三島由紀夫さんが贔屓にしていたことで知られる早稲田の天麩羅屋『金城庵』。ぼくがこのお店を訪れるのは約三十年ぶりのことであった。大正八年創業で101年の歴史を誇る由緒あるお店だ。 三島由紀夫さんと共に市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げた早大教育学部出身の森田必勝さんが所属した『楯の会』もこのお店で結成されたと聞く。
正直、このお店での食事はぼくの口に合わないが、それでも、このお店で食事を摂っていると、かつてこのお店の中で笑い、語り合った三島さんや楯の会隊員の方々の姿がお店のあちらこちらで浮かび上がってくるような錯覚に見舞われ、すぐに胸がいっぱいになってしまい、腹をいっぱいにすることなど、もうどうでもよくなってしまうのだった。
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