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2020年10月26日10:52

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文芸誌投稿から・童話

 イルカのイルちゃん・その2.   イルカ


                          



 イルです。今日は、1年前の話をするね。お日様が南に行きつつある時の話。みなさんのカレンダーでは、10月だね。イルはまだ小さかったけれど、とてもこわかったことだよ。

 いつも波はあるけれど、しだいに激しくなってきたんだよ。魚をつかまえようとしても、すぐ行っちゃうだけ、流れも速くなった。おばあちゃんが「あらしが来るよ。みんなまとまって、力を合わせて、通り過ぎるのを待つんだよ」と。アラシとは、激しい波と海の流れ。特に、10月にはものすごいものが来ることが多い。海の上に行くと、南の方から黒い大きな雲がやってくるけれど、アラシの時はそれが空の上に来て、昼間でも暗くするんだ。

 海の下の方は波が弱いから、一度海の上に行き、空気を皆で吸って、下にもぐったよ。それでも流されそうになり、みんなで声を掛け合いながら、心を一つにして、まとまって過ごした。ママと離れそうにもなったけれど、ぼくの方について来て、離れなかった。波が痛く感じた。長く、長く感じた。ものすごく暗くて、こわかった。これがアラシだね。今年も来そうだね。

 アラシの後、みんなで海の上に行き、空気を吸った。明るかったし、黒い雲はなくなっていた。気持ち良かった。あと、お魚をたくさん食べた。おいしかった。どんなに強いアラシが来ても、皆で助け合えば、大丈夫だね。ぼくらは助け合って生きているんだよ。

 今日の話はおしまい。またするね。☼


(舞台の小笠原近海は、10月が一番台風が通過する)

 写真欄は、小笠原近海のイルカの写真です。




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