昔読んだ村上龍さんの小説『テニスボーイの憂鬱』の中で「人生ってシャンパンの泡のようね」と登場人物の女性が語る部分があった。僕のお気に入りのセリフである。
そのセリフの意味するところはよくわからないのだけれど、「不倫の関係」にあった主人公と女性との不確かで脆弱とも思える関係性を際立たせるセリフのように感じられたのだった。
シャンパンの泡のように躍動的で輝いた関係性にも、やがてその動きは止まり、輝きも失われる時がくる。・・・そんな儚さ、切なさがこのセリフには宿っている気がしたのだ。
三十代半ばでこの作品を読んだぼくは、シャンパンの泡のごときは何も男女の不倫関係だけではなく、人生そのものもまた然りだろうな、と感じ取っていた。
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