか?
 「過去から学び、反省をして、現在と未来に活かせる教訓
 を引き出すことが必要」と説く著者は、本書で日本と世界
 の戦後を振り返り、読者とともに「戦争の教訓」を探して
 ゆく。戦後七〇年の2015年に刊行された同名書籍に大幅な
 加筆と修正を施した "池上彰の戦争論" の決定版!”

目次は次のとおりです。
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 新書版まえがき
 序 章 なぜ世界あら戦争はなくならないのか 
 第一章 日本は本当に「平和」なのか?――「平和国家」の光と影
 第二章 アメリカは同じ過ちを繰り返す――「戦勝国」の失敗の歴史
 第三章 東西冷戦――実は今まで続いていた
 第四章 戦争のプロパガンダ――報道は真実を伝えているのか
 第五章 ヨーロッパに潜む「新冷戦」
 第六章 終わることのない「中東」宗教対立
 第七章 日本人が知らないアフリカ、アジアでの「代理戦争」
 第八章 バックミラーに見える歴史から学ぶこと
 あとがき――戦争の教訓から学ぶために

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【第一章 日本は本当に「平和」なのか?――「平和国家」の光と影】から印象に残った4つの文章を引用します。

1.《■戦時賠償金の代わりとしてのODA》から
“例外的に賠償金を払っていないケースもあります。向こうから「賠償金は要らない」と申し出た国があるからです。
 たとえば、セイロン(現在のスリランカ)がそうでした。
 仏教国らしく、「憎悪は憎悪によって止むことはなく、愛によって止む」という感動的な言葉を使って、戦時賠償金を受け取らなかったのです。
 台湾も同様。日本と台湾は1952年に日華平和条約を締結しましたが、当時の中華民国総統、蔣介石はセイロン政府と同じ理由で賠償金を請求しませんでした”(73p)

2.《■中韓が「反日」をやめられない理由》から
“(現在の中国や韓国は「反日」に成功したことで支配者としての正統性を保っているので)韓国も中国も「日本は過去の戦争に対する反省が足りない」「ドイツに学んできちんと謝罪すべきだ」と言い続けます。
 もちろん日本も、ドイツのように自ら徹底的な反省をしているとは言えない面がありますから、問題はあるでしょう。
 しかし公式には償いは済んでいるのですから、《日本に向って「ドイツに学べ」と言うのなら、中韓にも、そのドイツを許した欧州諸国の姿勢に学んでもらいたいところです》。
 「許そう、しかし忘れまい」ならよいのですが、「忘れない、だから許さない」ではキリがありません”(79p)

3.《■戦争の「負け方」からも学んでいない日本》から
“たとえば戦争中の日本軍は、「戦力の逐次投入」という失敗によって必要以上に損害を大きくしてしまうことがありました。(略)
 そんな苦い経験をしているのに、いまだに日本は戦力を逐次投入するクセが抜けません。
 たとえば、東日本大震災で発生した原発事故への対応がそうでした。福島第一原子力発電所で、電源喪失によって原子炉の冷却ができなくなったとき、政府や東京電力のやることをイライラしながら見ていた人も多いでしょう。
 まず消防の放水車からの注水で冷やそうとしたけれど、うまくいかない。自衛隊のヘリコプターで上空から水を投下してもダメ。そうやって少しずつ対策を講じては後手に回るのは、まさに「戦力の逐次投入」です”(87p)

4.《■個人の「腕」に頼る日本、マニュアルで対処するアメリカ》から。
“(太平洋戦争で日本軍が個人の能力に頼ったように)現在も、日本人の考え方は基本的に変わっていないのではないでしょうか。仕事で何かミスが起きたとき、日本人は「心がけがなっていない」「技術や経験が不足している」といった具合に、個人に原因を求めがちです。
 誰がやってもミスの起こりにくいシステムを作ろうとはあまり考えません”(91p)

もう1つ【第四章 戦争のプロパガンダ――報道は真実を伝えているのか】からも1つ引用します。
《■報道規制すれば「きれいな戦争」はいくらでも作れる》から。
“(1991年の湾岸戦争の時)テレビのニュースでは、米軍が自ら撮影した空爆の映像ばかりが盛んに流されました。
 イラクの軍事施設に爆弾が見事に命中するのを見て、「ピンポイント爆撃」という言葉が生まれたのがこのときです。
 私もそれを見て、最初は「すごい技術だな」と思いました。でも、NHKの緊急特番でキャスターに「米軍のミサイルは本当にピンポイントで命中するんですね」と聞かれた軍事評論家の故江畑謙介さんが、こう答えたのを今でもよく覚えています。
 「当たり前です。命中した映像しか公開していませんから」
 これには目からウロコが落ちました。実はあちこちで誤爆しており、そのために民間人の犠牲者も出ていたはずなのに、映像を見せなければそれがなかったことになってしまう。
 情報操作とは実におそろしいものです”(148p)

引用できませんでしたが、【第六章 終わることのない「中東」宗教対立】や【第七章 日本人が知らないアフリカ、アジアでの「代理戦争」】も教科書で学ばなかった近代史で勉強になりました。

池上彰さんはNHK時代に「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めたので、有名ですが、その経験が本書のような平明で分かりやすい文章に結実したのだと思いました。

追記:
ラグビーW杯、日本代表破れる。残念でした。

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池上 彰(いけがみ・あきら)
1950年長野県生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。
報道記者として、松江放送局、呉通信部を経て東京の報道局社会部へ。警視庁、気象庁、文部省、宮内庁などを担当。
94年より11年間、NHK「週刊こどもニュース」でお父さん役をつとめ、分かりやすい解説が話題に。
2005年にNHKを退社し、フリージャーナリストとして多方面で活躍。
東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、16年4月より名城大学教授、東工大特命教授。

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