５１−２ 全託と自立��
全託は次のように、「頂き直す」生き方とも説かれる。
「自己の頭脳知識体験として蓄積されているものを、神のみ心にお還えしして、改めて出て来る智慧によって事を運んでいったらよいというのです。それをやさしい空即是色の在り方というのです。一度神のみ心の中でよりわけて頂いて還えってきた智慧能力は、必ず自己を含めた人類の為、兄弟姉妹のためになる智慧能力であり想念行為となるのであります。」
（『生きている念仏』 P.59）
空の道は色即是空から空即是色への転換の道である。この引用文では、それは「肉体頭脳知識体験」から「還えってきた智慧能力」への転換とされている。この転換は全託の道も同様である。ここでは、転換後の生き方を「頂き直す」生き方と言っている。また、この転換は次のように「意識の転換」と説かれる。
「肉体人間が空になって、五官の欲望を解脱し得ると肉体の粗雑な波動から、霊界、神界の微妙な光の波動の方に意識が転換できるのです。そうしますと、（中略）神秘力、超越力が、その人の行動の中に現われてくるのであります。」（同上P.87）
全託とは、肉体人間としての自己を否定した他力を入り口として、「頂き直し」て、空即是色・絶対力・神我一体・自立へ意識転換する道である。言い換えると、全託とは、因果説による「消えてゆく姿」を入り口として、果因説による神性顕現へ意識転換する道である。
また次のようにも言い換えることができる。全託の入り口は「肉体人間の智慧才覚では何事も為し得ない」「肉体人間の自分では何事も為し得ない」という「凡夫の自覚」である。この「大生命への小我の放棄」は「神力は自由自在に働きはじめる」という神性発現への転換をもたらす（「」は同上P.189）。守護の神霊（内部神性）はこの転換のすべてに関与して下さっているのである。
つまり、全託する相手は守護の神霊である。また、「全託する相手は、肉体身として生まれ出でぬ前から自分として働いている生命、本心、つまり仏なのである」（同上P.139）。全託とは守護の神霊との一体化である。本心顕現である。自立した本来の自分自身がこの世に神の姿を示してゆく道である。
神人たちは果因説を使いこなして、神性顕現という天命を果たすべき時期に来ている。この時期に及んで、全託と言いながら、因果説を信じて祈りがもたらす果報を寝て待つ生き方でいいのだろうか？果因説によって神性発揮を目指す生き方は、因果説によって祈りの功徳(対価)を待つ生き方とは異なる。
「五井先生、何時まで待てば、祈りの成果が現われるのですか。何時になったら平和な世界を見せて下さるのですか」と問うことなかれ。このような問いは依存の生き方から出て来る。全託の問いではない。五井先生は我々が真理に目覚めるその日に至るまで、我々に代わって光明を送って下さっている。五井先生が我々の目覚め、本領発揮を待っていて下さっているのである。我々が五井先生の本領発揮を待つのではない。
2019/12/12
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