５０−１１ 全託と自立��
全託することと自立すること。この二つをどうのように理解したらいいのであろうか？そもそも、五井先生は全託をどのように定義されていたのだろうか？
『神への全託は、そのままその人が空の境地であり、安心立命の境地でありますから、様々な奇蹟や生活の好転回が、おのずから現出してくるのであります。何故ならば、神はすべてのすべてであり、全智全能であり、完全円満なる絶対者であるのですから、そのお方に自己の運命をすべてお任せする、つまり全託したことは、神とそのまま一つになった事であり、完全に統一したことになるのであります。』(『霊性の開発』P124-125)
この文章のすぐ後では、『全託の反対は自力聖道門の道』と明記されている。また、続いて、『個人を救い世界を救う者は、神の絶対性、神の全能性、神の大愛を全く信じ、神への道を突き進んでいる宗教者でなければならない』と説かれている。
全託は空の境地、安心立命の境地と同じと説かれる。それぞれの境地は次のように説明されている。そして、その境地は神我一体の境地であるとも言われる。
『空の境地というのは、安保賛成、反対というような想念の世界ではないのです。個の生命が全く大生命と一つになった瞬間が空であり、空になった瞬間が、実相顕現の姿となるので、真実の人間の姿、人類の姿が現われてくるのです。』（前出P187）
『真実の安心立命の境地になるのには、どうしても人間の真実の姿を知らなければならない。人間の真性を知れば、おのずから神と人間との関係がはっきりしてきて、神我一体の境地になってくるのです。』(前出P165)
以上から明らかに、全託=空の境地＝安心立命の境地＝神我一体の境地とされている。ただ、受け取る人間側には様々な固定観念がある。そのため、言葉の意味すら明確には伝わらないことが多い。空と言えば、無に捉われる。すると、実相顕現の側面が見落とされる傾向にある。同様に全託と言うと、自力聖道門の反対と捉えられる。すると、否定的な意味での他力門に陥るリスクが生じる。努力も工夫もしない他力本願は怠慢にすぎない。
世界平和の祈りの行は全託への近道である。このことは次のように説明されている。
『それは(世界平和の祈りの行が生まれ出たことは)、旧約聖書のいう、原罪や、浄土真宗のいう、罪悪深罪の凡夫という説と同じように、肉体人間観ではとても駄目なのだと、一度肉体人間は駄目なものなり、と捨てきった時から、人間は真(神)性を発揮してくるのだ、ということなのであります。』(前出P130)
つまり、「一度肉体人間は駄目」と捨てきる。そして、祈りの中に内在する神々の救済力に委ねてしまう。このような生き方を、五井先生は説いて下さった。ここでは、初めに『肉体人間や、肉体人間の知識や能力に依存している考え方』(前出P130)が明確に否定されている。 つづく
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