５４−５ 『如来蔵経』『涅槃経』
前回は『勝鬘経』に触れた。『如来蔵経』が『勝鬘経』の主要テーマである如来蔵について最初に「一切衆生は如来蔵である」と宣言したとされている。それは「人類（衆生)は如来を胎に宿している」「人類は如来の胎児である」という意味である。その後、『涅槃経』は「人類(一切衆生)には皆仏性がある」と宣言するに至った。また、この経は仏性とは如来蔵、真我だと明言する。学者によれば、この大胆さは本経典に特有のものであると言われる。ある意味、『涅槃経』に至り仏教のアイデンティティは希薄になったのである。
それほど、如来蔵・仏性を説く仏教経典は仏教にとっても革命的であった。しかし、人間の内部神性（仏性）を讃美すれば救済されるというのであれば。00の家の教えで、救済は完了していただろう。五井先生の出番もなかった。道理はそんな簡単なものではない。それ以前に現象に捉われない、現実の生活・人生を乗り切らなければならないという課題があったのである。内部神性(仏性)の真理は重要だが、頭で学んだだけでは、人生に変革をもたらさないのである。
五井先生は「人間神の子」を唱えながらも、現実生活に沿った「消えてゆく姿で世界平和の祈り」の道を開かれた。西園寺会長は徐々に『涅槃経』の真理「我即神也」に迫り、深めて来られた。それに伴って、印・マンダラ・呼吸法を降ろされ、高邁な真理を生活に根付かせる道を示された。
如来蔵は宝蔵（宝庫）にも譬えられる。白光では次の法話がそれを語る。
『人間の心は無限なる宝庫なのである。こんこんと水の湧き出る泉が、幾層もの地層の中に隠されているのと同じように、真理、幸福も我々の内部に隠されているものなのである。
聖なる泉はあなたの中にもうすでにあるのだ。だが発掘作業はあなた自身がやらなければならない。』(90-05)
『真理は無限なる宝庫を開く鍵である。ただし鍵を持っているだけでは何もならない。鍵を使って無限なる宝庫の扉を自らが開けるのである。』(02-03)
会長は内なる宝庫を説きながら、『発掘作業はあなた自身がやらなければならない』と発掘作業の重要性をきちんと説いておられる。知識だけでは人生を変えることはできないのである。しかし、内部の宝庫を使うのに制限があるわけではない。自分自身が制限をかけてしまうのである。それについては、踏み込むよう促される。
『今更何をためらう必要があるのか、人のもの、他人のものを引き出すには躊躇いがあるであろうが、自分の中にあるものを引きつけ、引き出し、呼び醒ますのに誰に遠慮がいるのか。 さあ、しっかりと自分の内面を見つめるのだ、自分の心の中を、自分の心の内部の秘密の扉を開くのだ。 あなた自らの手であなたの永遠なる幸せをこの世に示してゆくのだ。』(90-12)
『過去はいいのです。赦されるのです。本心は神そのものです。完全円満なる素晴らしい宝庫、宝があります。』(10-05)
また、自立の道として宝庫のことが説かれる。
『他に一切、頼らない生き方、外なる神を求めない生き方、他を一切批判、非難、評価しない生き方、徹頭徹尾、自らの内なる無限なる宝庫を開発してゆく生き方、、、。これこそ二十一世紀の生き方である。』(01-02)
『自らの内にある宝庫である、無限なる能力を引き出すことをせず、すべて外にあるものに頼り、自らの権威ある能力を他に譲り渡し、自らは人に支配され、自立できずに生きてしまっている。自信喪失そのものである。これからは、内なる宝庫の一つ一つを開発してゆくべきである。』(01-12)
『人間は、“自らの運命は自らが創造し、築き上げてゆくものである”という真理を知った時、初めて自らの運命の支配者となるのである。 そのためにも、自らに内在せる無限なる能力の宝庫を永遠に眠らせたまま、放置しておいてはならないのである。』(05-10)
宝庫（神性）を開くことは神人の使命である。
『人類は、自らの内に未だ顕現されていない未知なる宝庫がたくさん眠ってはいるが、それらの宝庫に気づかずにいる。本来それらの宝庫は必ず顕現されねばならず、それらを顕現することによってのみ、人間の真の未来を創造してゆくことが出来るのである。 内なる宝庫に目覚めた人たちこそが神人と称せられる人たちである。』(02-12)
『万巻の書に依存してはならない。自らの聖なる光の中にこそ、我即神也の中にこそ、真理の宝庫は輝いている。』(03-01)
『自らの内なる無限なる宝庫を見出し、その宝を次々と開花させ、自らの創造力を駆使して自らのビジョンを達成して行くことにより、人は真の歓びを見出してゆくものである。』
(04-03)
『努力とは本来、自らの眠っている無限なる宝庫に光を当ててゆくことに払われるべきものなのである。』(05-12)
宝庫を開く一番の方法が祈りであり、印である。
『祈りとは本来、自分の欲望達成や願望成就や懇願であってはならないのである。あくまでも自分の本心を導き出し、自分の内なるすべての宝庫の扉を開く祈りでなければ、本来の祈りとは言えないのである。』(03-03)
白光では、神性復活という大上段の教えとともに、言霊、印というツールが前面に出てきた。大乗仏教では、中期に如来蔵、仏性が説かれた。しかし、ツールについては言明されていない。後期に入り、大乗仏教はツールを備えた密教へと変化して行くのであった。
ログインしてコメントを確認・投稿する