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2020年02月09日18:17

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記憶にございません by ロッキード事件容疑者

 高校時代。ぼくのボクシングのデビュー戦はいきなり苦戦を強いられることとなった。対戦者の強烈なフックを顔面にもらったぼくは、一瞬目の前が真っ白になり、意識が飛んだ。<ヤバイ!> と思ったあとは、自分でも何をどうしたのか? 記憶にないのだ。
 だが、気づくと相手はリング上に膝をつき何故かレフリーからカウントを取られていた。どうやらぼくは意識もないままに玉砕覚悟のラッシュ攻撃を仕掛けていたらしい。そして、そのうちの一発が奇跡的に相手のアゴをとらえたようなのだ。結果的にはぼくが勝つことができたけれど、それはまさに薄氷を踏む勝利だった。
 <ラッキーだったな> と正直思った。完全な負け試合を、からくもひっくり返すことができたのだから。

 試合後、監督から言われた。
「よく勝てたなぁ。相手は昨年の北陸三県チャンピオンだぞ」と。
 監督から言われたその言葉に、ぼくは途端に不機嫌になり、憮然とした。
「そんな情報、聞かされてねぇぞ。事前に教えろよ!」と憤慨したのだ。

 それでもぼくは、この世には思いも寄らぬラッキーって、あるもんなんだな、と思った。
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